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転生魔帝の人界亡命  作者: conacana
3/30

帝王の血

《前回のあらすじ》

 テロリストとの戦いで謎の力に目覚めた直樹。テロリストを一蹴し、ボスの自爆行為すら自らを犠牲にして防いだのだった。

 俺はもともと空っぽだったな……両親は居なかったし、何かをするために生きるなんて考えていなかった。

 施設で育って……小学校のときに藍香と出会って、もう亡くなっちまった彼女の両親に引き取られて……彼女と一緒に生きてきた。

 真っ暗闇の中で、過去を反芻していた。


「……き……て……」


 ……なんだ、声が聞こえてくる。おかしいな、俺はあの眩い閃光と爆発に巻き込まれて死んでいるはず……冥界とか、神話のヴァルハラみたいな死後の世界ってやつに来ちまったんだろうか。


「お……き……て……」


 段々ハッキリと聞こえてくる……!


「起きて!」


「……なんだよ」


 あっと……思わず反射的に応答しちまったが、声が出るぞ……!?

 死後の世界……あまり心地いい響きじゃないが、俺は辺りを確かめるためにゆっくりと瞼を開いた……


「……ああ! やっと目覚めてくれたようね! 良かった……!」


「おお! 遂にやりましたね! 魔王様!」

「奇跡だ……転生の儀、成功だ!」


 なんだこれは……起きて早々に何のドッキリだよ。笑えないぜ……。


「ククク……見よ! 私、魔王「ハンナ・ヴィンテル」は転生の儀を成功させ、成し遂げたのだ! 諸君、今一度盛大な拍手を!」


 顔を横に向けると、一対の黒い翼と角が生えた魔王と名乗る女が手を掲げ、周囲の白衣を着た連中から拍手を受けている。


「盛り上がっているところすまんが、何の話だ?」


 女は振り向くと、こちらに近づいてきた。黒い衣と、それとなく分かるバランスのいいスタイルは、ソシャゲとかで出てきそうな非現実チックなものだ。けど、翼やチラッと見えた尻尾はちゃんと動いている。偽物じゃあないぜ……!


「あなたは魔帝カイザーになるのよ」


「……は?」


「つまり、この《《魔界の新しい帝王》》になってもらうの」


 おいおい、どういうことだ? 買い物に行ったらテロに遭うし、変な力は覚醒するし、結果として俺たちは死んじまったし、そしたら今度は魔物の王だ? いくらなんでも、波瀾万丈すぎてついていけねえよ……。


「……それ、断ると言ったら?」


 その問いに、周囲は凍りついた……でもよ、いくらなんでも急展開すぎなんだぜ! 加減とか順序とかってもんがあるじゃないか、「明日からあなたは王様です。」なんて言われて「はい、そうですか。喜んでやらせていただきます。」なんて返せるか!


「そう。ま、エミールに選択肢も拒否権もないのよ。私のものになってもらうから」


「えっ……誰だソイツは?」


「あっ、エミールっていうのはあなたの名前よ。「エミール・ヴィンテル」素敵な名前よね?」


 勝手に話進めやがって……名前まで勝手に変更されちまうし、YESしかない選択肢とか、RPGロールプレイングゲームや推理ゲームの《《強制イベント》》じゃねえんだぞ!


「それと、魔王である私がずっと傍にいてあげるから、心配はいらないわ」


 ダメだコイツ……会話がまるで《《ガトリング砲》》だぜ。

 とはいえ、それほど嫌な気はしない。むしろ、テンセイとかってので俺がもう一度人生をやり直せるんなら、上流階級で良いに越したことはないはずだからな。


「さ、エミールのために部屋を用意したからそこに行くよ」


「ああ、分かっ……って、まてまて、なんか服とかはないのか?」


 この石の寝台みたいなのから起きてやっと気づいたぜ、素っ裸だったよ俺……とにかく、有り合わせの布を身に纏ってしばらく歩いた。

 しっかし、魔界と言う名の通り、途中で見かける輩は全部ゲームのキャラや、なんかのイベントに居る物好きなコスプレイヤーみたいな奴ばっかりだぜ。


「……あっ、魔王様! 隣にいる方はどなたでしょうか? 見かけない顔をしていますが……」


「フフフ、彼こそが未来の魔帝よ。将来は、私よりも上の存在になるのよ」


「な……!? あっ……か、魔帝様でしたか! これは失礼しました!」


 鳥人間……いや、ガーゴイルみたいな翼が生えた魔物は俺が魔帝だと知るや、少し混乱しつつも礼儀正しく敬礼した。なんだか、敬われるのは変な気分だぜ……前世では王族でもなんでもない只の一般人だったしな。

