Deum deorsum trahe(デウム・デオスルム・トラへ 神を引きずり下ろせ)②
もし季節を調節するとしたら、何がこの話に似合うと思いますか?暖かい始まりの春?冷たい終わりの冬?晩秋とかもいいですね、もうすぐ終わりがくる!って感じがします。良かったら皆さんの感想を教えてください!
時空を歪めて、ルツェルンの1日にこちらでの長い期間を詰める予定でしたが、それだとちょっと困るので、分身をおいてアリバイを作ることにしました。
ゆっくりでも進めていきますね〜!
異世界に行く日。暑さのピークは過ぎた。日陰と朝晩には涼しい風が吹く。立秋も過ぎ、暦の上では秋である。
シュナは待ち合わせ場所の公園で、吹いた風に銀髪を抑える。何かが始まる予感がした。青色の目で高くなった空を見上げる。瞳に流れの早い雲が映った。
「シュナ様!お待たせしました」
声をかけられ、視線を向ける。金髪金目の男、ラピスラズリ・レアフラワーが立っていた。いかにも好青年といった風で、爽やかだ。
「待ってないよ!それじゃ、行こっか!異世界!」
シュナはにぱ!と笑って返事をする。
「はい!」
「あっ、その前に、変身しないとね!私の見た目はバレてるかもしれないし!あとその世界に合わせた格好にしないとおかしいし」
シュナはどこからともなく魔法のステッキを取りだす。
「おぉ」
ラピスは静かに驚く。冷笑の「おぉ(笑)」ではない。内心子供っぽいなとは思ったが。
ステッキを振って、一回転する。
「メタモルフォーゼ!!」
すると、どこからか輝かしいキュートな音楽が流れ出して、シュナは変身モードに入った。
2人は謎のキラキラに包まれる。
ラピスはゲッ!!として慌てる。
「えっ僕もですか!?」
「そうだよ〜!」
シュナの髪は青く、目は金色になった。
服装は質素な麻のワンピース。革のベルトを締めた。
ラピスも青く染められた麻の服になった。ズボンは灰色である。
ちなみに言語も自動翻訳するようにした。
「凄いな……。流石全能の神様ですね。僕の服はどこに行きましたか?」
「私の亜空間に入ってるから戻ってきたら返すよ!それとも家に置いといて欲しい?」
「いえ、預けておきます。よろしくお願いします」
実は今日シュナと会うために新調した服だったので、なくされては困るのである。可愛いことだ。
「もちろん!それじゃ、行こっか!」
「はい!」
白く輝く転移門を顕現させ、二人はそれを潜る。
出た先は、建物の前。左右の二つの寮に、一つの大きな館、それから、訓練場も兼ねている広場からなっている。
季節はルツェルンと同じく秋。過ごしやすい気温となっている。
「ここが反乱軍の根城兼、辺境伯爵、ジークフリート・ヴォルガードの館だよ!」
「大きいですね」
シュナはアホなので、2人いる門番の5mくらい手前で馬鹿正直に話す。見張りは怪訝な顔をして、こちらに槍を向けた。
「何者だお前ら!!我らが"ヴォルガード神葬軍"に用があるのか!!」
「私達は、反乱軍に入りたくてここに来たの!」
「なにっ!?では門番所に通そう。ついてこい!」
「はーい」
二人は門番所に通される。もう一人の門番はジークフリートに報告しに行った。
簡素な石造りの門番所だ。天井にはカットされた光る石が埋め込まれていて、部屋をぼんやりと照らしている。
洞窟の中みたいにうっすら寒くて、身震いした。
シュナ達と門番は向かい合う。
門番は紙とペンを持って、話し出した。
「名を名乗れ!」
「シュナだよ〜」
「ラピスラズリです」
苗字は珍しいかもしれないので、ラピスはあえて言わないでおいた。
「苗字はないか。平民の出か?」
「そう!」
「ふむ」
カリカリと紙に書いていく。上手く通じたらしい。
「出身はどこだ?」
「え……っと、」
(サタナ!どこがいいかな?)
