不運
この作品を手に取ってくれてありがとうございます。
初めての作品なので色々と拙い部分があると思いますが、よろしくお願いします!
時は西暦20XX年……。
ここは、俺たちが住んでる極東の国でも有数のデカさを誇るショッピングモールだ。近々、世界的なビックイベントを行うに当たって外国人も多く訪れているみたいだな。
「ねえ、直樹、欲しい物とかないの?」
「特にないぜ、藍香。用事はまだ終わんねえのか……?」
外国人になんか聞かれるのは面倒だし、面倒事には巻き込まれたくない。っていうのが、俺の本音なんだがな。こういう場所は、あまり来たくないぜ。
「まだよ。ほら、次はあっちの……」
ズダダダダッ!!!
!? 突如として耳を劈くような鋭い銃声が鳴り響き、思わず心臓が2~3センチくらい飛び跳ねたぜ……! 音源の方へ振り返ると、そこには十数人の黒い覆面を被った男たちが居た……。
「よう、モンキーども。その場に膝ついていろ。もし妙なマネしたら…わかってるな?」
男たちの手には、TVで中東のニュースが流れるときに一度は目にするであろう、ライフルっぽいデカい銃が握られている……。
突然の事に周囲は一斉に静まり、恐怖が辺りを包みだした……。
なんでこんなことに巻き込まれちまったんだかよく分かんねえけど、俺たちはこのテロの人質にされちまったみたいだ……。
《ど、どうしよう……直樹》
藍香の頼みで、俺は一緒に買い物に来ただけだってのに……。
覆面たちは二人だけこの広間に残ると、他の奴らは別の場所へ向かっていった。
《……ねえ、何とかできないかな……?》
おいおい、無茶言うなよ……魔法でも使えればこの状況を打開できるかもしれないが……そんなのはバカバカしいぜ。只の一般人でしかない俺たちに何ができるってんだ。大人しく政府が動くのを待つのが得策だな……。
ドドドドドッ……!
近くの場所から銃声……多分、付近に居たであろう他の一般人を追い払ったんだろう……外を見ようにも、俺たちの前に立ってるテロリストに窓は全部閉められちまってるし、奴らは銃を持ってる。無理だな……。
「さて……このまま座りっぱなしでもお前たちはヒマだろう? 俺の小話でも聞いてくれ」
どっちが暇人なんだか……と、その覆面は近くにあった椅子に腰かけ、話し始めた。もう一人の覆面はというと、銃を執拗に弄ってる……。
「このテロの目的はな、お前たちの国から技術を盗むことだ。主に、小型原子炉のな」
《げ、原子炉って……!》
原子炉……そうか、核ってことか。藍香のやつが小声でも驚いている理由はなんとなく察せる……。
「その原子炉を使って《《ある武器》》を作る。そいつを一番西にある大陸にぶち込んでやるのさ」
《やっぱりそんなことか……ところで、一番西の大陸ってどこだ……?》
《北米だよ! ヨーロッパから西にあるでしょ!》
《あー、なるほどな。けど、俺たちの国にぶち込まれるわけじゃないなら、お前もそこまで気にする必要はないんじゃないか?》
《何言ってんの! そこに住んでる人や、この国に滞在している人たちがどうなると思ってんの!? それに、世界的に考えても影響は大きいんだよ!》
《ったく、一々正義感の強いやつだな……そうは言うが、今の俺たちにはどうしようもないぜ? せめて、何かきっかけでもあれば話は別だろうけど、そんな映画みたいな事態は期待するだけ無駄ってもんだ》
すると、流石に喋りすぎたのたのか、銃を弄ってた覆面が相方の肩を叩いた。
「おっと……喋りすぎたな。だが、これで奴らは思い知るだろうなぁ……自分たちが最強だと思い込んでる豚ども。まさか、仲間の力で滅びることになるとはな……!」 プルルル……
などと抜かしていた覆面とその相方は、めんどくさそうにトランシーバーを取り出すと、こちらに背を向けて通信に応じた。
……ん? 今、覆面たちは片手にトランシーバーを持ってるし、後ろを向いている……それに、弄ってた奴の銃はなんかおかしいぞ……?
「……今だ!」
あっ、おい! 呼び止める間もなく、藍香のバカが飛び出していきやがった!
一人で駆けていったアイツは、何を鈍器にするわけでもなく、素手で肉薄していく……!
