さらば、ノーパン刑事! 1
ナレーター(以降、「>」と表す): さあ、ついに始まりました。『パンツイッチョマン 弐』最終章。あと二週で終わるってできるんでしょうか? いや、できるわけないですよね。あの最勝寺先生ですから。
>それについて問い合わせたところ、「大丈夫だ。問題ない。私には未だ『あれから色々あった』があるから」と言っていました。具体的には「『あれから色々あったねぇ』と、縁側で日に当たりながらお茶を飲んでいる老銀子先生の語りから始まる」って。――時間経ち過ぎでしょう!!
>戯言の中から少しでも情報を拾い上げようと「でも、それって銀子先生は最終的に生き残るってことですよね」と聞いたら、しばしの沈黙の後、「そんなのわかるわけないだろ!」とちょっとキレ返されました。
>あなたがわからなければ、いったい誰がわかるんですか! ということになりますが、ゴツゴウ・ユニバースはそういう先行きが見えない作品世界なんですね。ええ、もうみなさんご存知ですね。
>では、早速参りましょう。……ああ、はい。早速ではなかったですが、いつものペースに比べたら早いですよね!? だから……あ、もういいから先に進め、ですね。
>ここは薄暗い空間。……なんか、このところ薄暗い場所ばかりですよね。それも仕方ないのです。だって、ここは、以前訪れたことのある薄暗い場所だからです。
>薄闇に浮かぶのは、痩せこけた顔。そう、頭蓋骨博士です。それを照らしているのは、やっぱりいつものモニターの明かりです。でも、今日の頭蓋骨博士はいつもより目が血走っていて、迫力が増していますね。髪の毛もいつも以上にボサボサで……ん? 迫力があるというか、むしろ顔色も悪く、弱っているように見えます。
頭蓋骨博士(以下、「頭」と表す): 候補はおそらく、こことこことここだろう。こことここは、ここを突けばどちらにも行けるが……
>いや、すみません。本人はモニターを示しながら「ここ」と呟いているので混乱はないでしょうが、音声多重(略)活劇では、「ここ」だけ言われてもわけがわかりませんね。
頭: もう一カ所は、ここを突くのが一番だが……
>ああ、また出た! 「ここ」。お前はカレー屋かよっ! とツッコむと、某カレー屋さんに迷惑がかかるので、皆さんの心の中だけに留めておいてくださいね。
>「ここ」はもう置いておいて、頭蓋骨博士が眺めているモニターには、図面が表示されていました。建物の見取り図です。多くの商業用施設で目にする地図とは違い、電線や配管の情報まで書き込まれているプロ仕様の図面です。これだけでもその道のプロ以外の方が見ているのは珍しいのですが、問題はどこの施設の図面か、という事でして……えーと、ズバリ言ってしまいますと、枚鴨警察署の情報だったのです! だから、皆さんにはお見せすることはできません。
>悪用される可能性があるので、公開されている情報ではありません。それをどうやって手に入れたのかは大いに気になるところですが、視聴者の皆様を信用していないわけではありませんが、その先で悪用されるかもしれないのでお伝えすることはできません。……え? いいの? ……いや、実はその手段あるいは経路をこちらも知りません。「これは掘ったらヤバいやつだよねぇ」とスタッフ会議でスルーと決まった対象だったのですが、こちらではなくディレクターの方に最勝寺先生のメモが届いたようでして、それをいわゆるカンペで伝えてもらいますが……「コネ」? ……まあ、そりゃあそうでしょうね。自分で忍び込んで盗ってくるか、ハッキングして情報を抜き取って来る以外は、誰かを経由して知るしかありませんから。だから、普通、そこは「どういうコネで伝わったの?」という興味が前提になるんですけれど……はぁ。最勝寺先生に常識的な話をしても理解されないでしょうから、もう流しましょう。
