勝ち得たモノ 5
「も……もう、いいよね?」
「……え? 何が?」
「もう……私、帰る」
犬井はなんとか腹の底から絞り出すようにそう言った。
未だ笑いが収まらない俺は、腹を抱えながら犬井を見る。
「お前、本当にいいのか?」
犬井が立ち止まる。なんとか笑いを抑えて俺は冷静さを取り戻した。
振り返った犬井はやはり恥ずかしそうだった。
「な、何が?」
「だから……このまま帰るのかよ?」
俺は手にもったパンツをヒラヒラとさせて犬井にそう言う。
誰のせいでこんなことになっているのかと言わんばかりの目付きで、犬井は俺を見た。
「……か、帰る」
「ほぉ。大丈夫なのか? 強い風が吹いたり、道で転んだりして見ろ。お前、下手をしたら逮捕されるぞ?」
「た、逮捕なんてされない……だ、大丈夫」
何を根拠にそんなことを言っているのかわからなかったが、犬井はそのまま俺の前から去って行ってしまった。
残された俺はもう一度、手にしたままの純白のパンツを見る。
別にこれといった湧き上がる欲望などはなかった。ただそこにパンツがある。それだけの事実。性欲的な意味での幸福は俺には存在していなかった。
しかし、喜びはあった。犬井が、追い詰められた犬井が、自分の穿いていたパンツを俺にささげたのだ。
いわば、これは犬井の一部だったものである。そう考えると俺の中之ドス黒い何かが歓喜の声をあげて喜んでいるようだった。
まだまだ楽しめる。俺はパンツを見ながらそう思った。
よし。犬井理香子というおもちゃを使った「遊び」を、次のステージに進めよう。
俺は手に入れたパンツを鞄の中に突っ込みながら、これからの幸せな未来を思い、それ以上に幸せな気分になったのであった。




