↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/3

2080年代編

今回で終わりです。

プロローグ 2080年 秋田

国難法施行から三十年。

日本は復興した。

だが、それは誰も望んだ形ではなかった。

外国人労働者の多くは戦争と外交断絶で姿を消し、人口減少は止まらない。

戦災復興と災害復旧、中国との長い休戦状態。

国家は生き残るために法律を書き換えた。

労働時間規制は大幅に緩和。

一部の人権は「国家非常事態」の名目で停止。

大学は八校へ統合され、進学できる者はごく僅か。

十八歳になれば、ほとんどの若者は国家指定企業へ配属される。


修学旅行

そんな時代でも修学旅行だけは残っていた。

しかしそれは、

「人生で最初で最後の自由時間」

だった。

卒業すれば地方も友人も家族も離れ、

全国へ労働配置される。

だから教師は言う。

「この旅行で友達と話しておけ。 次に全員集まる日は、多分ない。」


修学旅行行き先は、鹿児島・沖縄。

そこまでの間に未だに戦火と巨大地震の傷跡が深い東京、新首都となった岡京(岡山)を経由する、鉄道とフェリーの旅。


仲良し5人組はいつも一緒に行動していた。


エリートの少年で美咲が大好きだけどもうすぐ一緒にいる時間が減ることを悩んでる、朝倉康一。

農家の少女で大叔父が遺したデジカメの中の2020年代の日本を見るのが好きな、三浦美咲

藤田の血族で軍籍の血筋として認められているが本当にこのまま国防の道に進むのか悩む軍籍の少女、藤田澪。

技術系オタクで一人でいろいろ組み立てることもできる技術者な少女 小野結。

おっとりとした性格で工場勤務が確定してる少年、なんとかなるが口癖の熊谷大地。

そして神職になる未来を進んでる、小さな人形をいつも大切に持っている、寡黙だけど穏やかな少女、佐伯チハル。


修学旅行は鉄道とフェリーを乗り継ぐ。1週間かけての旅。途中嵐などが来ればその分延長されると、国が最後の楽しみとして子どもたちに与える努力の結果だった。

東京、かつてのキラキラした姿も、復興は徐々にしか進まず、その後に起きた関東大震災も合わさり痛々しい姿をとどめている。

美咲はあの頃の写真と今の姿を比べてため息をつく。

山体崩壊した富士山を避けて信州を進む。名古屋、京都と被害が少ない地域もやはり活力が足りない。


そして現在の首都岡京。2020年代の岡山より小さいくらいだが、キラキラした都会に子供たちは目を見張る。


鹿児島。

爆心地跡には、黒い石碑だけが立っていた。

「ここより半径十キロは、まだ立ち入りが制限されています」

ガイドの声だけが静かに響く。

復興は、ほとんど進んでいなかった。 放射線量は安全基準まで下がったものの、街を再建するよりも、瓦礫や汚染土壌を管理する巨大な産業廃棄物施設が並ぶだけだった。

美咲はデジカメを開いた。 画面には、二〇二〇年代の賑やかな天文館が映っている。

「……全然違うね」

誰も答えなかった。

チハルは石碑を見つめたまま、少し顔色を失っていた。

「大丈夫?」

大地がそっと肩を支える。

「……うん。なんだか、この場所、泣いてる気がする。」

爆心地の慰霊碑を見学し終えた子どもたちの前を、白い装甲車列がゆっくりと通り過ぎた。

車体には見慣れない紋章。 地球を囲む輪の中に、折れた剣と若葉。

人類統治機構(Human Administration Authority)