 ところで、この建物は重厚感のある中世の城みたいな感じで、デカいし広い。これは独りで歩いたら迷いそうだな……。


「ねえ、エミールは本を読んだりする?」


「え? ああ……ラノベっぽいやつとかなら少しは……」


「そう! じゃあ話が早いわ。これからたくさん本を読むことになるからね」


 えっ? いや、教科書とかの所謂「must(しなければならない)」系の本を読むのは好きじゃないんだが……しょうがない、やっと手に入れた地位だしな。やる前から手放すのは早計だろうぜ。


「じゃあ、俺から聞きたいんだが、俺はどうしてここに来ちまったんだ?」


「それは、あなたが一番よく知ってるんじゃないかしら? その身に宿っている能力、魔帝の血にね」


能力……あのとき目覚めた力の事か……? あれがまさか、魔帝の力だっていうのか……だが、今考えれば納得がいく。あれはいかにも、魔法としか形容できないものだったし、俺はそれを無意識に操っていた……。


「さあ、着いたわ。早速着替えましょう!」


 おお、豪華な部屋だな……インテリアとか壁の一部にはホンモノの金が使われているみたいだし、マジで貴族が住んでいそうな部屋だ……。


「着替え、私がやってもいいけど……?」


「いや、それくらい自分でやらせてくれ」


 魔王には裸を既に見られちまってるだろうが、着替えを他人に見られたくはない。それに、服を着るくらいのことなんざ子供でもできるぜ。

 試着室みたいなとこに入ってカーテンを閉める。さて、まずは鏡を……。


「!?」


 何だこの姿!? 思わず驚いちまったぜ……。

 なんか悪魔のツノっぽいのが頭に生えてるし、尻尾みたいなのも鏡の隅でウネウネしてる。中でも、俺の瞳は青いはずなんだが、右の目だけが黒くなっていて瞳が赤くなってる……おまけに、翼まで生えてやがる……魔王の姿と大分似てるけど、俺ってこんな人外な姿になってたのかよ……変わってない部分って、紺色の髪ぐらいなんじゃないか?

 こりゃあ、鏡を見るのはしばらく慣れそうに無いぜ……。


 とりあえず、クローゼットを……っておい、服が下着や上着とかをまとめて1着分しかねえ!


「服はそれを着てね~」


 せめて3着分ぐらい置いとけよ……どんだけこの服装に自信持ってるんだ……? ……まあいい、着れるものだけでも着ておくか。どれどれ……。


 ッチ、背中の翼がギュウギュウ引っかかってなかなか通んねえ! ソシャゲとかをやってた時に毎回疑問に思ってたが、ここまで着替えに苦戦するとは予想通りじゃないか……! さっきのガーゴイルも、服を着るときはこんな苦戦をしていたんだろうな……?


「手伝おうか? 翼が通らないみたいだけど……」


「ぐぬぬ……」


 前が見えん……くそう、魔王に頼るしかないのか……? 手探りでカーテンを……おわあ!?  思わずドサッと前に倒れた……。


「もう、無理しないで。これをこうして……」


 むう……結局、魔王の手を借りることになっちまった。翼をもっとコントロールできればこんな煩わしくないだろうに……。鏡の前には、なんか高貴で、それでいて無粋な服を着た俺の姿が映っている。


「おお、よく似合ってるね……!」


「そうか……なあ、魔帝とやらってなにか広大な響きだけど、そんなデカそうな役職に俺みたいなカスが就いて大丈夫なのか?」


 俺は学校のナントカ委員とかの責任者になるのはまっぴら御免で、ずっと避けてきたんだからな。指導力なんざ欠片もない俺がそんなとこに居て、物事がまかり通るわけがない……。明らかに恐怖政治へ一直線な気がするぜ。


「大丈夫、ばっちり私が鍛えてあげるし、困ったら頼っていいの」


「お、おう……」


「じゃ、次は図書館に行くわよ」


 俺の心配をよそに、魔王には意地でも「俺を魔帝にする」っていう気概を感じるな……。

第三話、遂に異世界突入です。

読んでいただきありがとうございます!


次回もお楽しみに!

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