二日目 非日常
次の日、僕は約束通り同じ時間に昨日と同じ場所であの子を待った。
けれど、待ち始めてから15分たった今でも、それらしき姿は見当たらない。約束を忘れてしまったのだろうか。もしくは寝坊か…。
どちらにせよ、面倒なことになってきた。
このまま待つのをやめて学校に行けば、すれ違いになるかも知れない。かといって、このまま待ち続ければ、遅刻になる可能性が出てくる。
この場所から学校までは、約15分。始業時刻は8時30分。今の時刻は7時15分。
まだまだ間に合う時間帯ではあるが、遅くとも20分前には校内に入っておきたい。
そうだとしても、置いていくのはどうかと思うな…。かといって、学校には遅刻したくない。どうしたものか…。
「あの」
不意に小さな、澄んだ声が聞こえてきた。
すぐに辺りを見回したが人影は見あたらない。
「下です。下!」
今度は少し怒りを含んだような声が聞こえた。
その声に促されるようにして、自分の目線を下ろしてみると…。
「う、う、うわぁぁあああ!」
「…うるさいですよ」
その声は、昨日出会ったあの子のものであった。
…相変わらず不思議な現れ方をする。
「ああ、昨日のあの子じゃないですか。なにかあったのですか」
「すいません。寝坊してしまったもので」
「なるほど」
僕のことを嫌っていたわけではなかったようだ。
「ところで、大祐さん。あなた、一人で何をしゃべっていたのですか」
「え、もしかして、何か言ってましたか?」
「はい」
「何を聞きました?」
「私が聞いたのは、学校には遅刻したくないんだよなぁ、です」
うわ、この状況で一番聞かれたくないところ聞かれたな…。かなりの罪悪感…。
それより、この子。今僕の名前を言わなかったか…?もし僕の聞き間違いじゃないならば、なぜ知っているんだ。
「私があなたの名前をなぜ知っているのか、ですか」
「うん、そうなんだけど…っえ」
「実は私、あなた方に神と呼ばれる存在の者ですから」
ん?え?
今なんかすごいこと言わなかったか?え、神、髪、紙。え、ええ…。
「ああ、深く考えなくてもよろしいですよ」
「そう言われても…そもそも、本気で言っているのですか?」
「ええ、もちろん。私はいつでも本気です」
ああ、どうしたもんだろうか。この彼女の顔。嘘をついているとは到底思えない。かといって、そう簡単にはいそうですかと認められるような内容でもない。
「ああ、信じなくても結構ですよ。それが普通の対応というものです」
「はあ、すいません」
「いえ、いいのです。この先、認めざるを得なくなるのですから」
あ、これは何となくやばい気がする。そう思ったときには時既に遅し。不敵な笑みを顔に貼り付けたまま、この子は僕の両手をしっかりと掴んだ。
そして彼女は少し足を曲げ、力を入れる。そして一言。
「危険ですので、私の手をしっかり・んでおいて下さいね」
その言葉が終わると同時に、彼女は勢いよく地面を蹴った。勢いよく体が持ち上がる。その状況について行けなくなった僕の意識は、ここで途切れてしまった。




