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白雪舞う聖夜の決闘 4

ナレーター(以降、「>」と表す): 添谷(そえたに)さんファンの間で、出演するのかしないのか、とドキドキハラハラの一週間でした……という声は特に届かず。該当シーンもヌルッとカットされました。

>最勝寺先生からのメモでは「今日はパンツイッチョマンが出るから巻きで」とあったからのカットでしたが、パンツイッチョマンが出るから今回のエピソードは今週で終わるってことなのでしょうか? 確かに「パンツイッチョマンが出れば、終わる」という流れはありますが、何も作者からそれに追われることはないと思うんですけどねえ。まるで、パンツイッチョマンが時間単価の高い俳優のようです。

>通常、俳優のお仕事は、仕事に対しての固定報酬、となっています。良い演技をしたから増額! という事は基本的にありません。だって、良い演技の数値化は難しいですからね。売り上げに対しての割合という契約も映画なんかではあるにはあって、これは一応、演技が良かったから売り上げが上がってそれが反映される、と見なされることがありますが、そういう契約をした俳優の演技力以外の部分が良かったかどうかの切り分けはできません。そして、また別の契約として、出演した時間に応じて報酬が増額される、という形もありえます。この場合、製作側はなるべく出演時間を抑えようとしがちなので、果たして当人にとってお得なのか、役者として知名度を高められているのか、という問題が生じます。

>というわけで、俳優業をしたいという夢を持っている子供たちは、演技だけでなく契約についても考えて――あ、今はそんな話、どうでも良かったですね。はい、巻き(・・)でした。


>唐突ですが、ゴツゴウ・ユニバースではもうクリスマス真っ盛りです。


(まさかり)草夫: クリスマス、真っ盛り!!


>えー、(まさかり)さん、ありがとうございます。でも、必要でもないのに現れると、本当に怒られますからもう止めてください。

>そういえば、最勝寺先生はお子さんに「クリスマスプレゼント、何がいい?」と聞いて、「えー、まだハロウィーンだよ」と返されたようです。実際、連載されていたのはハロウィーンあたりだったんです。ですが、なんとなくお祭りだという雰囲気が街中でも漂っているのでつい間違ってしまったようですね。それだけ、ゴツゴウ・ユニバースと現実の区別がつかないのは困りものです。……まるで、日頃から創作に打ち込んでいるようなエピソードですが、今回の収録は放送日の朝から、という今まででもかなりギリギリに追い込まれたプランです。果たして、これからどうなるのか? というよりか、どうなることやら、トホホ……ですね。 あ、あと、どうでもいいですが、先のような会話をしていたということから、最勝寺先生のお宅では「サンタさんにお願いしよう!」というサンタ信仰はやっていないようですね。……はい、どうでも良かったですね。


>日本では、なぜだかクリスマス当日より前夜のクリスマスイブが盛り上がります。……「そもそもクリスマスイブとは、クリスマスの前夜だけを指すのではない」という豆知識が最勝寺メモとして届けられましたが、……じゃあ、どういうクリスマスイブの正しい解釈については書かれていませんね。そのあたりはやはり「気になる方は、『Webで検索!』」なのでしょう。

>対して、アメリカの、特に子供たちにとって、一番盛り上がるのは、クリスマス当日の朝です。家で飾られているクリスマスツリーの根元に置かれているプレゼント箱を開封して良いのが、その時間なのです。クリスマス前夜に子供が寝静まってからプレゼントをツリーに置く、という手順を取られている家庭もありますが、多くはその前から置いていて、「時間が来るまで開けたらダメだよ」と止められているパターンではないでしょうか? 子供たちにとっては、餌を前にして「待て」をされている犬のように、欲望と命令との葛藤(かっとう)に悩み、精神的に鍛えられる期間でもあるわけです。我慢しきれずに、逆に親が寝た後に起きてきてプレゼントを開封する例もちらほら見られるようですね。これはこれで、自分なりの解決法を見つけ出したという事で、成長と見なせるかもしれません。

