↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/167

犬との出会い 4

 そんなことを聞いてどうするのかと、聞いている俺自身でさえ思うような質問だった。


 嫌なのは、当たり前ではないか。嫌だからこそ、犬井は、こんな嗜虐心を煽るような情けない表情をして小さく背中を丸めているのだ。


 そんな俺の質問に対して、犬井は困ったように顔をしかめる。


「い……嫌……だよ……」


 喉から押し出すような声で犬井は言った。


「そうか。嫌なのか」


「でも……仕方ないよ……」


「仕方ない? なんでだ?」


「だって……長澤さんと藤野さんには……逆らえないよ……」

 泣きそうなな笑顔を浮かべて、犬井は呟くようにそう言った。


 逆らえない。確かにそうだろう。転校生の犬井にしてみれば、クラスで恐れられている不良女子コンビの長澤と藤野に対抗するというのは、それこそ、アリが象に戦いを挑むようなものである。


 最初から負けは見えている。いや。既に負けているのだ。だとしたら、敗北した者は勝者の言うことを聞かなければならない。


「そうか。逆らえないか」


 犬井はコクリと頷いた。


「なんで逆らえないんだ?」


 俺はそう聞いた。既に自分の中でその理由ははっきりしているというのに。


 犬井も俺の質問に驚いたようだった。


「だ、だって……な、長澤さんと藤野さんは……こ、怖いし……」


「怖いと逆らえないのか?」


「……そ、それに、私……転校生だし……」


「転校してくるとイジメられるのか?」


 俺の質問に犬井は答えられないよくなったようだった。俯いたまま指先をモジモジとさせている。


「なぁ、犬井。それは、おかしくないか?」


 俺は言った。おかしい。それはおかしいと思ったからだ。


 転校してくるとイジメられるというのは間違いなく可笑しい。理由になっていないではないか。


「で、でも……」


「でも、なんだよ? お前、自分がどうしてイジメられているか、分かっているのか?」


 俺がそういうと犬井は俺の顔を見上げた。


 犬井の瞳には、確かに涙がうっすらと溜まっていた。涙を湛えた瞳のままで、俺のことを見てきたのである。



 その時、俺の精神に、何かとてつもない衝撃が走ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。