魔界への道
《前回のあらすじ》
国王との謁見においてまず話題となったのは、今回の襲撃の件だった。エミールは身の潔白を証明するために、真実をすべて話す。しかし、衛兵のシャルロッテの妨害もあって、窮地に追い込まれてしまう……そこで、アリスの必死の弁護と証言によってなんとか山場を切り抜けることに成功するのだった……。
「国王様、彼の目付け役はわたしのギルドから選出させてもよろしいでしょうか?」
「ちょっと、お兄様? 勝手が過ぎますわよ。ここは国防騎士団から……」
「構わん。できれば、彼の知り合いを連れて行ってほしい。……さて、話はまとまったな。エミール、アリス、今日は疲れておるところをすまなかったな」
知り合い……おそらく、王様の考えは俺のことを尊敬し、信じている者を付けることで裏切らせないためだろうか?
「……国王様、一つだけよろしいですか。俺に《《禁書の閲覧》》を許可してもらいたいんです」
「ほう、何故に禁書を?」
「確かに、俺は魔界から来ましたがこちらから魔界に行く方法がまだ掴めていなくて……それで、魔界に通じると思わしき扉を探すために、禁書を閲覧させてほしいんです」
「あなた、自分の来た道も覚えていないんですの? 疑わしい……」
ッチ、このシャルって女の言うとおりだが、今の俺には何一つとして手がかりも行くべき場所も分からねえんだ……。
国王はしばらく思案した後、結論を出した。
「…………禁書を閲覧できれば、何かしらの手掛かりがつかめるのだな? よかろう、許可する」
「!……ありがとうございます!」
ふう……一時はどうなるかと思った……。けど、アリスたちと慈悲のお蔭で、俺は明日の朝日を拝むことが出来そうだぜ……!
「エミール、早速、図書館に行こうよ!」
「え、休憩しない……しないか?」
「まだ平気だよ! 私はちょうど体が熱くなってきたし! ほら、行こう!」
「待ってくれー! 俺も君たちに手を貸すぞー!」
俺たちは疲れを知らないアリスとグレイに引っ張られて、一直線に図書館へ向かう……まあ、グレイも本を探すのを手伝ってくれるみたいだし、ピンチはチャンスって言うのはあながち間違いじゃあないもんだな……!
「らっしゃ~い。って、また来たんだ、君たち……あれ、グレイ君もいるじゃないか」
「お久しぶりです、管理人。早速で悪いのですが、禁書の閲覧をしたいと思いまして……」
「なるほど……その様子だと、そこの二人は国王の許可は貰っているみたいだね。よし、結界を解いてあげよう」
魔法陣の描かれたあの妙なドアの前に再びやって来た。
管理人は指で何か見えない文字をなぞって……パチン! ……と指を鳴らした。すると、ドアは独りでに開き、俺たちを招き入れた……!
そこは日の光が射さず、明かりを灯さなければ周りが見えないほどの暗闇が支配している……。
「ちょっと埃っぽいのは許してね。っと、君たちは確か、地理に関することを知りたがっていたね」
「ああ。できれば、扉にまつわる伝承なんかも……まず、地理はこの部屋のどこにあるんだ?」
「えっと……ああ、あれだね。あのでかい棚」
うわっ、デカいな……禁書の地理の本棚が、表の人気ジャンルの本棚と同じくらいの高さだぜ……普通の本棚に少なかったのは、それだけ地理っていうのは見られたら困るものが載っているってことか……。
「そこで待ってて。扉についての伝承と、地理に関する本を持ってくるから」
そんなホイホイと集めてこれるものなのか……?
