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大いなる茶番 1

 そして、放課後、授業が終わり俺は隣を見る。


 既に犬井の姿はない。どうやら長澤は既に校舎裏に呼び出したようだ。


 俺は立ちあがり、そのまま校舎裏へと向かう。


 ここで栄介などに出会っては面倒なことになるので、なるべく足早でそのまま校舎裏へと向かった。


 そして、俺自身が指定した場所に来ると、俺は足音を忍ばせる。


 声が聞こえてきたのだ。


「おい、駄犬よぉ? てめぇ、最近調子乗ってんじゃねぇの?」


 ガラの悪い声。間違いなく藤野の声だった。


 どうやら、八百長は既に始まっているらしい。


 俺は壁越しに声のするほうを覗き込んだ。


 確かに既に長澤と藤野と犬井の三人の姿があった。


 藤野は少し前のように犬井に向かって大いにガンを付け、ガラの悪い声で威嚇している。


「そ、そんな……調子になんて乗ってない……です……」


 一方の犬井も完全に少し前と同じく、弱々しい声で辛そうに藤野に対応していた。


「あぁん!? てめぇよぉ、お前は私達のおもちゃなんだからよぉ、あんまり調子こいてっと、どうなるかわかってんだろうなぁ?」


 藤野の脅しに相変らず犬井は泣き出しそうだ。


 少し前と同じ光景。何も変わっていない。


 考えてみれば、犬井は特に強くなったわけではない。


 イジメに対して自分でそれを解決したわけではないのだ。


 だから、藤野や長澤がまたイジメを再開しようものなら成す術もないのである。


 まるで逃げることしかできない草食動物を見るような気分だったが、それはそれで憐れな姿の犬井を見ているのは、俺の心を十分に満たしてくれた。


「可憐。それくらいにしときな」


 すると、長澤が今までガンをつけていた藤野を諌める。


 藤野が渋々犬井から離れると、今度は長澤が無表情で犬井に近付いて行く。


 犬井はビクビクしながら近付いてくる長澤を見つめていた。


 長澤はまるで何かを観察するかのように犬井を眺めていた。


 なんだ? 俺は別にそんなことをしろと言った覚えはないのだが……


 そして、しばらく経ってからのことだった。


「ふぅん。なるほどね」


 何かを得心したようで、長澤はそう言った。


 犬井も、藤野さえもよくわからないという顔で長澤を見ている。


 すると長澤は犬井を冷たい視線で見下ろした。


 犬井はさらに身体をすくませて、後ずさりする。


「よし。駄犬。脱ぎなさいよ」


「……へ?」


 長澤はサディスティックな笑みを浮かべて犬井にこう言った。


 その表情は、どこか見覚えのあるような顔のような気がしたのだった。

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