異変 3
「あ、犬井さん……」
「逢沢君、伊丹君がどうかしたの?」
犬井に聞かれて俺は席を立った。
そして、何も答えずにそのまま教室を出る。
「ちょ、ちょっと! 逢沢君、何処行くの?」
昇降口迄やって来た時、犬井と栄介が、俺のことを急いで追いかけてきた。
「ねぇ、逢沢君。教えてよ。なんで伊丹君、逢沢君に謝ってたの?」
「い、犬井さん……その俺がちょっと、ね……」
いい加減面倒だった。どうにもこうにも、最近は上手くいっていない。
犬井はこんな感じだし、頼みの長澤も学校を休んでいる……
これでは完全に俺の計画が丸つぶれではないか。
俺は眉間にしわが寄るのを感じた。ダメだ。怒ってはならない。ここではあえて冷静に対処するのだ。
俺は、精一杯笑顔を作って犬井の方を見た。
「いや、なんでもない。ただ、悪いんだが、今日は一人で帰らせてくれないか?」
「え……あ……」
俺の不気味な笑顔を見て何とも言えなくなってしまったのか、犬井は呆然としていた。
栄介も何も言わずに俺を見ている。
「う……うん。わかったよ」
「悪いな、犬井」
それだけ言って俺は犬井と栄介に背を向けた。大きく息を吐き出す。
我慢だ。ここは我慢。
どうにかして次の手を考えなければならない。
俺はわざわざ人生のモットーを変えてまでここまで努力してきたのだ。今更後には引き返せない。
俺はいらつきの余り爪を噛みながら、校門を出たのだった。