>……え? 枕元に吊り下げておいた靴下にプレゼントが入っているという説はどうなった、ですか? ……確かに、そういう説もありますね。というか、むしろ日本ではそちらの例の方が有名かもしれません。住居空間に乏しい日本では全ての過程でクリスマスツリーが飾り付けられるわけでもありません。……とは言っても、逆に、枕元に靴下をぶら下げて寝た、という子供の声も聞いたことはありませんが……。

>靴下の場合、「普段使いの靴下だと、詰められる物が限られている」という、子供にとって大問題があります。大人にとっては、出費が抑えられるからいいんですけれど、子供同士のクリスマスプレゼント自慢で「うちは鉛筆1ダースだった」というのはかわいそうですからね。やはり、出費より我が子可愛さの方が勝つので、靴下説は実践しづらいです。

>それならクリスマスプレゼント用の大きな靴下を買えばいい! という意見があります。「なんだよ、チョコ業界だけバレンタインデーに上手く乗っかりやがって、俺たちも特需シーズン作らせてくれよ」という靴下メーカーさんからの声がなくはなかったでしょう。しかし、クリスマスプレゼント用の靴下は、靴下とはいっていますが、もはや規模が大きすぎて靴下の範疇(はんちゅう)に収まっていません。言い換えると、靴下メーカーもいきなりクリスマスプレゼント用の靴下を大量生産できる環境は持っていないのです。ゆえに、バレンタインチョコのようなシーズン特需は靴下業界では夢のまま終わったのでした。

>ゴツゴウ・ユニバースには世界規模のアパレルメーカー「オルヒト」が存在するので、クリスマスプレゼント用の靴下を一手に引き受けてもいいかもしれませんが、……あ、やっぱり「それは、ないな」という最勝寺メモが来ましたので、ないようです。ゴツゴウとは名ばかりの世界(ユニバース)なのですね。


>……「それがどうした! 脱線話は止めて、とっととパンツを出せ!」という声が聞こえてきました。ところが、あながちこれがさほど脱線していないのですよ!

>その説明の前に、さっきのセリフ、特に「とっととパンツを出せ!」の部分はこの作品だから普通に受け止められていますが、他の場所で言えば確実に変態扱いされる内容なので注意してくださいね。


>さて、ゴツゴウ・ユニバースの中心的空間と言えなくもない枚鴨(まいがも)市では、他にあまり例のないクリスマスイベントが開催されていました。それが、前述しました「クリスマスツリーの下でプレゼントをもらおう!」のイベントです。市役所近くのあの城跡公園にて巨大クリスマスツリーの飾り付けが行われるのですが、クリスマス当日はそこに雇われサンタが……え? サンタさんを信じているお子様もいらっしゃる? でしたら……世界中に散らばって活動をしているサンタの一人が鎮座(ちんざ)して、プレゼントをくれるというイベントをやってくれるのです! すごいですね、夢がありますね!

>えーと、是非我が自治体でも同様のイベントをしたいという方の為に、ざっとシステムについてお話しておきます。開催時間は午前九時から午後五時までの八時間。一時間十五組の抽選(ちゅうせん)制です。プレゼントはそれぞれの保護者が用意し、それを一時間枠毎に入れ替えています。サンタさんとの撮影もありで、これは三分枠で決められています。残った十五分がプレゼントや抽選(ちゅうせん)当選者の入れ替え作業にあてられているのですが、たいてい押しているので常にギリギリです。サンタやプレゼント管理の市役所職員は交代で任に就いています。

>と、運営する上ではかなりの負担があるイベントなので、導入には注意してください。特に、悪天候には極めて弱く、その際、サンタやプレゼントは別の市民小ホールに移されて開催されます。クリスマスツリーは小ぶりのものが用意されて、スケールも小さくなっちゃうんですが。子供たちはあまり気にせず、キャッキャと楽しんでくれるようです。

