覚醒する力
《前回のあらすじ》
テロに巻き込まれ、人質の一人になってしまった不運の少年、直樹。
藍香の力によりテロリストに一転攻勢することができたが、今度はボスの登場で再び形勢が逆転してしまう。ボスに絞め上げられた直樹は……
ぐッ……クソ……! クソ! クソ! 何かきっかけさえあれば……魔法みたいなものがあれば……! クソ! なんで、俺たちが人質なんて目に遭わなきゃならねえんだ! どうして、俺たちじゃなんとかできねえんだ!? クソッ! クソッ! クソッ! クソ! クソ! クソ! クソ! ク……ソ……!
……殺したい……あの覆面《屑ども》をッ……!
薄れゆく意識の中で、心の底からそう思ったとき……俺の《《何か》》がブチッと切れた気がした……。
次の瞬間、何をどうしたのか分からなかったけど、バシュンッ! って音と共になんか気弾みたいな……いや、「魔弾」というべき光の弾が俺の手から飛んでって、ボスの顔面に直撃した!
ドカァンッ……! 「ぐあぁッ……!」
それは爆発し、ボスはぶっ飛ばされて伸びてやがる……。
……は、はは、ハハハ……! いける……いけるぞ! 神様、俺の願いを聞き入れてくれてありがとう……! この力ならきっと……いや、絶対に十分なきっかけになるぜ!
まずは、皆を逃がさなければ!
「今のうちに皆は逃げろッ!」
人質の皆は混乱しつつも頷き、我先にと逆方向の出口をこじ開け始めた。が、出口をふさぐ大きな防火扉は思いのほか頑丈で、工具もないみんなの力じゃビクともしねえ。これでは時間が掛かる……ならば、もう一度さっきの感覚を……!
よし、うまくいったぜ! 再び発射された魔弾は開かずの扉をベコッと凹ませ、人の手でも十分押し開けられるくらいに脆くなったみたいだ!
そして、俺が次に目を向けたのは藍香の方……アイツを助けなきゃな!
「な、なんなんだ、お前!」
へへっ、テロリストども、銃を持ってるってのに狼狽してやがるぜ! さっきまで高圧的だったアイツらが、丸腰の俺一人に恐怖してやがる!
ズダダダダッ……!
ライフルから無数の鉛弾が飛んでくる……けど、今の俺にそんなものは役に立たない……よく分からないが、そう確信できるんだぜ……!
手を開いて前に突き出すと、今度はシールドのような《《薄紫色の膜》》が展開された!
パチンッ……ピカンッ……ガキンッ……ドキォンッ……!
触れた弾丸は音を立ててたちまち跳ね返り、床に散らばった……思ったとおりだ!
さて、覚悟してもらおうかッ! シールドを張りながら勢いよく突っ込む! そして、まず真正面にいる覆面の喉元に肘鉄を叩き込んでやるぜッ!
「ぐはぁッ!?」
二人目は魔弾で吹っ飛ばす! 三人目の覆面の胸に裏拳ッ!
続けざまに、四人目の首にハイキックだッ!
「ごはぁッ!」 「ぐふッ!」
……すごい、こいつらを倒すために思い付いた幾通りの攻撃方法と、身体がそれを可能にしてくれる! ここまで自分の思ったことの通りなるなんて、経験したことが無いぜ……!
「ハアアアアアアァァァッッ!!!」
全身からエネルギーを放つことをイメージすると、それは ドオオオォォォンッ!!! という爆発音とともに四方八方に魔弾が撃ち放たれ、残った覆面どもを一気に殲滅する……!
……「「「「「ぎゃああああああッ……!!!!!」」」」」……
黒こげになった床を踏みしめ、勢いそのままに藍香の元へ向かう……! そこに待っていたのは……
「と、止まれ、バケモノ! こ、コイツがどうなってもいいのか!?」
あの覆面野郎、藍香を人質にとりやがった……! 彼女は悔しげな表情を浮かべ、首元には刃物を当てがわれている……服は切られちまっていて、相当な屈辱を受けたであろうことが分かる……! 見ているだけで、さっきの数倍の怒りが込み上げてくるぜッ!!!
「わ、私に構わないで! 早くコイツをぶちのめしてよ!」
この窮地だってのに相変わらず、命知らずな奴だぜ……だが、今の俺はこの状況すらも覆せるはず……!
俺のイメージは、密かに手で指鉄砲を作って……あとは……!
