其の肆
このごろ、お父さんとお母さんはエリオンの将来をとても心配していました。
なにしろ、はたから見れば、勉強もトモダチ作りもせず、おかしとオモチャに夢中な子ですからね。
そこで お父さんたちは、自分たちが むかし 夢中になっていたスポーツや音楽を習わせることにしました。
そうすることで、体を動かすこと、お歌を歌うことの楽しさを 知ってもらおうとしたのです。
さあ、タイヘンなことになりました。ハックにとっては一大事です。
ここだけの話、神様はスポーツや音楽の じょうずな子どもが大好き……。
そういった子がいる おうちに、おしのび で通っては いりびたっていたのです。
もし そうなったら、やりづらいったら ありません。
あせったハックは『悪い おまじない』で授業をジャマすることにしました。
エリオンは、おまじない の せいで、先生が なにか おっしゃっても頭に入らず、お話が終わって まわりの みんなが動きはじめてから ようやく慌てだす ありさまです。
(お空の高いところでは頭がニブくなると言いますが、あんなカンジでしょうか?()
先生は といえば……
『この子はボーっとしていて、のみこみが悪いなぁ……』
と、なぜかイライラ カッカさせられ、
『こんなことも、分からないのか!』
と しかりつけてしまうのでした。
いっしょに習っている子どもたちも、なぜか しつようにエリオンをイジメます。
たまらなくなったエリオンは、お父さんとお母さんに助けをもとめましたが、
『先生の おっしゃるとおりに、やりなさい!』
『自分で やりかえしなさい!』
と、つきはなされてばかり……。
ホントはみんな、ハックにあやつられていただけなのですが、みんなはみんなで、
『エリオンの悪いところをなおしてあげようと、』
『本人のためを思って、』
イジメているのだ、と思いこまされていました。
もしホントに ためを思ってだとしても、他にやりようが ありそうなものですが、あやつられている間は他のやりかたを思いつけないのです。
オマケに なぜか、それが一番 正しいように思えるのだから、不思議です。
たとえ、あとからヘンに思ったとしても、『愛情が足りないから、他の方法を思いつけなかったのだ…』と、まるで 誰かに さとされているような気分になるのでした。