「おう、じゃあな……」 ドカッ!
うまい……! 一瞬の出来事だったが、通信が終わりかけていたお喋りな覆面の腕を蹴り上げて……気が付けば、その覆面は藍香に絞め技をかけられて、完全に身動きが取れなくなっている……!
「ぐうぅ……!貴様ぁ……!」
「こ、コイツ!」
もう一人の覆面が、手にしている銃の引き金を引こうとするが、弾が出ない……! そうか、あの銃は弾詰まりを起こしているようだな! さっきまで弄ってたのは、弾詰まりを直そうと試行錯誤していたんだ!
「みんな! 早くコイツとソイツを縛って!」
まったく、無茶しやがるやつだぜ。銃持ったテロリスト二人相手に圧倒しやがるとはな……! 覆面どもに、俺たちは有り合わせのロープやら紐やらで縛ってやり、口をガムテープで塞いでやった。
「「もごもご……」」
へっ、こうなっちまえば、テロリストと言えどただの人間に過ぎないぜ。とりあえず、銃は没収させてもらおうか。
「よし、外に連絡を……」
それからというもの、皆は次々にスマホを取り出してるな。SNS開いてるやつもいるし、110番に連絡しようとしているやつもいる。
が……
「あ、あれ? ネットに接続できないぞ!?」
「どうなってんだよ、此処のWi-Fiは設定してないはず……」
周囲は騒然とした。
それは俺たちのスマホも同様だ……外に出るときは基本的にWi-Fiは切ってるから、4G環境になるはずなんだが、画面の左上は「圏外」の表示になってる……。
「残念だったな!」
その聞き覚えのある声……! さっき広間に来るときに先頭を歩いていた、ボスっぽいやつだ……!
「まさか、俺たちが何の策も打っていないとでも思ったか。この建物には電波妨害装置を取り付けさせてもらった。ネットや外部との通信はできん。このトランシーバーを除いてはな」
用意の良いことだぜ……どうりで、アイツらはスマホを使って通信しなかったわけか……! ボスは俺たちの元に歩いてくる……!
……なんてな! 迂闊だな、いくら民間人といえど社会の屑同然のテロリスト相手に引き金引く躊躇いなんて必要ないぜ!
ズダダダダッ……!
俺の放った銃弾は全弾、ボスの胴に吸い込まれていった……それらは確かに着弾し、奴の身体を揺さぶった。
……? 何かおかしいぞ……確かに命中しているはずなんだが、手ごたえが……なにかこう、マトモにダメージを受けていないような……!?
「……残念だったな、小僧。こっちはソレへの備えもしておいたぞ」
なッ……! ボスはデカいトレンチコートを脱ぐと、防弾ジャケットを見せつけた……! クソ、頭を撃ち抜いていれば……!
「ふん、さっき同志に歯向かってきたのはそこの小娘か」
ッチ、俺など眼中にないというのか、目を藍香の方へ向けるとゆっくり近づいていく……! クソ、アイツが藍香に何をするのかは大体読める! 俺が何とか……
「邪魔だ……」 ドスンッ!
ぐぅッ!? 銃を撃ってる相手を平気で腹パンしていきやがった……! 思わず数秒間息が出来ずに悶絶したぜ……銃も落としちまった……。あ、藍香……!
「ふん、所詮は女だな。貴様に、同士がお返しをしたいようだ」
そう言うと、藍香はボスの後ろに居た覆面たちに投げられた……
アイツら、藍香を囲むと、ナイフみたいな刃物を取り出していて……!
「い、いやぁ!」
「へっへっへ……さっきはよくもやってくれたな……メスガキ! このツケはてめえの身体で払ってもらおうじゃあねえか!」
所詮は女…か……そうだ……男の俺が力がないばっかりに……藍香にならって俺も柔術とかなんかやっていれば……あのとき弾をボスの頭にぶち込んでいればこんなことには……!
「これから貴様らに見せてやろう、妙なマネをした愚か者がどうなるのか……」
ボスは俺の首を掴んで、締め始めた……! 片手だってのにすごい力だ……まるで万力で首を絞められているような……!
だ、だめだ……両手でも引き離せ……ねえ……!
クソッ……このままでは絞め…ころ…され……ちま……う……!
第一話、読んでいただきありがとうございます!
次回もお楽しみ!