まあ彼女は管理人だし、俺たちは大人しく待機しているか……。
「……さっきも聞いたが、魔界に行くにはその扉が関係しているのか?」
「ああ、俺は向こうの世界から、扉をくぐってこっちに来た。それでアリスに会って、王都に来たんだぜ」
「なるほど……何か嫌なことでもあったのか? 魔族の君がこっちに来るなんて……」
「まあな……」 「いろいろあったんだよね……エミール」
嫌なこと……まあ、そうだな……アリスには話したが今思えばほとんど成り行きで来ちまったような気もする……これも、俺が自由に選んだ結果なんだな。これで良かったのか、悪かったのかは別としてだけど。
「はーい、持ってきたよ~。これが地理で、これが扉……なのかちょっと分かんないけどそれっぽい伝承が入ってるやつなら一応見つけてきた」
へぇ、ダメもとだったんだが伝承ってのも案外見つかるもんなんだな……
とりあえず調べてみるとすっか。
まず地理に関して調べてみたが、表にある資料よりも詳細に情報が記されてある……その地の成り立ちや、管理している者の名が記されているな。中には個人情報っぽいのもあるし、これは表に置いてはいけないっていうのも納得だぜ……。
「エミール、ココ見て。扉っぽいのが書いてあるよ……!」
伝承の方を調べていたアリスが見せてきた資料のページには、確かに「《《佇む扉》》」という名でその存在が明かされている……!
『ドルザードの西にあるその扉から、幾千万の魔の者たちが襲来し、エスタリカを火の海に変えた……どれほど昔からできたものかは分からないが、彼らが元の世界に帰った今は何らかの方法で施錠されている。 願わくば、二度とかの地へ続くその魔の扉が開かれないことを切に願う……』
……一部のみを引用したが、やべえってことは十分理解できたぜ……魔族が前にも来たことがあるというのはハインケルやレクスから聞いていたけど、国を火の海に変えるほど暴れるって……一体、何が目的だったんだ……?
「このエスタリカにそんな被害を与えたのか……ドルザードは、西にある沿岸部のことだったな……」
「その通りだ、グレイ。ドルザードの西には、私が聞き及んでいる限りでは小さな島がなかったかな?」
「はい……ザーク島、あの島はまだ開拓が進んでいなくて、そもそも人がいない無人島のはずです……まさか、そんなところに魔界への入り口があるとは……」
普通、魔族が帰る方向で大体割り出せそうなもんだと思うんだが……まあ、当時の人たちにそんな技術が無かったのか、それとも魔族側が特殊な能力でも使ったのか?
ともあれ、行くべき場所は決まったな……!
「王都から西にあるドルザードのさらに西……ザーク島に私たちは向かえばいいのね!」
「ああ……って、アリスもやっぱりついてくる気なんだな……」
「当たり前よ! 人数は多いほうがいいでしょ?」
まあな……外はもう夕方だし、出発は明日になりそうだ。
今日もいろんなことがあったな……昨日の直接戦うってよりも言葉の修羅場って感じだったが……。
「君の監視者の件はディードに任せようと思う。そうすれば、顔をよく知っている三人になる。その方が楽だろう?」
「ああ、そいつはありがたい。ディードにはこっちから伝えとくぜ」
「……すまないな、俺はギルドマスターだから直接君たちには協力できなくて……」
構わない。むしろ、グレイみたいな情に厚い奴がギルドマスターで良かったと思うぜ。畜生しかいないブラックな所じゃなくてラッキーだった……。
家に着くと二人は料理を用意して待っていた。
「へえ、あんたたち、魔界っていうところに行くのね……」
ディードの母はさほど驚きもしていない……? 俺たちは宴会に行くわけじゃあないし、危険な旅になると思うんだが……。
「必ず……とはいかないかもしれないが、無事に帰ってきたいと思う」
「そんなの当り前の事じゃない。それよりも、うちのディードが足引っ張らないかどうか心配だわ」
「か、母さん……」
いつも通りの反応だな……。でも、それが信頼の一つの形なのかもしれない。この人だって、俺たちが無事に戻ってきてほしいはずだしな。
だが、一番心配なのは魔王があっさりと契約を結んでくれるかどうかだ……俺のことを考えてくれているなら真っ先にサインしてくれると思うが、そうでないなら……嫌だな。魔王の強烈な愛とビンタの感覚は今でも俺の頬と手の甲、そして心にしっかりと焼き付いてるし……。
……できれば穏便に解決したいぜ……。
第20話、魔界への旅が始まります!
読んでいただきありがとうございます!
次回もお楽しみに!