国際連合が事実上消滅した後、停戦監視と難民保護のために各国が辛うじて作り上げた組織。

中東。 アフリカ。 南米。 中央アジア。

それぞれの戦場で活動してきた人々だった。

制服の袖には、国籍ではなく歴戦の任務章だけが縫い付けられている。

金髪の女性士官が、見学に来ていた子どもたちへ笑顔で手を振った。

「こんにちは。」

流暢な日本語だった。

美咲も思わず手を振り返す。

康一だけは、その肩章を見つめていた。

あれは沖縄停戦交渉団。 世界でも最も危険な任務の一つ。

「終戦のために来た人たちなんだ。」

「終わるの?」

結が尋ねる。

康一は少しだけ考え、

「……うまくいけば。」

とだけ答えた。

女性士官は笑顔のまま車に乗り込む。 だがその笑顔の奥には、何十もの戦場を見てきた者だけが持つ、深い疲労が宿っていた。

世界は、日本だけが壊れているわけではない。

ようやく立ち直ろうとした国もあれば、 まだ今日も戦い続けている国もある。

だから彼らは今日も国境を越え、 「次の戦争を終わらせるため」に走り続けていた。


車列の最後尾に、一人の東洋人士官が立っていた。

チハルは、その姿を見た瞬間、思わず息を呑んだ。

その男の背後には、無数の黒い影がまとわりついていた。

軍服姿の者。 泣き叫ぶ子ども。 武器を持った男たち。 老人。

数え切れない怨念。

まるで昔、陳という男にまとわりついていたものと同じだった。

しかし、違う。

それらは男を食い破ろうとはしていない。

男の胸の奥にある、何か白い光のようなものに縛られ、一歩も動けず静かに沈黙していた。

「……っ」

チハルは小さく震え、人形を胸へ抱き寄せる。

男はその視線に気付き、苦笑した。

「見える子か。」

その声に、隣の金髪の女性士官が肩をすくめる。

「明(ミン)。」

「また子どもを怖がらせてるわよ。」

明は軽く頭を掻いた。

「悪い悪い。慣れっこでね。」

女性士官はチハルへ微笑む。

「安心して。この人は危なくないわ。」

明は少しだけ寂しそうに笑う。

「危ないのは、俺じゃない。」

「俺が離したら、この連中だ。」


鹿児島を離れたフェリーは、夏の日差しを浴びながら屋久島沖を南へ進んでいた。

幸い空は青く、海も穏やかだった。

嵐さえ来なければ予定通り沖縄へ着く。

船内には全国各地から集まった修学旅行生があふれ、廊下や展望デッキでは初対面の中学生同士が思い思いに話している。

美咲と結も、いつものようにデジカメを覗き込んでいた。

「これ、本当に二〇二〇年代?」

不意に声がした。

振り返ると、一人の少女が目を輝かせて立っていた。

「ごめん、つい見ちゃった。」

「浜松中学校の如月粋。よろしく。」

人懐っこい笑顔だった。

「三浦美咲。」

「小野結。」

粋は画面に映る夜景や高速道路を食い入るように見つめる。

「すごい……。」

「こんな日本、本当にあったんだ。」

美咲は少し照れながら頷く。

「大叔父のデジカメなんだ。」

「いいなあ。」

粋は目を細めた。

「浜松も最初の津波はひどかったけど、その後は意外と運が良かったんだよ。」

「中国軍のミサイルも飛んでこなかったし、富士山噴火も灰が少し降ったくらい。」

「だから今じゃ建築技術大学までできたんだ。」

結が身を乗り出す。

「えっ、本当?」

「うん。」

「復興建築の研究が有名なんだって。」

結は思わず呟く。

「……行ってみたいな。」

粋は笑う。

「歓迎するよ。」

美咲も笑い返した。

「秋田も被害は少なかったけど。」

「もともと人が少ないから、あんまり変わってないだけなんだけどね。」

三人は同時に吹き出した。

フェリーの甲板には、久しぶりに中学生らしい笑い声が響いた。


フェリーの展望室。

