【後日談】『月曜の教室』
文化祭が明けた月曜日。
陽太は、学校を休まなかった。
いつも通り教室の扉を開けると、そこには凍りついたような沈黙が待っていた。
「……あ、陽太……おはよ……」
山田が、腫れ物に触るような、引きつった声で挨拶をしてくる。
陽太は、笑わなかった。
「……あぁ、おはよう」
地声のまま、愛想のない、平坦な声。
そのまま自分の席に座り、机に突っ伏した。
ざわめくクラスメイトたち。「あいつ、マジで頭おかしくなったのか?」「昨日のは何だったんだよ」。
でも、不思議と身体は軽かった。
100点の笑顔を維持するための、あの顔面の痛みがない。
背後から、聞き慣れた、突き刺すような声が降ってきた。
「……ひどい顔。でも、前よりマシね」
「……氷川か」
陽太が顔を上げると、彼女は冷めた瞳で陽太を見下ろしていた。
「今日の挨拶、マイナス100点。愛想の欠片もない、最低の対応だわ」
「そうかよ。……採点が厳しいのは変わらないんだな」
「ええ。だから放課後、屋上で続きをやりましょう。あんたの『本当の顔』、じっくり評価してあげる」
氷川は一瞬だけ、楽しそうに目を細めた。
二人の間に漂う、重苦しい空気を切り裂くような、静かな秘密の会話。
陽太は再び机に顔を埋めた。
明日がどうなるかなんて分からないし、この先ずっと嫌われ続けるかもしれない。
でも、もうスマホに「相槌の打ち方」を書き込む必要はない。
――今日は、何を話そうか。
真っ白なスマホの画面を眺めながら、陽太は初めて、自分の足で人生の幕を開けた。
演者・陽太の最終回これにて完結です!
また違った作品をかけたらなと思ってます。