>ちなみに、この「クリスマスツリー前でのサンタさんからのプレゼント!」イベントは、現在の大棚(おおだな)市長が始めた歴史の浅いイベントです。そもそもは一職員が温めていたアイデアだったのですが、前市長の際には「お金がかかる割に、一部の市民にしか恩恵がいかない」という理由から却下されていました。計算の得意な視聴者の方ならもうわかっていると思いますが、十五×八の百二十組しか参加できないイベントですからね。()となっているのは、兄弟姉妹がいればまとめて一枠とできるからで、一人っ子が多いため、実際の総数は二百人にいかない程度になります。このイベントを大棚(おおだな)市長が「人気取りに使える」と採用したところ、大きなクリスマスツリーを立てたことで人が集まり、プレゼントイベントに参加できなくても観衆も増え、意外にも「費用対効果ねえだろう!」という声はさほどあがりませんでした。

>そして、この「クリスマスツリー前でのサンタさんからのプレゼント!」イベントこそが、パンツイッチョマンを釣り上げる(えさ)として利用されたのでした! ふう、前段階の説明が長かったですね。もう放送時間の三分の一を使い果たしちゃいましたよ。これは確かに添谷(そえたに)さんもカットされちゃいますよ。



枚鴨(まいがも)市のあるホームセンターの駐車場に、怪しいコンテナ車が停まっていた。以前、(きしの)九浪(くなみ)が暴れた時に、離れていた場所から頭蓋骨(とうがいこつ)博士と添谷(そえたに)さんが現場の状況を監視していた際にも使われていた車だ。頭蓋骨(とうがいこつ)博士は移動実験室と呼んでいたのだが、今回はその中身をガラッと変えての登場らしい。最勝寺先生としては、「移動実験室とは別の車両にしたかったなあ」と言っていましたが、先週魚図(うおず)未来科学研究所のガレージを映した際に、コンテナ車は一台しか映していなかったので、「今更もう一台増やすのは、ズルいよね」ということらしい。「いや、こちらとしては(次回登場させるとは知らなかったので)正確に台数は伝えていなかったし、なんなら過去の情報を書き換えたらいいのじゃないでしょうか?」と提案したら、少し考えてから「いやー、魚図研究所の予算として二台持っているのはおかしい」と結論を出していました。……そんな細かいところ誰も気にしないのにね。実際、アメリカのヒーローなんか、いかにお金持ちの設定だとはいえ、バンバン未来的なガジェットを使用しているキャラがたくさんいるじゃありませんか。

>……なんか、指摘した後で、番組の予算の差かな、という日米の動画の品質差あるあるを直視させられた気になったので、もう止めましょう。でも、業界の一員として言っておきますが、ハリウッド映画なんかと比べて「ショボい」と言われますけれど、日本だって予算があったら同じくらいのものは……え? ノウハウが蓄積(ちくせき)されていないから、お金があったところですぐには同レベルに追い着けない? ……えーと、何でもないです。


>ところで、その怪しいコンテナ車がどう怪しいかと言いますと、基本的に無地の白というかクリーム色と灰色というかそのあたりの色合いのコンテナなんですが、開閉扉のある背面だけ「常夏のハワイ」という字と共にヤシの実の生えている島の絵が描かれているのです。仮に、ハワイの宣伝であれば、面積の広い横面にもいろいろ描けるはずなのですが、既にお伝えしたとおり、そういうわけでもない。最勝寺先生によると、「そこまで予算も時間もない」との事ですが、えーと他メディア化の際はもう全面偽装で良いと思います。

>そして、怪しいコンテナ車に勝るとも劣らない怪しい影一つ。真冬の昼間だというのに、黒パンツ一枚で偉そうなポーズで立っている男がいます。……ええ、あの人ですね。なお、言い方で勘違いして欲しくないのではっきり言っておきますが、「真冬」だから怪しいわけでも、「昼間」だから怪しいわけでもありません。「真夏の夜」であろうと、こんな格好でうろついていたら変質者です。良い子はマネしないようにしましょう。……だったら、そんな男にどうして毎回スポットライトを当てるのだ、という疑問には……えーと、先に進みましょう。


黒パンツの男: クライシス・ピットは、ここか。


(なぞ)の単語を呟きましたが、クライシスは「危機」という事ですね。ピットは……くぼみ、穴、落とし穴、とかいう意味のようですね。ありがとうございます。あ、今のお礼はざっと調べてくれたスタッフに対してです。