夕焼けに染まる海を、一人の少女が静かに見つめていた。

佐伯チハル。

秋田では誰にでも優しく接するが、自分のことはほとんど話さない。

質問されれば答える。 困っている人がいれば手を差し伸べる。 だが、自分から昔話をすることは、一度もなかった。

だから大地は少し驚いた。

「こんなところにいたんだ。」

振り返ると、大地だった。

「みんな探してたよ。」

チハルは小さく笑う。

「もう戻るよ。」

その時、大地は人形の首元に縫い付けられた古びたタグに目を留めた。

『チハル 十二歳』

「……あれ?」

「その人形もチハルっていうんだ。」

「誰かの形見?」

少しだけ沈黙が流れる。

やがてチハルは、穏やかな声で話し始めた。

「この子ね。」

「親に売られて、市場で売れ残ったの。」

「それから魂を抜かれて、人形に封じ込められた。」

夕陽が人形のガラスの瞳を赤く染める。

「お土産物として並べられたけど、そこでも売れ残って。」

「最後は、ゴミみたいに捨てられた。」

大地は黙って聞いていた。

チハルの口調は昔話を語るように静かだった。

「でも。」

「一人だけ、この子を拾ってくれた人がいた。」

「……すごく悪い人。」

「子どもをさらったり、たくさん悪いことをしていた。」

「だけど、この子にとっては初めて、自分を捨てなかった人だった。」

夕焼けの海を見つめたまま、チハルは続ける。

「だから、その人をずっと守っていたの。」

「でも、その人は自分の罪に呑まれて消えてしまった。」

大地は思わず息を呑む。

「そのあと、この子は?」

「終わりをもたらした人が見つけてくれたの。」

「最初は恨んでいた。」

「でも、その人は見て見ぬふりをしない人だった。」

「だから、この子はその人について行った。」

静かな波の音だけが聞こえる。

大地は人形を見つめた。

「……その子は、今でも人形の中にいるの?」

チハルはゆっくり首を振った。

そして、夕陽よりも柔らかな笑みを浮かべる。

「ううん。」

「……生まれ変わったって、聞いたわ。」

チハルは静かに微笑んだ。

それきりだった。

いつものように、自分から続きを話そうとはしない。

「戻ろうか。」

「うん。」

人形を抱き直したチハルは、それ以上何も語らなかった。

大地も、何も聞かなかった。

秋田で一年以上一緒に過ごしてきた。

それでも今日ほど、チハルという少女が遠く、不思議に見えたことはない。

作り話にしては細かすぎる。 昔話にしては悲しすぎる。

そして、あの「生まれ変わった」という一言だけが、妙に現実味を帯びて胸に残っていた。


沖縄本島。

フェリーは速度を落とし、静かに港へ入っていく。

かつて観光客で賑わった港は使われていない。

本島の一部には、終戦協定締結前の中国軍占領区がいまだ残っているため、安全を考慮して航路も接岸場所も変更されていた。

船が向かった先は、かつて美ら海水族館があった場所だった。

建物は戦火で失われ、瓦礫だけが残る。

その跡地に造られた簡素な桟橋へ、フェリーはゆっくりと接岸した。

海風の向こうには、昔の水族館を偲ぶように、大きな魚のモニュメントだけが今も立っている。

「せっかくだ。写真撮るぞ。」

教師が声を掛ける。

康一、美咲、澪、結、大地、そしてチハル。

六人は魚のモニュメントの前へ並んだ。

「はい、もう少し寄って。」

「熊谷、眠そうな顔するな。」

「なんとかなるよ。」

笑いが起きる。

チハルも小さく笑った。

美咲は大叔父から受け継いだデジカメを教師へ手渡す。

「先生、お願いします。」

教師は少し驚いたようにカメラを見つめた。

「まだ動くのか、これ。」

「はい。」

「じゃあ撮るぞ。」

カシャ。

電子音が静かに鳴る。

二〇八〇年には珍しくなった、本物の写真だった。