「動くなよ、藍香」
藍香はいつもなら俺の話を聞かないやつなんだが、この時だけはすんなり抵抗を止めてその腕を下ろした。
よし、いいぞ……そのままだ……そのまま……
よし、今だ! これが俺の怒りだぜッ! 受け取りやがれッッ!!!
……ズキュゥンッ……!
ピストルともライフルとも違う、SFに出てきそうな光線銃みたいな音と共に小さく圧縮された魔弾が、素早く構えた俺の指鉄砲から放たれた……!
弾は狙い通り覆面の右の首元のみを撃ち抜き、覆面は首を抑えて倒れ伏している……!
「藍香!」
俺はすぐさまに、崩れかかる藍香の元へ駆け寄った……どうやら、《《行為》》には及んでいなかったようだ。彼女の身体は無事だ!
「……直樹……」
俺の力に恐怖したのか、助けてもらったことに感謝したいのか……そんな、よくわからない複雑な表情をしている。そして、藍香がなにか告げようとしたとき、視界の奥でボスが立ち上がるのが見えた……!
「おのれぇ……ガキどもに後れを取るばかりか、計画を台無しにされるとはな……!」
感情むき出しの剣幕な声を発しながら、ボスは懐からソフトボールくらいの大きさの《《何か》》を取り出した……それを掲げて……
「こうなれば、この場所諸共爆破してくれる!」
なんだっそら!? って、考えるまでもない。テロリストがこの状況でハッタリをかけるとは思えない……あの爆弾はヤバいぜ!
「藍香……すまん! 今まで世話になったな……!」
けど、ボスの方へ向かう俺の腕を、藍香は強く握って止めやがった。振り返ると、覚悟を決めた顔で彼女は俺を見つめている……!
「直樹一人で、できるわけないじゃない……私も行かせて!」
なっ……コイツ! 俺が今から何をするのか分かってやがるのか!? だが……だからこそだめなんだ! お前は……お前は……!
「フハハハッ! あと8秒で爆発するぞ! しかも、この建物の至る所に仕掛けた爆弾も一斉にドカンだ!」
「ほらッ! 何してるのッ!! 私、まだ直樹とデートすらしてないのよッ!!!」
……へっ、そうまで言われちゃ仕方がねえなぁッ! この命知らずめ、お前も一人は寂しいんだろッ!?
俺は藍香と初めて手を繋ぎ、構えた……。よし、さっきの指鉄砲のイメージだ……圧縮して一気に飛び出す感じ……うまくアイツごと爆弾を遠くまでぶっ飛ばせば、建物内の爆弾は爆発を検知できないはずだ……!
「今だッ!」
二人で思いっきり地面を蹴り、強烈な加速を得てボスに強烈なタックルをかけた! そして、そのまま30階の窓を突き破る!
「ぬおッ! 貴様ら……いいことを教えてやろう。この爆弾は、手から離れると何か衝撃を受けるまで爆発しなくなる! この手から離れたら……分かっているな!?」
なっ、爆弾を離しやがった! クソッ、コイツの言ってることが本当だとしたら……!
「衝撃を……何て……言ったのかしら? ほら……落し物よ……!」
あ、藍香……! 俺にかなりの力で引っ張られてるってのに、見事にボスが離した爆弾をキャッチしてやがった!
「な、こ、小娘! や、やめろ! それを手から離せッ! 死ぬぞッ!」
「いつ死ぬだって? もう関係ないぜ、俺たちはどの道死ぬんだからなぁッ!」
何時か忘れたが、《《人間の生きた価値》》ってのは死に様で決まるんだっけかな……? だったら、俺はどうなんだろうな? こんな空っぽの人生から、突如として迎えた壮絶な死……まあいい。今更……もういいだろう……。
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臨時ニュースです。
都内の高層ショッピングモールに立て籠もっていたテロリストたちが逮捕されたとのことです。
人質が一斉に脱出することに成功しており、警官隊とテロリストとの大きな戦闘はなかったとされています。
しかし、人質が囚われていたとされる30階の広間では爆発物などを用いた激しい戦闘の跡がのこっており、人質の内、都内の高校に在籍している佐藤 直樹(17)さんと、片桐 藍香(17)の行方が不明となっており、同じく行方が分かっていないテロリストのリーダー格と共に警察は捜査を進めています……。
第二話、読んでいただきありがとうございます!
次回もお楽しみに!