>そう、頭蓋骨博士が図面を見て計画しているのは、明らかに脱獄! 厳密には理香珈さんは投獄されたわけではないので脱獄とは言いませんね。 では、「理香珈さん救出計画」としましょう。それを画策しているわけですね。しかし、手に入れた図面は、あくまで間取りしかわからず、どういう利用をされているのかは記載されていなかったようです。だから、候補を絞って突入救出作戦を展開しようとしているようですが……無謀ですよね! ですが、候補が絞り切れていないおかげで、実行には至っていないようです。
>こういう時、独りだけというのは厳しいですよね。手が足りない、という問題だけではなく、視野が狭くなりやすいのです。「いや、お爺さん一人が突っ走っても無駄だよ」と声を掛けられる人が周りにいないから、止まらないんですね。実際、研究所ではなく、あの多目的コンテナの中の移動研究室からの放送となっております。
男の声: ふむ。警察署の設計図か。なかなか興味深いものを持っているな。
頭: うむ。かなり大枚をはたく結果になったが、リカの為なら仕方が……
>何気なく答えてから、頭蓋骨博士は驚いて振り返る。「遅っ!」と思う方もおられるでしょうが、もう根を詰め過ぎて消耗しているせいで、かなり独語が多い状態になっていました。自分の考えも他人からの意見のように受け止めて話す、という精神状態ですね。だから、突然、他人の声が入ってもすぐに「おかしい!」と思わなかったようです。
頭: ――お、お前は! ぱ、ぱ、パンツイッチョマン!!
>おっと! いきなりの登場だ! やはり、バッチリ決めているフロントラットスプレッド風の構え。ここでパンツイッチョマンが登場するとは、最勝寺先生も本気で早く終わらせようとしているようですね。パンツイッチョマンが登場すると、その回かその次あたりで話が閉じられるのが通常です。……ですが、忝い侍が登場した時は、冒頭から登場したのにもかかわらず、なかなか話が進まなかったですから、例外もあります。
>保紫先生からは「これって、初回は水を飲んだだけ。二回目はご飯を食べただけだよね」と批評され、最勝寺先生は「えへへ」と笑ってごまかしたそうですが、以後愛想をつかされたのか保紫先生の足はぱったり途絶えたようです。ある意味、目が覚めてしまったのでしょうか。……今の今まで付いて来られた視聴者の皆様はここで離脱してしまうともったいないですから、最後までお付き合いをお願いします。……と頭を下げてみましたが、私もこの後の展開は知らないので、むしろ「あそこで離脱しておくべきだった」となるかどうかはわかりません。ただ、きっとこの作品を乗り越えた方は、心が広くなっている可能性は高いでしょう。いや、元々心が広い方だったのが証明される、という方が正しいかもしれませんね。読みながら自然と心が鍛えられる、むちゃくちゃな作品ですから。
>しかし、パンツイッチョマン、頭蓋骨博士に先に名前を言われてしまいました。最終回だというのに、まさかのイッチョマン・コールはお預けになるのでしょうか!?
パンツイッチョマン(以降、「P1」と表す): いかにも。私は、文明の潜入者パァーーーーンツゥ――
>おお、いつもの空気を読めない性質がうまく転がりました。自分勝手にいつものペースに持っていきます。さあ、ちびっ子たちも一緒にポーズを取ろう! パンツイッチョマンは、右手の人差し指を高く上げて――
P1: イッチョマン!
>右手が左右へと振られながら下がり、腰の横で払われる。同時に左手は前に突き出され、その人差し指だけが立てられている。
♯ バン、バン、ババン!!
>そして、左、右、正面からの三段ズームイン。もちろん、この後は――
♪ チャラッチャラッチャラッチャチャッチャラー、デケデケドンデケデケドン……
(中略)
♪ パァアンツゥーーー、チャッチャッー、イッチョマ~~ン!
頭: な、なぜ、お前がここに?
