協力者、再び 3
……好き?
好きって……なんだ? 好き、って。
あれか。長澤は、まさか、俺が犬井のことを好き、だとも思っているわけか。
好き……か。
「ふっ……あははっ!」
思わずその言葉を頭に浮かべると自然に俺は吹き出してしまった。
「は、はぁ? な、何よ……」
突如として笑い出した俺を不審そうに見ながら長澤がそう言う。
「あ、あはは……ああ。すまない。いや、好き、か……安心しろ。そんなくだらない感情ではない」
「くだらないって……じゃあ、なんでアンタ、そんなことをしようとするわけ?」
「そんなの簡単だろう? 犬井に俺のことを信用させるためさ」
「信用……させる?」
長澤は納得しかねている表情で俺に訊ねてきた。
「そうだ。犬井はどうも俺に対して一定の警戒心を持っているようだ。それを一気に解消したい」
「そんなの、普通に解消しなさいよ」
「普通? どんな風に?」
「だから……仲良くしなさいよ」
「仲良く? 奇妙だな。さんざん犬井をイジメテいたお前が、俺に犬井と仲良くしろというのか?」
俺がそういうと、長澤は戸惑う。
「そ、それは……でも、アンタ、そ、それはおかしいわよ」
「おかしい? なぜ?」
「だ、だって……そ、それってつまり……八百長でしょ?」
「八百長?」
俺は思わず聞き返してしまった。
自分が変なことを言ったと思ったのか、長澤は顔を少し紅くして反らした。
「だ、だから……駄犬を騙しているじゃない……」
「騙す? いいや。騙してなんかいないさ。お前が長澤をイジメる。そして、俺がその助けに入る。その事実は変わらないだろう?」
「いや、だから……アンタが助けに入ってきたら、私は駄犬をイジメるのをやめるんでしょう? それはアンタに頼まれたからやめるわけで……」
「なんだ? お前、その口ぶりだと、渋々イジメをやめてやる、みたいな言い方だな」
「え、だ、だって、その通りじゃない……」
そこで、俺はあえてわざとらしく大きな溜息をついた。
「そうか。いや、別にいいんだ。ただ、俺はあまり乱暴なことをしたくないから、あくまでそう言う風にしてもらおうと思ったんだがな」
「え? ら、乱暴?」
その言葉を聞いて、長澤の顔つきが変わった。
不安そうな影がそこに宿ったのである。




