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そして、しばらくの間を置いてから俺は隣の席へと顔を向けた。
犬井が瞬時にビクンと反応するのが如実にわかった。自然と口の端が釣りあがる。
「犬井」
俺がそう呼ぶと犬井はビクンと如実に反応し、視線だけこちらに向けて来た。
「……な、何?」
あのパンツの件以来、この三週間、俺は全く犬井に話しけなかった。
それは、俺の計画のためでもあるが、一切話しかけなくなった場合犬井はどんな反応するかを見てみたかったのだ。
しかし、俺の意に反して犬井は特に目立った行動もしてくれなかった。俺のことをチラチラと見るだけで怖がって俺に何もしてこようとはしなかった。
ここで俺は、犬井理香子という女子が、こちらから何かアプローチしなければ面白くならないということを改めて確信した。
よって、俺は三週間ぶりに犬井に話しかけたのである。
そして、相変らず脅えた様子で俺を見る犬井の目を俺は真っ直ぐに覗き込む。
「お前、今、誰のおかげで今平和に暮せていると思っているんだ? ん?」
犬井がゴクリと生唾を飲み込んでいるのがわかった。どうやら、余程緊張しているらしい。
「そ、それは……あ、逢沢君?」
「いやいや。それは違う。別に俺は何もしてない。突然、お前を苛めていた長澤がお前に謝って、それでお前は解放されたんだ。別にお前は俺に感謝する必要はないんだ」
「そ、そう……なの?」
「ああ。それに、パンツ、も貰ったしな」
「パンツ」の部分だけやたら強調して俺がそういうと、犬井は顔を真っ赤にして俯いた。
予想通りの反応過ぎて思わず笑いが湧き上がってしまう。
「だから、俺はお前にとっての恩人でもなんでもないわけだが、お前にちょっとお願いがあるんだ」
あくまで「恩人でもなんでもない」という点を強調した上で俺は犬井に話を続ける。
犬井は困り顔で俺を見る。
「お願い……? も、もう……パンツはあげないよ……」
「誰も、もうパンツが欲しいなんていってない。それに、お前にもらったパンツはまだ持っているしな」
「……へ、変態」
「変態? 大丈夫だ、安心しろ。お前のパンツをそう言った目的には一切しようしていないから」
「そ、そういう意味じゃない……!」
いい加減犬井も、俺の態度にイライラしてきたようだ。
いつもビクビク脅えている犬井が、その顔に少し怒気が宿っている様を見るのもやはり良いものである。
俺はついうっとりと、その表情を眺めていてしまった。