>おお、さすがは理論的な科学者、まず皆さんが疑問に思っている事を聞いてくれます。
P1: 扉に鍵が掛かっていなかったからな。
>って、質問の意図がちょっとずれて受け止めていますね。扉の鍵が掛かっていたかどうかの前の部分から、こちらはわかっていないんですってば。
頭: そ、そうか。考え事をしていたから、入った時にきちんと施錠をするのを失念していたのか。で、この場所はどうやって突き止めた。
>おお。パンツイッチョマンの答えを受けてからの見事な追加質問。研究者だから質疑応答慣れしているんですかね。
P1: それは、歩いていたら見つけただけだ。
>う、う~ん。広がらない解答。そりゃあ、行き当たりばったりなのは作品そのものがそうだから仕方ないのですが、「偶然見つけた」って普通はNG解答ですよ。そんな展開を推理小説でやってごらんなさい。「犯人が凶器となるチェーンソーを購入しているのを、私はたまたま見かけていた」ってダメでしょ? ……え? そもそもチェーンソーを使っての殺人事件は起きませんか? それはホラーアクションで、推理小説はもっと奥ゆかしい凶器になるんですね。すみません。普段からあまり小説は読まなくて、映画鑑賞が趣味なもので。
P1: 扉にヤシの実の描かれたトラックは他にはなかなか見ないからな。
>おお、それそれ! そういう答えが欲しかったのですよ。でも、言われてみれば、あの塗装を落としていなかったらそりゃあバレますよね。
頭: む。そうであったか……だが、ここで会ったが百年目。儂が直接引導を渡してくれるわ!
>頭蓋骨博士は椅子から立ち上がるとパンツイッチョマンへ向き直り……キョロキョロと辺りを見回します。明らかに何かを探していますね。いつも先制攻撃が印象的なパンツイッチョマンですが、こういう場合は待ってくれるようです。しばらくして、ようやく背後の足元に転がっていた棒を見つけた頭蓋骨博士はそれを取り上げて、再びパンツイッチョマンへ向き直る。
頭: ふふふ。こんなこともあろうかと準備しておいた――
>いや、間に合っていなかったんですけれどね。厳密には。
頭: ――強力電磁ロッド! この高電圧に接すれば、いかにパンツイッチョマンであろうと、筋肉が勝手に収縮し、それに反発しようと脳から送られた信号も電磁ロッドの影響で阻まれる。わかるか? こう誘発される電位変化がだな――
>頭蓋骨博士は部屋の奥に進むと、理香珈さん救出計画について色々書き込んであったホワイトボードを裏返し、何かを描きこもうとして、ペンの代わりに電磁ロッドを持っているのに気付くと、動きを止めた。
頭: まあ、理屈は今はいいとして、とにかく触れるだけでお前の負けというすごい武器だ。
>そういって、頭蓋骨博士は棒の底にあるスイッチを押すが、そこでまた動きが止まった。
頭: あ、しまった。まさか今ここに現れると思っていなかったから、充電をしていなかったな。……仕方がないから、これがそういう武器だという体でやるしかないか。いいか? 当たったらお前の負けだぞ!
>いや、体って、そんなの通用するわけないですよ。
P1: うむ。それならそれでいいが、しかし、その棒切れを持ったところで、貴様とは大きくスピード差があると思うぞ。
頭: 確かに、儂が普通の科学者であれば、だが。あいにく、儂は普通の科学者ではない。その非凡な才能が生みだした、超人化薬『カヤックⅡ』の力があれば、反応速度も……いや、お前が今ここで現れるとは思っていなかったから、カヤックⅡも打っておらんぞ。あれは、効果が切れた後、やる気が減退してしまう。リカを救おうというこの時に、使っている場合ではなかったからな。……うん、仕方がない。これも儂がカヤックⅡを使っているという体で……。
>もうグダグダですね。棒に当たったらダメというのはまだわかるとして、動きが俊敏になっているということで、ってどう対応すればいいんでしょうかね?
P1: いや、おそらく、それでも貴様は私に敵わないだろう。
頭: ほほう。言いよるわ。して、その根拠は?
