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実行 2

 しかし、なぜか教室の入口の前で犬井は立ち止まっている。


「あれ? 犬井さん、何しているんだろう?」


 栄介も気付いたようだった。というか、クラスの大半がそれに気付いていた。


 そして、今まで話をしていた長澤と藤野もそれに気付き、ニヤニヤと笑みを浮かべながら犬井のほうに向かって行く。


 その瞬間、皆が犬井から視線を反らした。


「よぉ、駄犬。どうしたんだよ? 教室、入らねぇのか?」


 藤野がガラの悪い態度で犬井に訊ねる。


 犬井は脅えた表情で目を反らした。それが気に触ったのか、藤野は犬井に顔を近づけてさらに声を上げる。


「おい、てめぇ。舐めてんのか? 朝っぱらから調子乗ってんじゃねぇぞ?」


「やめなよ、可憐」


 と、それをなだめる長澤。


 そして、わざとらしく優しげな笑顔を浮かべながら犬井に顔を近づける。


「何? 駄犬? 教室、入らないの?」


「え、えっと……その……」


 ようやく犬井は口を開いた。既に肩が震えているのが俺の席から見てもよくわかる。


「もしかして、私達のことが怖いわけ?」


「そ、そういうわけじゃ……」


 犬井は限界のようだった。


 俺だけにはわかった。犬井が教室に入ってこない理由。


「……よし」


「え? 何? どうしたの、直人?」


 俺は、立ち上がった。


 栄介が目を丸くして俺を見ている。


 そして、そのまま一直線に長澤と藤野、そして、犬井の方に向かった。


「おい」


 そして、長澤と藤野の後ろから声をかけてみた。


 その瞬間、犬井がこちらを向いて俺を見てきた。


「あ?」


 藤野が相変わらずのガラの悪い表情で俺の方に振り返ってきた。


 長澤のほうは無関心そうな顔でこちらを向いてきた。


「どけよ」


「あ? なんだ、てめぇ」


「どけ」


 藤野は怒っているようだったが、同時に意味がわからないようだった。


 大方自分達の「お遊び」にこのクラスの面々は誰一人として関わってこないと思っていただろう。しかし、それが崩れた。


 それは藤野にとっては不可解なことであったに違いない。


「何、アンタ」


 そういってきたのは長澤のほうだった。


 長澤の方は、俺に単純に興味がないと言う風だった。自分の楽しみを邪魔されて不機嫌といったぐらいの程度だ。


 しかし、長澤のその言葉を聞いて、クラスの大多数がいよいよ以て俺と犬井、そして、藤野と長澤に注目を始めたようだった。それまでがやがやと騒がしかったのに、既に教室内で喋っている生徒は誰ひとりとしていない。

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