逢沢直人の機嫌の良い日 4
それにしても犬井理香子というヤツはどこまでも俺のことを飽きさせないヤツである。
そう思うと俺の中では、ますます犬井理香子で遊んでみたいという気持ちが湧きあがって来てしまった。
「だが、犬井よ。お前、もし長澤が本当にお前に対する嫌がらせをやめたら、今度こそ俺に下着をくれるか?」
俺がそういうと、犬井の表情が変わった。
「え……え、えっと……」
「そうだな。例えば、長澤がお前に謝ってきたりしたらどうだ? それはもう、長澤がお前に対しての嫌がらせをしないっていう証拠になるだろう?」
「え……そ、それは……そうかもしれないけど……」
「だったら、俺との約束を果たしてくれてもいいんじゃないか?」
それでも犬井は納得できないようだった。しかし、犬井が納得しようがしまいが、いずれ俺の言うことに従わなければいけない時が来るのだ。
「まぁ、考えておいてくれ」
俺はさも紳士ぶった調子でそう言った。心の中では楽しくて仕方なかった。
俺は犬井に感謝していた。間違いなく犬井こそが俺の人生の新たなポリシーなのだ。
思わず表に出てきそうな不気味な微笑みを抑えながら、俺はポーカーフェイスを心がけた。
教室には先生が入って来て、いつものように授業が始まる。
さて、問題は長澤がキチンと犬井に謝るか、だ。アイツが俺の言った通りに動いてくれないと事は始まらない。
冷静に考えてみれば、別に長澤にしてみれば謝る必要なんてないのだ。だが、アイツは昨日、謝ると俺に言った。
俺は前の方の席の長澤を見る。どこか落ち着かないように見えるのは俺の気のせいだろうか。
まぁ、焦っても仕方ない。ダメで元々、気長に待った方がいいだろう。
俺はのんびりと構えることに決め、穏やかな気持ちで先生が話す言葉を適当に左の耳から右の耳へと聞き流していたのだった。