P1: 経験の差だ。
頭: 経験。……年齢はこちらの方が上だから、人生経験というわけではなさそうだな。
P1: ああ。戦闘経験の差だ。例えば、ここで私がイッチョマン・スラップを見舞うとする。それは貴様の棒より早く届く。どうする?
頭: 早いかどうかはやってみないとわからんが、まあ、ここは思考実験をするという決まりだから、その条件を飲もう。で、あるなら、攻撃を避けるために下がる。
P1: うむ。この場所であれば、下がる余地はあまりないが、まあ、一発目ならそれも可能だろう。では、次はイッチョマン・パンチが来れば、どうだ?
頭: いや、待て。そちらの攻め手が終わったら、こちらの順番であろう。将棋でもチェスでも交互が基本だ。
>いや、肉体の戦闘じゃ、そんなルールがあるわけじゃないのですけれどね。もうこの時点でパンツイッチョマンがいう「戦闘経験の差」が如実に出ていますね。
P1: では、どう攻撃を仕掛ける。
頭: では、この電磁ロッドで攻撃を仕掛ける。
P1: 具体的にはどうする? 本気で打ちかかって来てみなさい。
頭: いいのか? では遠慮なく行くぞ。でやっ!
>へっぴり腰の振り下ろし攻撃が繰り出される最中に、パンツイッチョマンが疾風のように踏み込んだ。
♯ ぺち。
>パンツイッチョマンの左手が頭蓋骨博士の右頬に当たる。全くダメージがないように止めているようだ。その後で、頭蓋骨博士の棒がパンツイッチョマンの体の横を通る。パンツイッチョマンは踏み込みつつ、頭蓋骨博士の攻撃の軌跡を読んでいたようだ。技術に秀でた者なら、接近してくる敵に合わせて振り下ろしを当てるように調整できるのだが、頭蓋骨博士にはそうする力量はなかった。
頭: いや、待て! 先に言ったとおり、こちらの反応速度も上がっておるから、お前の攻撃はまた躱せるぞ。
P1: そうとは思えないが。では、こちらも先に言ったとおり、今の一撃がイッチョマン・パンチだとした場合、貴様はどう躱す。
頭: どう、と言われてもなあ。……では、下がる!
P1: ふむ。それは悪手だな。既に言ったとおり、一度下がった後では、もう背後の余地はほとんどない。ホワイトボードに当たるぞ。
頭: む。
>頭蓋骨博士は渋い顔をして後ろを振り向いた。確かに、ホワイトボードまでの距離はあまりなかった。
P1: それに、ストレートパンチは下がって避けづらい。最初から届かない間合いを確保できているなら別だが、踏み込んで打ち込まれた上に、さらに前傾になって体重を乗せてこられれば、攻撃範囲はより深く伸びる。
頭: ほほう。なるほど。
>パンツイッチョマンが体を動かしながら説明するのを受けて、頭蓋骨博士は素直に納得する。
P1: ナイフの攻撃も似ている。特別に鍛錬していない暴漢がナイフを持って暴れた場合、多くは突いてくる。
頭: そういうものか?
P1: ああ。私も格闘術に秀でているわけではないが、護身術の基本だ。
> へぇ、そうだったんですね。これは皆さんもいざという時の為に覚えておいた方が良い知識じゃないですかね。……あ、でもゴツゴウ・ユニバースの説だから話半分の方がいいかもしれませんね。
頭: ……そうか。科学で言えば、知識はあっても全く実験経験および技術のない存在が儂ということか。
♯ カランカラン。
>抵抗が無駄だと納得したのか、頭蓋骨博士が電磁ロッドを手放した。
頭: さあ、どうする。警察に連行するか? まあ、それもいいかもしれん。リカだけに悪い思いをさせるわけにはいかんからな。
>パンツイッチョマンは、左手を前に出すと、人差し指を立てる。あ、名乗りのポーズからフロントラットスプレッド風の姿勢に戻ったという説明をしていなかったから、視聴者の方の中にはずっと決めポーズを取っていたパンツイッチョマンも存在したのかもしれません。……あ、仮の組み手をしていたから、大丈夫ですかね。まあ、その間もずっと決めポーズを取らしていても構わないですね。元々パンツイッチョマンは変な男ですから。
P1: その前に片付けておかなくてはいけない問題がある。
>言い終えるとパンツイッチョマンは立てていた人差し指を頭蓋骨博士へと向けた。キレのある指差しに頭蓋骨博士が若干たじろぐ。
>もしかすると、改めてイッチョマン・スラップが炸裂していまうのか? 「だったら、さっき、やっておけば良かったじゃん」という理屈が通じない相手だともう皆さんご存じですよね。
P1: まず、裸族には二種類存在する。マスコミの取材や観光客用に裸になる、いわば職業裸族!
