其の蜂
さあ、こうなってしまえばハックの天下、遊びほうだいです。
でも、子どもはいつか大人になるもの……。
いつまでも そのままでは、お世話をなまけていたことが ばれてしまいます。
これがネコなど、他の生きものならごまかせたのですが、人間は神様が自分に にせて作ったほどですから、どうしても めだちます。
そこでハックは、エリオンに こう ささやきました。
「私は神様だ。お前は お手伝いも勉強もせずに遊んでばかりの悪い子だ。これからは、私の言うことを聞いて よい子になりなさい」
これを聞いたエリオンは、
『悲しいけど、やっぱりボクは悪い子だったんだナァ……。でも、神様がボクを見てくだすっている……』
と感動し、言われるがママ お手伝いや勉強を がんばるようになったのでした。(これまでは、しようとしてもジャマされて できなかったのです)
でも、悪い子が いきなり よい子になったらヘンですよね?
ハックは、乗っ取る回数をジョジョに減らしていくと、エリオンが だんだん いい子になったように見せかけました。
妖精たちが 生きものを悪い子に仕立てるとき、階段を一段 一段 のぼるように しつけますが、今回は その逆をやったのです。
(思いとどまるようなら背中を押しますが、かならず うまく いくとは限りません)
そうして、しばらく…。
ハックは、エリオンの善行が板についてきたのを たしかめると、自分の手柄を神様に報告しました。
「あんなに悪い子だったのが、私の おかげで、こんなにも よい子に なりました」
すべてを知っていそうで なぜか なにも知らない神様は、ハックをベタぼめです。
天使たちは、今度も なにも言いませんでした。
神様にほめられて得意顔のハックでしたが、そうは問屋がおろしません。
どうやら最近、エリオンが『のっとり』について気づき始めているようなのです。
あわてたハックは、いそいでお父さんやお母さんをあやつると、
『自分の やったことを、人のせいにするんじゃ ありません!』
『自分のココロが みにくいことを みとめなさい!』
とサンザンにしからせました。
そうしてエリオンに
「だれでも、悪いこころをもっている」
「それをみとめてこそ、リッパになれる」
と ささやくと、あらためてザンゲさせ、そこを日記につけたのでした。
エリオンは、ときおりシャクゼンとしないものの……
『ボクは、しょうね の いやしい 人間だ……』
と、内心ウツウツとすごしていました。
しかし、そんなある日、ふとしたはずみでホントウのことに気づくと、大声で泣きだしました。
だれも相手にしてくれないけれど神様だけは……と思っていたのが、やっぱりウソだったからです。
すると、どうでしょう。
その声が神様に届いたではありませんか!