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転生魔帝の人界亡命  作者: conacana
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魔界と人間界

 図書館に訪れたエミール。しかし、そこに待っていたのは大量の本と、無駄を嫌う本性を見せた魔王によるスパルタ真っ青の理不尽な教育だった! エミールは精神をすり減らしながらも本を読むが、読み切ることはできなかった。食事をとるために部屋に向かう途中、魔王親衛隊の一人、ハインケルから『異世界とこの世界』という本を手渡されたのだった。そして、魔王が食事を用意する待ち時間に、その本を手を取ったのだった……

 どれどれ……あー、だめだ。細かい字から重要単語を抜き出して解釈することはできん。パラパラと読むか……ん!?

 早速、気になる単語を見つけた。それは「人間界」という言葉だ。前後の話を要約すると、この世界には人間界と魔界、それから煉獄、天国などが存在するらしい。中でも、人間界と魔界は直接つながっている《《ゲートのようなもの》》が存在するという。つまり、人間界と魔界は行き来できるってことだぜ。


「あら、ハインケルの本、もう読んでるのね」


「ああ、割と興味深いことが載っているぜ。ところで、人間界と魔界を繋ぐ扉があるっていうのは本当か?」


「ええ。あるけど、もう使えないわ……まあ、使えないというより、使える人物がいないわね。アレには膨大な魔力が必要なの。私ですら、開くだけでぶっ倒れるほどだから」


 存在するのは確かなのか……まさにゲームや漫画とかの世界だぜ。妙な気を起こす気はまだないんだが、使えないのは残念だと思ってしまったな。

 ……えっと、ふむふむ……おお、もう一つ大きなことが分かった。人間界へ続くゲートは初代魔帝が初めて作り、使用したとされている……これってもしかして……?


「ほら、夕食ができたわ。……さっきと違って、真剣に本を読んでる気がするのは気のせいかしら?」


「え?い、いや、勘違いだと思うぜ」


 部屋の右奥にあるテーブルには豪華な料理が並べられている……。香ばしいにおいや、海鮮物の匂いが漂っていて、見るからに旨そう……いや、なんか初めて見る物ばっかりですこし違和感がある料理だった……。


「ささ、食べて食べて!」


 嬉しそうだな……あの殺気むき出しの状態とは打って変わって、柔和な表情でいる……そういうところのギャップが怖いんだよ……。

 どれ、まずはこのミノカサゴとアンコウを合わせて二で割ったような魚から食べてみるか……む、これは……うまい……! 鮟鱇料理は一回しか食べたことが無いんだが、それを忠実に再現して洋風にアレンジしたような味だ。チーズが良いアクセントになっている。……ただ、少し《《変な別の味》》がするのは気のせいか……?


「どう? ねえ、美味しい?」


「お、おう、美味いぜ」


「よかった! 隠し味に《《私の経血》》を入れたのは正解だったわね!」


 ……え? コイツ、何を言っているんだ……!? 俺は男だからそれがなんなのかよくわからんが、「血」って付いた時点でヤバいってことは分かる……!


「ふふ、他の料理にも私の一部を入れてあげたの。たとえば、この肉には中に私の《《髪の毛》》をいれてて、こっちのスープと飲み物には《《手首から流した血》》を混ぜてあるの」


 おいマジかよぉ!? 本読んでて気づいてなかったが、どれだけ手間かけて作ったんだよ……!? っていうか、そんなものを料理に入れるんじゃあないぜ!


「な、なんでそんなことを……?」


「決まってるじゃない、エミールが私の一部を食べてくれれば、魔帝に近づくでしょ!」


 え、えぇ……? 謎の理論についていけないぜ……体の一部なんて俺は食べたくはない。とはいえ、ここで何か拒絶したら魔王が悪鬼と化して、俺に鉄拳制裁を与えることは目に見えている……!


「たくさん食べてね」


「あ、ああ……」


 最悪な気分だが、致し方ねえ。一応、腹は空いているんだ……ただの料理だと思って食えば平気だ……! 平気なはずなんだ……!

 ええい、どうしても口に運ぶ毎に魔王が後ろで狂気の笑みを浮かべているのが想像できてしまう! 心を無にしろ……心を無に……!