教師はカメラを返しながら、小さくため息をつく。

「美咲。」

「あんまり『まだ撮れる』なんて言いふらすなよ。」

「盗まれたら困る。」

美咲は少し照れくさそうに笑った。

「大丈夫ですよ。」

「おじさんの形見ですから。」

そう言って、胸に抱くようにデジカメをしまう。

青い沖縄の海が、その様子を静かに見守っていた。


次に訪れたのは、沖縄平和慰霊公園だった。

青い海を背に、広大な敷地には戦争で破壊された兵器が静かに並べられている。

砲塔が吹き飛んだ戦車。

翼の折れた無人攻撃機。

焼け焦げた装甲車。

そして、その一角にはガラスケースに収められた一体の復元模型があった。

人の形をしている。

しかし、その顔には表情がなく、後頭部には無数の配線が伸びていた。

胸元のプレートには、当時の映像から再現された表示が刻まれている。

氏名:○○○○

罪状:寝そべり

刑罰:永久奉仕刑

大地が首をかしげた。

「康一。」

「永久奉仕刑って、何?」

康一は模型から目を逸らした。

少しだけ言葉を選んでから答える。

「人間の脳に機械を埋め込んで……。」

「考えることをやめさせて、命令だけを実行する兵隊にしたらしい。」

「……。」

「詳しくは、俺も聞きたくない。」

そう言うと、康一は展示から離れて歩き始めた。

大地もそれ以上は聞かなかった。

慰霊碑には、全国から集まった修学旅行生が静かに列を作っていた。

制服の色も校章もさまざま。

浜松の中学校の列には、如月粋が手を振っている姿も見える。

「結構、あちこちから来てるんだね。」

澪が小さくつぶやく。

「……うん。」

答えながらも、彼女の視線は慰霊碑に刻まれた無数の名前を追っていた。

一人、また一人。

指先で文字をなぞるように見つめる。

祖父の名は、あるだろうか。

藤田家では、沖縄で戦った祖父の話は何度も聞いて育った。

だが、戦後の混乱もあって遺骨は戻らず、正式な記録も途切れていた。

澪は祈るような気持ちで、碑に刻まれた名を探し続けていた。

潮風だけが静かに吹き抜けていった。


沖縄滞在二日目、自由行動時間が設定されていた。自由と入っても安全行動区域は決められているが、あるものはビーチで泳ぎ、あるものは自分の祖先の縁の地を訪ね、あるものは修学旅行生のために建設された遊園地の観覧車の列に並ぶ。美咲はパレードもあるってとはしゃぎ康一はこれを機に美咲に思いを伝えようとする。ほかのみんなはそれを薄々感じ、夜のパレードまでは別行動に自然となった。


どこかの生徒が笑いながら歌を歌っていた、クビクビクビ♪正社員でも派遣でも人は掃くほど余ってる、要らない人材さっと掃けば会社は安泰♪

チハルは嫌な歌と目を伏せ、結は今じゃ人手足りてなくて困ってるのに昔って変な時代だったんだね。と笑う。


そしてその歌を歌っていた生徒を眼鏡をかけたキツめの男の子が注意する。その歌は嫌な思いをする人がいるからやめろと。うるせえ高橋、いい子ぶるなと少しやさぐれた生徒たちが騒ぐが高橋に睨まれると何も言えなくなる。そしてチハルたちに頭を下げるとその岡京から来た生徒たちは去っていく。


結のもとに近づいてくる粋。うちのクラスカップルばっかりでとぼやきながら一緒に行動したいという。結はチハルや大地が問題ないと確認し、あとで澪や美咲、康一とも合流するからと。

そして移動バスのなかで二人は浜松の大学の話に没頭する。バスはチハルがどうしてもいきたいという少し離れた場所にある御嶽へ向かっていった。

大地はなんとなく察し何も聞かなかった。


慰霊の碑に藤田の名前を見つけられなかった澪。正規の自衛隊員ではなかったからなかったという父親の言葉が正しかったと知る。そして藤田の最後の戦いが目撃された場所に建てられた記念碑を目指す。

