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ダンジョンマスターは、アットホームな職場です!  作者: 桃野産毛


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第1話 なんじゃこりゃぁぁぁー!!

「はい、これ」


 突然、目の前が真っ暗になって、

見えるようになった瞬間に何かを押し付けられた。

反射的に受け取ったそれは、

握りこぶし大の水晶のようなものだ。


「これがお前の『ダンジョンコア』だ。

これがお前の命と直結している」


 目の前にいる謎の女性がぶっきらぼうにそう言った。


「じゃぁ、行け」

「はぁ!?

説明は!?」


 俺がそう叫ぶが、

非常にも視界がブラックアウトした。

 訳が分からない。

俺はさっきまで自分の家でテレビを見ていたはずだ。

それなのに、

今は見知らぬ森の真ん中に立っている。


「夢か?」


 しかし、素足から伝わる土の感触と痛みは確かにある。

ポケットに入れていたスマホはない。

部屋着のジャージ姿で、変な水晶一つ持たされ。

森の中に放り込まれた。


「説明、ぷりーぃぃぃず!!」


 俺が絶叫しても、何も返ってこない。


「あれだろ。

アニメとかラノベのヤツなら、

スキルとか何か……」


 俺は色々試す。

ステータスオープンと叫んだり、

スキル発動、と叫んでみたり。


 しかし、何も起きない。


 俺は森の真ん中で。

着の身着のまま。

変な水晶だけ渡されて。


「なんじゃこりゃぁぁぁー!!


 叫んでも何も起きない。

本当に、なんなんだこの状況。

 異世界転移?

異世界転生?

どっちにせよ、

元の世界に返してくれよ。

 どんなに俺が嘆こうが、泣きわめこうか。

何も起きない。

誰も来ない。


「……とりあえず、歩こう」


 俺は森を当てもなく歩き出した。


***


 俺の名前は、トシオ。

サトウ トシオ。

この世界に来てから、

発音の問題かトシ・オーと呼ばれている。


「この世界は、糞だ」


 冒険者ギルドの酒場で俺は独りごちる。

あの森の中に出て来て以来、早三年。


「ダンジョンって、どうやって作るの?」


 誰も何も教えてくれず。

やっとわかったことは、

あの日に渡された『ダンジョンコア』は、

ダンジョンの心臓に当たるものだと言うことだけ。

 ダンジョンマスターとして、

ダンジョンを作ることができそうなのだが、

いくら調べても何もわからず。

冒険者として登録し、薬草を採る毎日。

そして、とうとう。


「よう。

湿気た面だな、草むしり」


 草むしり、なんてあだ名がついた。


「はっ!

バニレか。

 そんな不名誉なあだ名で呼ばれたら、

薬草を採るのやめた、って言ってこの町から出るぞ、俺」

「……すまん、それは勘弁してくれ。

トシ・オー……」


 だが、立場は俺が上である。

バニレは、

降参したと言いながら両手を顔の横まで上げた。

 薬草を採ることを毎日続けても、

冒険者ギルドの評価は上がらない。

だから、

俺は薬師ギルドと商業ギルドを相手に薬草を採ることにした。

 冒険者ギルドの依頼として常時ある『薬草採り』は、

粗雑に採られたぼろぼろの薬草ばかりで赤字だったらしい。

でも、新人冒険者の入門クエストとして、

この依頼を取り下げないことを三ギルド間で約束してるそうだ。

 そこに目を付けた俺は、

毎日必ず一定量のキレイな薬草を採ることを条件に、

薬師ギルドと商業ギルドを相手に契約。

俺宛の指名依頼を出させて、

毎日薬草を採ることにした。

 冒険者ギルドの職員に初めこそバカにされたが、

『確実に手に入る一定量』の重要さに気付いたときにはもう遅い。

薬草を原料にした薬で、ニギルドが儲け。

安定した薬の供給ができ、町の住民から感謝された。

 それでも、

俺をないがしろにし続けた冒険者ギルド。

三年目でニギルドから、

冒険者ギルドに卸すポーション類の値上げの話が来てから慌て出した。

今は冒険者ギルドから俺のランクの昇級の打診や、

他の冒険者への薬草採取の講義をして欲しいとの打診されているが、

全て断っている。

 バニレは俺のとなりに座って、

女中に酒を頼んだ。


「でも、湿気た面はしてるぞ?」

「お前も、知ってるだろ?

俺がダンジョンについて研究してるの」


 俺は『独学でダンジョン研究をするフィールドワークの学者』としてこの町で認知されている。


「バニレが新しくダンジョンに行ったら、

また話が聞けるんだが」

「ダンジョンなんて危険なものが、

そんなホイホイあってたまるかよ」


 バニレは席に届いた酒をあおってそう言った。

その通り、この世界は剣と魔法のファンタジーな世界。

だが、ダンジョンは希少で、

見つかるとその土地を統べる国が占領、管理するものだ。


「モンスターの氾濫の危険こそあれ、

ダンジョンは資源の宝庫。

それを、人工的に作って管理できないか。

それが、トシ・オーの研究だろ?」

「あぁ。

覚えててくれて嬉しいね」


 俺は薬草採りつつも、

冒険者たちと顔を繋いでダンジョンについて聞き込みをしている。

お陰でこの町を拠点にする冒険者だけでなく、

近隣の冒険者とも繋がりができて、プチ有名人だ。


「今この大陸で確認されたダンジョンは十二ヵ所。

内、七ヵ所がその土地の国が管理し、

三ヵ所は無政府地帯である『死の荒野』にある。

そして、二ヵ所は既に消失。

 新しいダンジョンはここ三十年見つからず。

情報は国が管理してて、詳しくは調べられず。

俺は八方塞がりさ」


 俺はそう言いつつ、

手に持った空のジョッキをバニレに向けた。


「ほれ、飲んでねぇだろ?」

「もう、飲めよ」


 バニレがあきれた顔でそう言う。


「研究が進まねぇ」

「お前は頭も良いし、すげぇけど。

さすがに国が管理してて、

ガチガチに情報管理されてるダンジョンは手出しできねぇって」


 バニレの言う通りだった。

俺の噂が広まってきているのか、

釘を刺すようにダンジョンを保有する国から手紙が届いた。

回りくどく書かれているが、

内容をまとめるとこうだ。


 手出し無用。


 どの国も全部そんな内容だ。

調べられたら困ることがあるのだろう。


「この世界は、本当に、糞だ」


 俺は大きなため息を吐いた。

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