目立たないと言うこと 2
「栄介。今日は部活なのか?」
俺が近付いて行くと栄介は俺の方に振り返った。
すると、なぜかニンマリと微笑んで俺を見る。
「ううん。部活はないよ」
「そうか。だったら一緒に帰れるな」
ほっと一安心した。これで「栄介と帰る」という大義名分ができる。形だけの「友達」というのも役に立つときもあるものだ。
「あー、でも無理だね。直人とは一緒に帰れない」
「そうか……は?」
意味がわからなかった。さっき、コイツは俺と帰れると言ったはずである。
それなのに、今は無理と言った。
「どういうことだ?」
「ふふふ……直人。僕だってねぇ、そこまで朴念仁じゃないよ。せっかく親友が青春を謳歌しているっていうのに、それを邪魔するようなことはできないねぇ」
栄介はそういうと立ち上がり、ニヤリと俺に向かって微笑んだ。
「寂しいけれど、僕は今日は一人で帰ることにするよ。ほら、あんまり待たせちゃうと可哀そうだよ?」
そのまま栄介は呆然とする俺を残して教室を出て行ってしまった。腹立たしくなぜかいいことをしてやったと言わんばかりの表情で。
「あ……逢沢君?」
もうこうなっては仕方ない。俺は腹を決めることにした。
「帰るか」
俺がそういうと、犬井は嬉しそうに顔を明るくした。
違う。俺が見たいのはそんな表情ではないのである。
俺は悲しい気分になりながら、犬井を一緒に昇降口へと向かった。何もしゃべらずにそのまま校門を出る。
できることならこのまま犬井には何も喋ってほしくなかった。そうすれば、俺も犬井の会話に返事をする必要がなくなる。
しかし、そんな願いは簡単に打ち砕かれ、犬井は思いつめた様子で俺の方に顔を向けて来た。




