出会い
その日、僕はいつも通り同じ時間に、同じ道を通って高校に向かっていた。まだ通勤時間にしては早いため、すれ違う人は少ない。そんな時間帯に一人、長い髪を下ろした銀髪の少女が遠くの方から歩いて来る。
よく見ると同じ学校の制服を着ているが、校内では見たことがない。ましてや、話したことなどない。
「…あの」
「ん?」
声が聞こえてきた方向を見て、僕は思わず後ずさった。先ほどまで遠くにいたと思っていたあの少女が、いつの間にか目の前にいたからだ。
僕が彼女のことを考えている間に来たのか。いや、彼女はかなり遠くにいたのだから、あの短時間で来るのは無理だ。ということは、彼女は走ってきたのだろうか。いや、それもない。彼女は息が切れていない上に、髪の毛も乱れてはいない。息が切れる、切れないは体力が関係してくるかも知れないが、髪の毛が乱れる事に関しては、くしでとかさない限り無理だ。では、やはり僕が思っていた以上に長い時間考えていたのだろうか。
「すいません」
自分の世界に入っている時に急に話しかけられ、僕はビクッとなってしまった。
「ああ、はい」
「そんなに見られると、少し、恥ずかしいです」
彼女はそう言うと、白い頬を赤らめながら俯いた。
どうやら僕は先ほどのことを考えている間、ずっと彼女のことをみていたらしい。そのことを理解すると、途端に顔に熱が集まり始めた。
「…ご、ごめん」
ああ、また僕はやらかしてしまった。毎回この癖のせいで面倒ごとに巻き込まれたりする。
幼い頃には、ガキ大将の弱いものいじめを見てなぜやっているかと考えていたら、ガン飛ばしていると勘違いされたらしくぼこぼこにされたことがあった。またあるときには、クラスのある女子のグループ関係について考えていたら、変態と勘違いされたのかそれから軽蔑されるようになった。
きっと彼女も今までの人と同じように僕を軽蔑するか、ぶったりするんだろうな。と泣きそうになりながら覚悟を決めて相手の返事を待った。
「いえ、いいのです」
この返事を聞いたとき、僕は正直驚いた。顔こそ俯いたままだが、優しく、静かにこう告げてくれた人に会ったのは、生まれて初めてかも知れない。
二人の間に冷たい秋の風が吹き抜けていく。その風とともに、人々の話し声や笑い声が聞こえてきた。どうやら、通勤時間に近づいてきたようである。
さすがに、この状況を誰かに見られるのはまずいと悟った僕は、彼女と別れることにした。彼女は何か言いたげだったが、僕はもうあの雰囲気に耐えきれなかったため、また明日ここで会う約束をして別れた。