『イセリオ村がいいでしょう。辺境の寒村です』
「イセリオ村!」
「あぁ、お前ら、俺の故郷の隣村の奴らだったのか。俺の出身はグレイスカなんだ」
「そうなんだ!近いとこの人だったんだね」
適当に話を合わせておく。シュナの得意技である。シュナは話が分からない時はサタナに聞くか適当に話を合わせるのだ。
「あそこは神からの税が重いよな。そうか、お前はイセリオの出身か……」
同情した顔をする。門番の対応が少し柔らかくなった。
(おぉ、さっすがサタナ)
『当然です』
こうなることも勿論サタナには計算済みである。
「なぜ神に逆らおうと思った?」
「……」
少し黙り、シュナとラピスは目配せする。ラピスは、任せてください、と自信ありげな目で語った。
「神は人を守ると言うのに、苦しむ声を聞きません。ならば人のために立つのは僕達しかないでしょう」
真剣な目でラピスは堂々と言う。
シュナは隣で静かに感心していた。表には出さないが。
「そうだな。神達は身勝手だ。俺らのことをちっとも考えていない……」
眉間に皺を寄せて、ぶつくさ言う。
「神の何が許せない?」
「声なき者を踏みにじることです。正義を名乗りながら、正義を捨てている」
「正にその通りだ。あいつらは正しいみたいな顔をして俺達を踏みにじるんだ」
「うんうん」
シュナは頷いた。適当である。
「お前達にとって、"自由"とはなんだ?」
「生まれや血に縛られず、誰もが笑って生きられること。それを手にするまでは抗い続けます」
「……私も同じかな!」
「なるほどな」
ペンを動かす。暫しの沈黙が空間に落ちる。
「もし仲間が捕まって拷問されたら、お前は口を割るか?」
「割るほどの口なら、ここに来ていません」
「仲間を裏切ってでも生き延びる覚悟はあるのか?」
「生き延びる覚悟はあります。だがそれは、仲間と共に。裏切って得た命なんて、死より安いでしょう」
ラピスはつらつらスラスラと、台本を読むように語る。彼は頭の回転が早い。だからこういう面接も上手くこなしてしまう。性格を言うなら、特定の人に対しては愛情深く、他には打算的だ。
このように言ってはいるが、ラピスは実際特定の人以外には情が浅いので、簡単に裏切る。自分が助かるためなら口も割るタイプだ。
「戦えるか?」
「戦闘は弱いです。ですが頭は回ります。ぜひ参謀に入れていただきたいです」
「私は剣と魔法が使えるよ!転移門も使えるし、氷魔法と治癒も使える!」
「ほう、優秀だな」
門番は少し喜色を浮かばせた。
「最後に。神は全てを見ているぞ。お前らは、祟られてもいいのか?」
「ふふ、ふふ……」
シュナは笑ってしまう。その通り、神は目の前にいる。神を統べる神の中の神が。見ているどころではない。ガッツリ目の前にいるのだ。それがシュナにはおかしかった。
「何がおかしい?シュナ」
シュナは、やべっ、笑っちゃった、と思いながら取り繕った。
「……そうだね。神は見てるよ。それでもいいの。私達は見ていながら、何もしない神を倒すためにやってきたんだから。祟られる程度のことで、神に踏みにじられた私達の思いは変わりはしない」
シュナは圧倒的なオーラを放ちながら、上目遣いで門番を見つめる。
門番は圧倒され、思わず体を引いた。
シュナの方は全然演技なのに。こういう時だけやけに上手いのだ。隣でラピスも感心している。シュナは、ちょっとカッコつけちゃったな、と思った。てへぺろ。
「……そうか」
体勢を戻しながら、門番は頷いた。喜びで僅かに目尻に涙が光っている。
「よし。お前らのことはよく分かった。俺の名前はグレオス。よろしくな。ジークフリート様の所に通そう。お前達なら反乱軍に入れるだろう」
「よし……!」
「よかった!よろしくね、グレオス!」
「あぁ」
ラピスは噛み締めるように喜ぶ。シュナも素直に喜んだ。
2人は館の奥に通された。中には小太りの中年の男がいた。銀糸で刺繍のされた、シルクの質のいい服を着ている。
「やぁやぁ、お前達が、我らが"ヴォルガード神葬軍"への入軍を希望するものかね」
「そうです」
「グレオスが通したということは、怪しい者ではないのだろう。歓迎するぞ、ようこそヴォルガード神葬軍へ」
「よろしくお願いします!!」
「よろしくね〜!!」
そうして2人は反乱軍こと、"ヴォルガード神葬軍"に入軍した。
グレオスがそっと調書をジークフリートに渡す。それを読んだジークフリートは、ふむふむと頷く。
「ラピスラズリ。お前は、ヴォルガード神葬軍に入って、やりたいことはあるのか?」
ラピスラズリはシュナを見やる。今計画を聞かれるのは不味いだろうか。事情を作って退ける必要があるな。
「あります。……その前に、少し話があります。シュナは実は、神に呪われているのです」
「!?ふむ。というと?」
ジークフリートは驚いて眉を歪め、目を見開く。
シュナは表情には出さなかったが、(なんの話!?)と内心気が気ではない。焦っているシュナだが、相手がラピスでなければシュナの無茶振りも無計画も中々焦らせるものがある。
「彼女はその強い力から、神に監視されています。ですので、彼女を僕の作戦に関わらせるのは危険なのです。この作戦には関わらせず、別の作戦で活躍させていただけますか?」