>ん? 突然何を言いだしたのでしょうか? もしかして、いつの間にか「あれから色々あった」が発動していました? だって会話が繋がらないですもんね。
P1: 職業裸族は、普段は黒パンツ文明の一般人と同じ格好をしている。ゆえに、未開の存在と見下げている対象には該当しない。
>ん? これはもしかして……。あ、そうですよね? 今、スタッフ間で確認しましたが、以前パンツイッチョマンと頭蓋骨博士の間で繰り広げられた「パンツ文明談義」の続きのようです。そういえば、あの時パンツイッチョマンは「回答の持ち帰り」を選択していました。
>今になって返答ですか! ……まあ、番組としてはシーズン跨ぎにならなくてスッキリしますね。シーズンドラマのテクニックとしては、敢えて全ての回収をせずに残すことで、次の視聴数を稼ぐ方法もあるんですが、当番組はそのような小細工なしです。というか、小細工できる人じゃないでしょう、あれは。
頭: ほうほう。そういえば、そのような話をしていたな。確か、パンツを穿かない者は未開人だ、とかいう話だった気がするが。
P1: うむ。未開かどうかより、差別的か、いや文明人が裸族を見下げていないかどうか、という点に対する回答だ。
頭: なるほど。で、そもそも未開人ではない者が含まれていた、という指摘か。重大な問題だな。分離されていない調査対象集団に対しては、解析を掛けても意味がないからな。
P1: そして、職業裸族を認識すると、そもそも真正裸族は存在するのか、という疑問が湧いてくる。そのあたり、学術的にはどうなのだ?
頭: それは、わからんのう。いや、学者と一括りにされがちだが、分野が全然違うと全くわからんぞ。文化人類学者でも、裸族に特化した者でなければ、そのあたりの知識はないかもしれぬ。
P1: ならば、仮定を含めて議論していこう。まず、真正裸族などもはや地球上に存在しないなら、黒パンツ文明による世界統一が果たされていた、というだけで終わる。差別は変わらず有り続けるが、未開人かどうかで上や下だと見る意味はない。皆、平等なのだからな。
頭: ふむ。して、真正裸族とやらが存在した場合は?
P1: その場合、さらに二つに分けられる。黒パンツ文明が接触していない集団と、黒パンツ文明に接触してなお裸族という文化を守り通している集団だ。
頭: なるほど。前者の方こそ、もはや地球上に存在しないかもしれぬな。人工衛星からの撮影で、未発見の集落などないじゃろうからな。
P1: 大いなる黒パンツ文明に接触したうえで、それに呑み込まれることなく、独自の文化を貫き通すのは生半可な事ではない。
>会話をしているようですが、イマイチ繋がっていませんね。それぞれ自分の言いたいことを語っているようです。普段からあまり相手の意見を聞いていないのかもしれません。
P1: 文明に比肩しうる文化。それは当然尊敬に値する。ゆえに、私は見下げたりはしない!
>ビシッと頭蓋骨博士を指差すパンツイッチョマン。あ、今度は完全に、指差し状態からフロントラットスプレッド風の姿勢に戻っていたと伝え忘れでした。私の責任です。
頭: なるほど。では、最後の非接触型裸族はどうなる?
