報復 3
「な、何?」
「約束だ。俺が要求したものを寄越せ」
「え……で、でも……」
俺の物言いに対し、犬井は何か言いたそうだった。
「でも、なんだ? 何か不満でもあるのか?」
「ふ、不満ってわけじゃないけど……」
「じゃあ、早く寄越せ」
「……こ、ここで渡さなきゃダメ?」
犬井の言葉に俺は周囲を見渡す。
周りにとっては犬井に俺が話しかけていること自体が珍しいらしく、皆好奇の視線で俺と犬井を見ていた。
無論、長澤と藤野も……特に長澤の方が不機嫌そうな顔で俺達を見ていた。
「そうか。なら人目のつかないところで渡してもらおうか」
犬井はそれでも嫌そうな顔をしていたが、俺がそれを無視して廊下に出ると、まもなくその背後から付いて来た。
「あ、逢沢君……ほ、ホントに渡さなきゃダメ?」
廊下を並んで歩きながら、犬井は俺に訊ねる。
「ああ、ダメだ。まさか、持って来てないのか?」
「え……い、一応持って来てはいるけど……」
一瞬戸惑った後、犬井は躊躇いがちにそう言った。
「そうか。じゃあ問題ないな」
俺としては犬井が持ってきていると応えたこと自体に驚いていた。
持ってこなくても仕方ないと、俺は思っていたのだ。それなのに犬井は持ってきた。普通に考えればそんなもの、要求されたからって持ってこないものだ。
どうにもそういうところに、長澤と藤野のおもちゃになってしまう所以が、犬井にはあるような気がする。
そして、昇降口を出て、人目のつかないところということで、俺は校舎裏を選んだ。
案の定校舎の裏なんかには誰もおらず、下着を手渡してもらうのには最適な場所だった。
「さぁ、渡してもらおうか」
俺は無慈悲にこう言った。
犬井は助けを求めるような顔をする。
再び例の感覚がやってきた。どうやらやはり俺のあの感覚を呼び起こすには、犬井の表情が必要らしい。
しかも、なるべくなら犬井が追い詰められ困っているような顔が理想的なのだ。
そして、俺はこの時確信した。
自分が長澤や藤野とは違った意味で、犬井をおもちゃにしようとしているということに。