「ほう……。分かった。では裏方の情報収集に回すとしよう。それでいいかね?シュナ」
「はーい!いいよ〜」
シュナは内心の疑問をおくびにも出さず、ペカリ!と笑顔で答えた。
というか、自分は諜報なんて向いているだろうか。まぁ最悪サタナになんとかしてもらおう。気楽に、お気楽に。
「よろしい。ではシュナは軍の者に部屋を案内してもらえ。ラピスはここに残れ」
「分かりました」
「はーい!」
そうして2人は別れた。
シュナは、放送の魔法で呼び出された女性についていく。
黒紫の光を反射しない真っ暗な装束を着ている。口元にもベールがかかっていて、表情は見えない。目はつり目で紫色だ。黒色のアイラインは長く、なんとなく妖艶な雰囲気が漂う。
「諜報のラシアよ。よろしくね、シュナ」
「うん!これからよろしくね!私も諜報になるみたい!」
耳に馴染む落ち着いた声だ。
「貴方の部屋は、月華寮こと、女性寮の5階の一番の奥の部屋よ。まだ新人だから、信用されてないのでしょうね。一番逃げにくい部屋だわ」
ラシアは憂うように零す。優しいのだろう、新人のシュナにも情を持っているらしい。
部屋に向かって歩きながら話す。
月華寮だが、闇夜のような紺色だ。そこに、オシャレに星や月のモチーフの照明や模様がある。随分洒落た寮だ。
「ふぅん、逃げにくくても意味無いの知ってるはずなんだけどな?」
シュナはなんとなく暗さを感じる瞳で斜め上を見て、首を傾げる。反乱軍、アテナによれば、危険思想の塊。あまり良いイメージはない。
自分も舐められたものである。まぁ正体を言ってないから仕方ないが。
「そうなの?」
「うん、私転移門使えるからね!」
「転移門!?チートね……」
「ふふん、私だからね。あぁ、そう、だから、神の呪いにかかってるんだって」
「そうなの?どうして他人事なのよ」
「あ、間違えた!そう、呪いにかかってるんだよ。なんか、あんまり大きい動きをすると神とか天使がやってきちゃうんだよね」
「そうなのね……。可哀想だわ、こんなに可愛らしい女の子が」
ラシアはするりとシュナの頬に手を滑らせて、憂うような上目遣いでシュナを見る。
シュナは心臓がドキリとして、バクバク脈打つ。顔に熱が集まって、頬が上気する。
シュナの桜色の唇が艷めく。黄色い鉱石の照明が反射する。2人の瞳はうるりと潤う。
今にもベール越しにキスしそうなとき、シュナがハッとした。
「……あ、ごめんね、私恋人いるんだ!女の子がダメって訳じゃないんだけど、浮気するの悪いからね」
「あら、残念……。好みなのだけど」
「ふふふ、ラシアちゃんが良い子だったらサービスしちゃうよ!」
「私のセリフよ?全く、シュナ相手だとどっちが先輩が分かったものじゃないわ。貴方ってなんだか高慢ちきだわ」
ギクッ……。ちょっと神としての態度のままだと危ないかもしれない。もう少し謙虚に行くべきだろうか。
「や、やだなぁラシア先輩!!」
「別に先輩呼びして欲しいわけじゃないわよ」
「そう?じゃあラシアね!」
「えぇ、シュナ。じゃ、ここが貴方の部屋よ」
着いたらしい。ラシアがドアを開けて、中を見せながら言う。
中を見る。が……。
「ここ?……なんか………、うん、狭いね!」
正直、鰻の巣かな?みたいな、縦に少し長い狭い部屋だ。掃除が行き届いていて綺麗ではあるが、湿気も溜まっているし。あまり居心地良さそうではない。
「ふふっ、新人の部屋なんてそんなものね。私の部屋に来てもいいわよ?これでも結構偉いの、5人部屋位の広さはあるわ」
「分かった!じゃあ飽きたらそっち行くね!」
「(警戒心ないわね、この子……。)えぇ、いつでも待ってるわよ。ちなみに鍵はないわ」
「えーっ!?……まぁ別にやましい事はないんだけどさ…(嘘)」
サラッと嘘をつく。
「それから、食堂とお風呂は1階にあるわ。一緒に見に行く?」
「行く行く〜!!」
2人は1階まで戻った。
ざっと見て、シュナはその綺麗さに驚くばかりである。ここにしばらく住むのか。大分嬉しいな。部屋は……まぁラシアの所に住ませてもらうか、分身(意識なし人感センサー付き)をおいて、自分は亜空間とかに籠るか。なんでもいいや。
「明日から仕事よ。私と一緒に頑張るのよ?」
「はーい!」
「いい子。じゃあ、後は好きにするといいわ。私の部屋で遊びたい?」
「え!いいの〜!遊ぶ遊ぶ〜!」
シュナは遊べる機会に関しては人一倍敏感である。ワンちゃんや子供みたいなものだ。
「じゃあいらっしゃい。ペブルンでもしましょう」
さらっと知らない単語が出てきたので、シュナは狼狽えた。
(まって、サタナ、ペブルンってなに!?)
『私達でいうオセロです。木の駒を使います』
「あ、うん!楽しいよね、ペブルン!私弱いけど!」
「あら。じゃあ手加減してあげるわね」
「よろしくね〜」
そうして2人はラシアの部屋へと入っていった。
なんか魔法少女になる夢を見るんですね。私は魔法少女に憧れがあるようです。
なんか勝手にサービスシーンが出来てしまいました。気づいたら書いてました。
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