表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴婦人は優雅に微笑む  作者: violet
番外編
65/65

婚約解消の罪

1,200万PVに驚き、喜び、小躍りしているvioletのお礼も、これで最後の話になります。

楽しく読んでいただけましたら幸いです。

ライリック国王ジルブライトは、正妃としてリリアーヌを迎える方法を考えていた。

側妃のうち男子を産んだ者を正妃としようと思っていたが、それではダメなのだ。


ノーマン王国宰相であるリリアーヌの父デーゲンハルト公爵は言った。

『ただし、正妃以外は認めない。他に妻のいる男に嫁がすつもりもない。他の側妃は離縁して国元に返すこと。ノーラン国内は、私が取りまとめよう。アザレア王女の代わりにリリアーヌを嫁がす』

リリアーヌを側妃として迎え、他の側妃に通わねば、子供を産むのはリリアーヌだけであり正妃は確定しているのと同じだが、それではデーゲンハルト公爵の許可は得られない。


だが、二人の側妃は、それぞれが友好国の姫であり、関税、防衛と(から)み合った利害関係にある。穏便に離婚ができる可能性はないに等しい。

ジルブライトは王として国を護らねばならない。

確定していないリリアーヌとの婚約は秘めて、ノーマン王国アザレア王女との婚約が解消されたことだけを公表した。


そして、密かに後宮に噂を流した。


『ジョセフィーヌ側妃が、懐妊したらしい』

ジュセフィーヌはジルブライトの側妃の一人である。


噂を放置して、ジルブライトが後宮に行くことはないまま3カ月が過ぎた。


ジョセフィーヌ側妃は毒殺され、犯人として、もう一人の側妃であるケイティ側妃が捕らえられた。


後宮は警備が厳重になっているが、中は女だけの世界だ。20人以上の妃や愛妾を持った王もいた。

ジルブライトの後宮は正妃がおらず、二人の側妃とたくさんの侍女で成り立っていた。

後宮は王子、王女の暗殺など、過去の事件をあげれば、きりがないほどの憎悪と陰謀の渦巻く場所でもある。


ケイティ側妃は無実を叫び、ケイティ側妃の母国も反論したが、用意されていたかのように明白な証拠が揃っていた。

それだけでなく、ジョセフィーヌ側妃もケイティ側妃に刺客を送って失敗した記録がみつかったことで、ケイティ側妃は処刑ではなく離縁となり、ケイティ側妃の祖国の修道院に幽閉されることになった。

だが、ケイティ側妃は送還される途中で、ジョセフィーヌ側妃の祖国と思われる一群の襲撃を受け、命を落とした。


国際社会では大きな醜聞となったが、ライリック王国も、二人の側妃の祖国も、沈黙を推し通した。

そして、ジルブライトは、後宮の解体を宣言したのだ。




「ほぅ、思ったより骨がある男だったらしい」

ライリック王国に潜ませている諜報から報告を受けたノーマン国王ヘンリクは、宰相のエイドリアンを横目で見たが、エイドリアンの表情は変わらない。


ジョセフ王太子とリリアーヌ・デーゲンハルトの婚約解消は、ノーマン王国でも大きな波紋を起こしたが、今はジョセフ王太子はアガーテ・デーゲンハルトとの婚約が調い、もう一方の当事者アザレア王女は、ディーデリアル・ヤスエデラ王子と結婚が近づいている。ディーデリアル王子は結婚と同時に立太子になる予定だ。


ヘンリクは政略の相手であるカデナと愛を(はぐく)み、エイドリアンは政略ではなく恋愛結婚をした。

だから、婚約解消したジルブライト・ライリックとリリアーヌ・デーゲンハルトに(いきどお)りながらも、共感できるものがあったのだ。



『早く会いたい』

ジルブライトからの短い文を受け取ったリリアーヌは、手紙を抱きしめて泣いていた。

私も会いたい。

この言葉に秘められた想い。

どれだけの罪を負ったの?

返事を書こうとしても、涙が止まらない。



半年後、喪が明けたとジルブライトから求婚書が届き、婚約式はライリック王国で行われることになった。


「貴女はどこに行っても、どんな時も私達の子供よ」

レイゼラは、婚約式の為に旅立つ娘を抱きしめていた。

エイドリアンが忙しく同行できないので、兄のユリウスがリリアーヌの保護者として同行することになった。

「悪いことも、いいことも、これからの貴女次第」


亡くなった側妃の国からも、新しい妃を打診されたはずだ。

リリアーヌは王女ではなく、政略としては弱い。

全てを排除してリリアーヌ一人を妃にしようとするジルブライトへの反意の多くは、リリアーヌに向かうだろう。

「ええ、お母様。私の罪も、甘さも分かってます。

ジョセフ様に恋してはいませんでしたが好きでした。アガーテを苦しめたことも、アザレア様の苦悩も、側妃様の哀しみも、私とジルブライト様が共に背負います。

何を失くしても、何を壊しても、側にいたいの。

出会ってしまったの」

リリアーヌはレイゼラの背に手を回し、頭を預けて甘える。


レイゼラは、エイドリアンの血を一番濃く継いだのはリリアーヌかもしれないと思う。

一途、と言えば聞こえはいいが・・・。


様子を見ていたユリウスとアガーテは目配せをして微笑んだ。

「そろそろ、ライリック王国に向かう時間だ。

母上、ご安心ください。無事に婚約式を終え、僕が必ず連れ帰ってきます。

結婚式まで1年あるのですから」

ユリウスはレイゼラを安心させるように声をかけると、リリアーヌに手を差し出した。

「僕は頼りになる兄だと思うぞ」

ユリウスの手に手を乗せると、リリアーヌは泣き笑いした。

「ええ、お兄様はいつも味方でした。これからも」


ユリウスとリリアーヌを乗せた馬車にはたくさんの護衛騎士がつき、ノーマン王国の威信をかけた

豪華な隊列でライリック王国に向かった。




ライリックの王宮ではジルブライトが出迎えに来ていた。

お互いを見つけると、長く離れていた恋人達はあふれんばかりの笑顔があふれる。


ジルブライトは、多くの騎士や貴族達を侍らせて立っていた。

ユリウスからジルブライトに、リリアーヌのエスコートが渡されると、周りの息を飲む音が聞こえる。

それは好意だけでなく、敵意と感じる視線も入り混じっている。リリアーヌも無条件に受け入れられるとは思っていない。側妃が亡くなった後に都合よく現れた寵妃。新たな側妃を狙っていた者もいるだろう、リリアーヌの失脚はジルブライトの失脚に繋がる。ジルブライトを守るために戦わねばならない。


リリアーヌは、深く息を吸い顔を上げた。

そして目に力を()め、ジルブライトの周りに視線をまわす。

微笑とともに。



最後までお読みくださり、ありがとうございました。

たくさんの感謝と愛をこめて。

violet

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