 無心で俺は食べた……魚を食べ、スープを飲み、ステーキのようなものも平らげた……もし、一瞬でも舌と心にゆとりを作ってしまったら、真っ先に俺の身体は拒絶反応を引き起こし、口からすべて戻してしまうことだろう……。

 味など分からなくともいいから、素早く噛み、すぐに飲み込み、高速で食道を通過させる……一コンマ一秒たりとも口に入れたものを舌の上に乗せ続けることは許されなかった……。


「フー……」


 やっと終わった……量もそれなりにあったからキツかったぜ……。舌に残った僅かな味から、料理自体は文句なしに美味いと思うんだが、それ以上に魔王の一部が入っていると思うとヤバいぜ……!


「嬉しい! 全部食べてくれたわね、エミール! 私、とっても嬉しいわ!」


 歓喜乱舞する魔王……って、おわあ! 抱きつくんじゃない! 俺たちは恋人でもなんでも……


「さ、続きをするわよ」


「えっ、続きって……?」


「決まってるじゃない、さっきの読書よ」


 あっ……一難去ってまた一難だぜ……もう、活字を見るだけで俺は胸やけ起こしそうだっていうのに……。こんなの休憩の内に入らないぜ。

 魔王は、俺がベッドにブン投げておいた紙と皮でできた《《悪魔たち》》を持ってきた……。げえっ! まだこんなにあるのかよ……数十分くらい前の俺がこんなに忍耐不足だったとは……正直、後悔しているぜ……!


「あっ、全部読み終えるまで寝かせないからね」


「なん……だと……」


 徹夜しても終わらないんじゃないか……? 俺一人でこの量を消化しろだなんて、水をワインに変えるように不可能に近いぜ……。


「大丈夫、私もずっとついててあげるから」


 要らないことをしなくていいから! 魔王は魔族のトップなんだから色々と忙しいはずだろ!? とっとと寝てくれよ……!


 結局、地獄に再び突き落とされた。俺の眼球が悲鳴を上げようとも、脳が「もう無理です」の信号を出そうとも俺は活字に食いつく他なかったんだ……だって、少しでも気を緩めようものなら……


「コラッ! 何寝ようとしているのッ!? まだページが残っているでしょッ!!?」 バチィンッ!


「痛ってえええぇぇぇッ!!!!」


 怒号と共に鬼畜目覚ましビンタが俺の頬を抉り、心にもへし折れそうな大打撃を与えてきやがる……このままじゃ俺の精神が持たねえ。けど、読み終えることを優先しようとすると……


 バチィンッ! バチィンッ! 「読むのが早すぎる! ちゃんと読んでッ!! やり直しッ!!!」


「ぎゃあああああぁぁぁぁッッ……!?!?」


 「血管を数本叩き潰された」と錯覚するほど強烈な地獄の平手打ちが俺の両手を襲う……ビンタの数倍痛えぜ……! ダメだ、とにかく辛すぎる……なんだって、どうして俺がこんなことしなきゃならないんだ……! 神様、もう許してくれ……!


「……よし、なんとか終わったわね」


 今が何時なのかを見に行く気力も、俺には残っちゃいないぜ……けど、嬉しいことにまだ外は暗闇が支配していた。


「俺はもう寝る……これ以上は本当に限界だぜ……」


「ちょっとまって、寝る前に本を返しに行って。借りてきたものはきちっと返さないと」


 な……おいおい、そんなことはもう明日でいいだろう……? どうしてこんな時に返さなきゃいけないんだよ。俺はもう寝……


「返事は……?」


「わ、わかったよ……」


 畜生! この鬼畜! 悪魔! 瀕死の俺に鞭を打ちやがって……返せばいいんだろ、返せば……!

 疲労した体を無理やり動かし、俺は部屋を後にした……ってあれ、魔王はついてこねえのか……それなら、やっと心が休まるぜ。

 薄暗い廊下で、図書館への行き方を……って、あっ! やべえ、道を覚えてねえ……ど、どうやって行ったっけ……。まさか、魔王がついてこなかったのは、この城の道を把握させるためだったのか……? だとしたら、これってどうすればいいんだ……!?

第五話、読んでいただきありがとうございます!


次回もお楽しみに!

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