そこには藤田とその仲間の老人たちの名前が記された碑があり、行方不明となったと記されている。

そこで澪は自分の心うち、本当に守ることが正しいのか迷っていることを打ち明ける。すると背後に温かい手を感じる。でも振り返ると消えてしまいそうで振り返れなかった。そして悩むことは遠回りではないという言葉が聞こえた気がした。


しばらく立ち、大地から御嶽に来てほしいというメッセージ。記念碑を掃除し立ち去るとき、澪は気持ちが軽くなった気がした。


観覧車の列に並ぶ康一と美咲。こんな遊園地みたいな施設は初めてなのでテンション高めの美咲に康一はチャンスを伺う。そして2人きりになった観覧車のなかで康一はなんとか思いを告げる。

その必死な顔を見て美咲は一緒にパレード見ようねと笑いかけてきた。


観覧車を降りた康一は美咲の答えをかみしめていたが、大地からの御嶽に来てほしいというメッセージを見て美咲とともにバスに乗った。人生で一番忙しい一日かもなと心のなかで笑いながら。


バスが到着する。、まるで昔住んでいたように迷いなく一軒の民家にたどり着く。観光地じゃないから断らないと、とチハル。少しすると澪や美咲たちも合流する。

奥から老婆が出てくる。訝しげに一向をみるがチハルと目が合うと何かを感じたようにパットする。

チハルはこの子がこの地に帰りたがってると告げ、御嶽へ向かう一行。そして祠の傍らに人形をお供え物のように置く。すると風が吹いた。まるでお帰りというように。チハルはただいまとつぶやいた。


美咲は緑に囲まれてると笑い、結は沖縄の祠って秋田と違うねと興味深そう。粋は流れで来たけどいいのかなという顔、康一はもう気持ちはパレードに向かいそわそわ。大地はチハルの変化を感じ良かったねと話しかける。

そして美咲は記念写真を撮ろうといい、久しく使ってなかった自動撮影モードを動かし人形を背景に写真を撮る。あとで印刷して送るねという美咲。

浜松まで送るの?と笑う粋。


そんな一行をどこからか現れた猫が優しげに見守っていた。


場面は変わって、ある施設の控室。明と呼ばれた士官と女性士官、スザンナが、会議の進捗を確認する。そこへ筋骨隆々な女性、士官の服を着ておらず何やら中華風の服を着た女が現れる。幸福都市の崩壊とその混乱を収めるために何か帝国は始めるらしい。そのため、沖縄から兵を引きたいようだ。

士官2人は腕組みをして聞いていた。


そしてパレード、康一と手をつなぐ美咲。ニヤニヤして見てる結、遠くには浜松の友達と楽しそうにしてる粋も見える。チハルが珍しく饒舌になり大地は聞き役に徹している。そして花火が上がる。

全員が空を見上げる、夜が更けていく。


花火のあと、ホテルでくつろいでる面々のテレビに終戦協定妥結。長く続いた戦争状態が終わることが決まる。中国軍も本島や与那国から撤退する。

その後の話は紆余曲折ありそうだが、テレビのアナウンサーが国難法の廃止の検討に政府が入ったと告げた。康一はこれからが大変だと気を引き締め、美咲はまたキラキラな世の中になるかなと期待している。結は浜松の大学に行きたいとつぶやきチハルはまた沖縄に来れるかなと微笑む。大地は何とかなるよとチハルのてをにぎった。


フェリーが出発する。見送る中にスザンナや明の姿も。控室にいる霊符のモニターに浮かぶ、「帝国の合唱機」「バイオドロイド」そして「紅い雨」の不穏なデータ。

そしてフェリーの中、誰も訪れることのない図書室に目新しい本が置かれていた。表紙の紅い本。

神保町の書店で大台ケ原の極左のアジトで見かけたようなその本。

風で開きそうになったその本、猫が吠え、靖子のようなジャージを着た人影がこれはまだ早いとばかりに書棚の奥に押し込む。


遠くで美咲たちの笑い声が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。