P1: それについては考える必要はなかろう。遭遇していないのだからな。
頭: 遭遇していなくとも存在はしているぞ。
P1: はっはっは。その問題は、「誰も居ない所で木が倒れた時、音がするかどうか」と同じ問題だな。
頭: ……何を言っておる。人が居ようが居まいが、倒木の音は鳴るに決まっておろう。
P1: しかし、誰も居なければその音を誰が聞くというのだ。存在しないも同然だ。
頭: そんなわけがなかろう! ビッグバンは人類が発生する以前に起きた。人が認識するかどうかは、事象の有無に関係ない!
>また議論が平行線を辿り始めました。これはどちらが正しいという話より、科学的か哲学的かという差異による不一致というべきでしょう。
P1: しかし、人類がビッグバンを認識できて始めて、その存在を察知する事ができた。
頭: ん? 今のは順番が入れ替わっていなかったか?
P1: ……ともかく!
>また、フロントラットスプレッド風スタイルに戻るパンツイッチョマン。少し声が大きくなったのは、分が悪いと感じたのかもしれない。少なくとも論理的ではなかったですね。
P1: 私は宿題を果たした。だから、貴様も、もう危険な薬をばら撒く事を止めたまえ。
頭: ……止めるか。どの道、供給源を断たれてしまったからな。……いや、だからこそ、残っている分だけでも、できる限りやり通すべきか。
>頭蓋骨博士はほとんど自分に語りかけているような物言いです。
P1: 依頼人への義理立てか? 向こうは貴様を単なる駒としか思っていないかもしれないぞ。
>頭蓋骨博士が視線を落としたまま、フフフと笑った。追い詰められてはおかしくなったわけではなさそうだ。見上げた顔には妙な落ち着きがあった。
頭: 須く人は滅びる。儂には子は居らぬ。故に、残すものもない。ならば、死ぬ直前に、「友のために尽くした」という誇りを持っているのも良かろうて。これは言うまでもなく自己満足。向こうがこちらをどう思っていようとも関係ない。
P1: 遺伝子でなくとも、情報子は残せるぞ。
頭: ほほう。半裸の割には物知りじゃの。確かに、子はなくとも情報子は残せる。私は科学者。既に人に役立つ知識の幾らかは論文として残しておる。
>頭蓋骨博士は、まるで体が軋むようゆっくりと席に腰掛ける。
頭: しかし、適者生存し増殖する性質こそ遺伝子と似ているが、欲求は遺伝子とは違う。中には、自己顕示欲の強い者もおるが、儂はそれも薄い。
>頭蓋骨博士がフフフと自虐的な声を漏らす。
頭: だから、説得は無用。警察に連れて行くなら連れて行け。
P1: 子はおらず、名を残す事に興味はなくとも、次代に伝えるべきものはあるのではないか? あるいは、守るべきものか。
>パンツイッチョマンの呼びかけに、頭蓋骨博士はパンツイッチョマンを見上げると、その後向きを変えてモニターの図面を見つめる。そのまま、視線を変えずにパンツイッチョマンへ語り掛け始めた。
頭: 儂はどうなってもいいが、代わりに一つ頼まれてくれないか、パンツイッチョマン。
P1: なんだ? 聞くだけは聞こう。
頭: 儂の親戚の娘がこの建物の中に捕らえられておる。
>いや、そういうとまるで悪い奴に捕まったみたいな感じですね。……頭蓋骨博士の中ではそういう認識なんでしょうね。ご覧のお子様方は、こういう大人にはならないようにしましょうね。
P1: しかし、それはしかるべき行為に及んだ結果なのではないのか?
頭: 確かにそうだが、リカは儂のための行動であった。その責は儂にある。
P1: ならば、その旨、申し出てみればよかろう。
>ぐぐっ。正論ですね。非常識な格好をしているくせに、いう事は一丁前です。さすが、イッチョマン!
