雷撃
宙に舞い上がった夥しい量の石塊や土塊が一箇所に集まっている。
追っ手の一団も矢で攻撃してくるが、シュワルツは土の障壁でかろうじて防いでいた。
「敵を討ち滅ぼさん」
という詠唱とともに宙の石塊や土塊が一斉に追っ手たちに降り注ぐ。
激しい攻撃の礫を相対する魔法師が風魔法でだいぶ防いだようだが、それでも自分たちに届くものもあった。
「オルドス、なんとかならんのか」
と追っ手の一団のリーダーらしい騎士が声を上げる。
「これで手一杯です。
あの男は魔力を使い果たし、死ぬ覚悟で攻撃をしかけてきています。
この攻撃を凌いだら、あの男はもう地に伏すでしょう」
「そうか、だが、防いでるだけでは、謀叛を起こしたヨハン卿を捕らえることはできぬ。
なんとかせよ」
「そうは言っても…」
オルドスと呼ばれる魔法師は風の防壁をコントロールしながら苦い表情を浮かべた。
「ギュント殿、なんとかなりますまいか?」
後ろに控えていたギュントと呼ばれる者は、魔法師のいでたちをしていたが、雷紋が描かれている面を被っていた。
「たしかに時を無駄にするのはまずいですね。ヨハン卿に逃げられてしまう。
では、私が」
彼は一歩前に出ると黒い手袋越しに握っていた黒くて太い魔杖を天に掲げた。
「天地を創造したまいし偉大なる創造主よ。
その栄光を担わせんがためにヒューマンを作りたもう創造主よ。
創造主の御心を最も受け継ぐ霊長たるヒューマン、
そのヒューマンたる我に大いなる御力を授けたまえ。
我をして雷もて仇を打たしめたまえ」
朗々と唱えると、魔杖の先端が光り始める。
光がいっぱいになったそれを振り下ろすや雷のごとき激しき光が前方に放たれた。
ベキベキベキ
シュワルツが構築した土の障壁は大半が砕け、それを維持していたシュワルツ自身も吹き飛ぶ。
ギュントなる男がもう一度魔杖を振り下ろすと雷撃がシュワルツを直撃した。
シュワルツは一瞬痙攣したかのように体が動いたがすぐに動かなくなりこと切れたのだった。
「ギュント殿の魔法はすごい魔法ですな。
これがブリツェン王国で発達した電撃魔法ですか。
まるで雷のようだ。
ブリツェン王国の魔法技術の凄さを目の当たりにする思いですなぁ」
ギュントはニヤリと笑って、
「国王陛下を守る最上級魔法師になると天空にも雷撃を生じさせて相手を攻撃できますよ」
この言葉を聞いた他の5人は身震いした。
自分たちの主人が北方の強国ブリツェンと組んだのはやはり正解だと思ったのであった。




