第611話・言笑自若、矯角殺牛は禁止な。(人神合一、というか融合合体、みたいな?)
さて。
とりあえず破壊神マチュアに楔を打ち込んで貰ったので、無条件で残滓の贄というか肉体を奪われる事は無くなった。と、神様が話していたので間違いはないだろう。
とはいえ油断大敵、神様の楔と言えど絶対ではないらしい。
「まあ、とりあえずはいつも通りに活動できるっていう事だから、急ぎ幻想郷レムリアーナで残りの創世のオーブを回収してきますかねぇ」
「あ、その件だが。オトヤンはこっちの世界で待機な」
「はぁ?」
ここにきて、祐太郎から外出禁止が言い渡されるとは思わなかったんだが。
それって、どういうこと?
「ちなみに、その理由をプリーズ。もう大丈夫だと思うんだが」
「いや、大丈夫ではないなぁ。だってオトヤン、まだ肉体と魂……神核が分離したままじゃないか。それって、すぐに戻れるのか?」
「おっと、それじゃあ合体!!」
急ぎ肉体に重なりあったのだが、その瞬間に弾き飛ばされましたよ、それはもうね、全力で。
一体何が起きたのかと、神核状態で天啓眼を使ってみたのだが。
『ピッ……乙葉浩介の肉体は、現在の神核を受け入れるだけの器として成長していません』
だってさ、ウケる……ッテ、洒落になっていないわ!!
「あ~、ちょいと新山さんに質問。俺の体が、楔を打たれた今の俺の神核を受け入れるには、どうすりゃいいの?」
「う~ん。乙葉君が神核の力を制御して肉体の同調指数に合わせるか、もしくは肉体のポテンシャルを引き上げるか。そのどっちかだと思うんだけれど」
「それで、たった今、武神ブライガー様から神託が降りた。オトヤンはしばし休息し、肉体と神核の同調を最優先せよ、だってたさ。その間、幻想郷レムリアーナでの創世のオーブ探しについては、別のメンバーで行くしかない」
あ~、あれ、俺ってここでドロップアウトなの?
この半端にくすぶった状態で?
何の罰ゲーム?
そう思って皆の顔を見てみたけれど、流石に今回は皆、真剣な表情。
やっぱり、傍から見ても無茶し過ぎだったか。少しは自覚はあったけれどね。
「ふぅ……祐太郎、後は任せるわ」
――ガシッ
神核のまま右手拳を突き出すと、いつものように拳を握って合わせてくる。
これが、俺達の昔からの合図。
「とはいえ、幻想郷レムリアーナへの行き方については、祐太郎は理解しているのか?」
「そのための知識をくれればいい。後はぶっつけ本番で頑張るしかないさ。ちなみに新山さんも留守番な、オトヤンが無茶しないように監視してくれればいい」
「まあ、そうですよね、乙葉君はちょっと目を離すとすぐに無茶しますから」
「とほほ……信用ないなぁ」
「乙葉先輩は信用がないのではなく、無茶をしてもかならず成し遂げるっていう信用があるのです。だから、無茶しないで解決するという事も学んでください」
はい、紗那さんにも怒られました。
まあ、今回はまじめにゆっくりしますか。
という事で、俺が幻想郷レムリアーナへ向かった方法、あっちの世界で見聞きした情報、後、レムリアーナに向かえるようにする為の、簡易的な術式を構築して魔力圧縮し、祐太郎に手渡す。
「ほらよ、ここに全てが詰まっているから闘気分解して吸収してくれ」
「ああ、それじゃあさっそく」
――シュウウウウウウウウ
両手で圧縮した知識のオーブを分解し、それを体内へ取り込んでいく。
「ん……ああ、この魔術式で、いや、闘気による経絡術式か。安眠からの深層意識開放、虚無からの幻想郷レムリアーナへの道標と、あっちに置いてあったセーブポイント?」
「あ、多分だけれど、その経絡術式を闘気で文回し、セーブポイントへ向かうように意識すればいいだけだから、後、同行者は祐太郎を手を繋いで一緒に眠るだけでいい。ちなみにだけれど、まさか一人で行くんじゃないよな?」
「そりゃあ、無茶だわ。そうだな、行くとなると頼りになる……」
――シュパパパパパパパッ
ああ、りなちゃんがバスケットのディフェンスのように手を挙げている。
これが神技的ディフェンスだったら、全て躱し切っていただろうけれど。
「はーーーいはいはいっ、りなちゃんも幻想郷レムリアーナに行きたいです!! 紗那ちゃんも行きたいよね?」
「う~ん、りなちゃん、流石に今回は無理かなぁ、私はオートマタだから、睡眠は必要ないの。だから夢を見ないのよね」
「ぉっと、そうなると別の相方を探す必要があるか。そうだな、俺と瀬川先輩と……りなちゃんも一緒に行きたいのか?」
「あいあいさ!!」
また、変則的なメンバーで行く事になったか。
まあ、火力的には申し分なし、ついでに調査も出来るか。
「それならほら、宝楼嶺魔から預かっている石板だ。これの光点を目指していけば大丈夫だと思うから。後、幻想郷レムリアーナに向かったら、まずは飛行艇の船長に事情を説明した方がいい。とにかく、飛行艇の向かう先に存在するっていう事は確定しているからさ」
「分かった。それじゃあ、この石板は預かっておくから、後は任せろ」
そう告げてから、祐太郎はルーンブレスレットのアイテムボックスに石板を納める。
まあ、これで引継ぎはオッケーか。
後はまあ、このベッドで眠っている本体が成長するのを待つしかないのか。
「それにしても、この神核ってフワフワしていて、安定していないなぁ……と、ああ、ちょいと試してみるか」
空間収納から黒の魔導書を引っ張り出し、そこからいくつかの術式を実践する。
使うのは、ホムンクルスとゴーレム生成の術式、これを一つに纏めあげてから、俺の神威で仮の肉体を作り出してみる。
これが上手くいけば、神核を保有した仮初めの肉体を作り出す事が出来る。
それなら外を出歩く事が出来るのだが……って、ああ、俺が何かしようとしているのに気が付いた新山さんが、ジト~っとした視線を送って来る。
「お、と、は、君、また何か企んだでしょう?」
「ああ、神核状態では不安定なので、疑似的な肉体を構成してみようかと」
「はぁ。あのね、乙葉くんは暫くの間、魔術の行使を禁止します。これはドクターストップという意味ですから、必ず守って下さいね」
「あ~、そうなるか。まあ、それなら素直に従いますか……」
という事で、俺の計画は残念ながら失敗。
とはいえ、本気で心配しているので、本当に自重しますか。
何だかんだと雑談を交えた後、皆が自宅へと戻って行く。
そして翌日、新山さんから、祐太郎たちが幻想郷レムリアーナへと向かったという説明を受けると、俺は皆が無事に戻って来る事を祈りつつ、ベッドで眠り続けている肉体へと神威を注ぎ込み、循環させるという事を繰り返す事になった……。
まあ、祐太郎たちなら、大丈夫でしょう、きっと。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