頭: そんな事をしても、儂が捕まるだけでリカは解放されんじゃろう。
P1: すぐには無理だろうが、説が正しいと理解してもらえれば、解放されるはずだ。
頭: ……やはり、そうだな。それしかないか。
>がっくりと頭を垂れる頭蓋骨博士。いや、悪いことをしたならすぐに謝らないといけないんですよ。だから、重ね重ね言いますが、こういう大人には――
P1: ――しかし、留め置かれて、色々と訊かれるのは面倒だという気持ちはわかる。
>あ、そうですよね。むしろ、パンツイッチョマンはそっち側の人でしたね。
P1: それに、私は警察とは反りが合わなくてな。元より、貴様を突き出すつもりはない。
頭: で、では、協力してくれるのか? 助け出すのは無理だとしても、どの部屋に閉じ込められているかが分かれば、壁を突き破って――
♯ ピーーー!
>なんか、物騒な事を言い出したので、ちょっと検閲に入ります。
P1: うむ。考えてみよう。代わりに、貴様が今後、黒パンツ文明の発展を阻害しないと約束するのなら。
頭: 致し方ない。わかった。この件から、私は手を引こう。
>おっと、なんだかんだで契約が成立してしまったようだぞ。確かに、パンツイッチョマンはぬるっと警察署内に侵入できる実績がありますが、悪の手先に……やっぱり、これって悪の手先になっていますよね? なんか微妙な協力なので、断言しにくいです。そもそも「考えておこう」って、「やりません」の暗喩という場合がありますからね。
頭: ありがとう。
>頭蓋骨博士がしっかりと頭を下げてお礼を言った。その後、目元を拭うと――年を取ると涙腺が緩くなるんですね。泣いていたようです。――モニターに向き直る。
頭: 候補は三カ所まで絞れておる。こことここ、そしてここじゃ。
>ああ、また出ちゃった「ここ」説明。お前はカレー――
♯ ピーーー!!
>ありゃりゃ、スタッフの方から検閲されちゃいましたね。一応、「被せ」と言われるお笑いの型の一つなんですが、まあ、元々それほど強いネタではなかったので、明言しなくて正解かもしれません。
頭: 狙い目はやはり夜。特に深夜になると。警備体制が――
>おいおい、頭蓋骨博士。いったいどこまで調べているのですか! これってもう警察に対するテロ計画ですよ。今まで、「実行せず考えるだけなら罪になりませんよ」と言ってきましたが、ここまで計画を押し進めていると、もう犯罪の域に入っていると思います。もちろん、検閲対象です。ですから、今回も、映画の調べで優雅な時間を過ごしましょうか?
※注釈: 「映画の調べ」とやらも検閲対象です。
頭: ――わかったか?
>一通り説明を終えた頭蓋骨博士が振り返ると、もうそこにはパンツイッチョマンの姿はなかった。
>はい、私はもちろん見ていたから気付いていましたよ。でも、音楽の途中でしたので、後で報告するつもりで流しました。
頭: もう出発したのか、気が早い奴だ。
>呆れたような、心配したようなため息を吐くと、頭蓋骨博士はパンツイッチョマンが立っていた場所に置き土産があるのに気付いた。それは長靴だった。そう、冷凍コンテナ内での死闘の際に頭蓋骨博士が貸していたあの長靴だ。借りたまま盗んだのかと思っていたのですが、返却してきたのですね。驚きです。
頭: ほう。返しに来たか。意外に律儀な奴だ。これなら、リカの方も任せられるのかもしれないな。
>ホッとしたように肩から力を抜くと、頭蓋骨博士は深く息を吐きながら目を閉じた。
>安心したら疲れがどっと出たのでしょう。もうとても若いとは言えない年齢ですからね。
>そして、理香珈さんの方はどうなるのかというと……お時間です。また来週~~。
>なんですが、そんなシーン挟んで大丈夫なんですかね? 今回のエピソードは『さらばノーパン刑事』でしたよね。よもや、時間のシワ寄せによるナレ死で終わったりしないでしょうね。うーー、来週も目が離せませんね。では、さようなら~~。