黒パンツの男: だが、ハワイというからには、きっと暖かいのであろう。


>いや、そんな事、ないと思いますよ。というか、我々は「寒さを突く」という敵方の戦術を知っていますから、逆に寒くなるんじゃないでしょうか? フリーザーコンテナなんでしょうね。しかし、黒パンツの男はみすみす敵の術中に(はま)るようだ。このあたりは、見かけどおりの考えなしの人のようです。

>コンテナの後部は既に皆さんがイメージされているとおり、その面全体が二つに割れた扉と化しています。しかし、この扉は(じょう)が掛かっており開きません。代わりに、いわゆる一般のサイズの扉が、向かって左の扉板の中央あたりに付いており、その扉へ向けてなんと上り階段まで付いています。あからさまに「こちらからお入りください」という指示であり、すごく罠臭いですね。

>なお、その扉は、あのタヌキ型ロボットが出す扉状未来道具のように、島にポツンと置かれている扉の絵として描かれています。余計に胡散(うさん)臭いですね。しかし、胡散(うさん)臭さでいえば、黒パンツの男も同様。気にせず、扉を開けて入ってしまいます。


♯ キィー、バタン。


>……入ってしまいましたね。扉も閉まってしまって、中では何が起きているのでしょう?

>あ、(うそ)です。ちゃんとこちらも中の様子は(うかが)う事ができます。ただし、中が浴場だった場合は自動的にロックがかかるので映されることがありません。同様に、中がトイレだった場合も観察対象外となるように新たに設定されています。で、実際には……はい、やはりそのいずれでもありませんでしたね。ただ、何だ? ここ、狭いですねえ! 幅は車と同じですが、奥行きが一メートルほどしかありませんよ。部屋の隅、天井付近には小さな照明が付いており、この空間を薄暗く照らしていました。


(しゃが)れ声: ふふふ、やはり現れたな。パンツイッチョマン!


>お、ようやく、黒パンツの男という表現からパンツイッチョマンへと移行するきっかけができましたね。この声は、皆さんの想像どおり、頭蓋骨(とうがいこつ)博士の声です。なお、声は、照明とは違う隅のスピーカーから発せられており、えーと……あ、ほら、こっちにはおそらく中の様子を撮っているカメラがありますね。


パンツイッチョマン(以降、「P1」と表す): 何者だ?


>あ、パンツイッチョマンの方では頭蓋骨(とうがいこつ)博士をしっかり覚えていないようでしたね。少なくとも声ではわからないようです。生の声とスピーカーを通した声では声質が変わるから、同一人物だったかわかりにくい、という事象はあるのですが、そもそもパンツイッチョマンは頭蓋骨(とうがいこつ)博士の生の声を聞いていないから、ずっと同じ感じの声のはずなんですけどね。単に覚えていないのでしょう。興味があまりない対象なのかもしれません。


(しゃが)れ声: ワシは『頭蓋骨(とうがいこつ)博士』! お前の最大のライバルだ。


P1: いや、それを決めるのは私であるはずだ。貴様ではない。


頭蓋骨(とうがいこつ)博士(以降、「頭」と表す。: ……た、確かに、それはそのとおりだ。だが、逆に、私――いや、ワシにとっての最大のライバルがお前という意思を示したわけでもないぞ。AであればBならば、BであるならAという理論は成り立たない。初歩の集合理論だな。


>ライバルという立ち位置を否定され、頭蓋骨(とうがいこつ)博士は動揺しているようです。何やら小難しい数学的な話にすり替えようとしているあたりも、内面の不安定さを示しているのでしょう。


P1: 結局、何が言いたい? まさかこの奥で数学の授業が開かれているわけであるまい。何か、文明の危機となるような出来事が起きようとしているはずだ。


頭: ……いや、そこまで大それたことをするつもりではないのだが……。まあ、せいぜい、この都市レベルでの大事件。全国ニュースにはなるだろうが、すぐに忘れ去れる程度のものだと思うが……。ほほう、つまりお前は、文明レベルの危機とこの都市……えーと、なんという都市だった?


枚鴨(まいがも)市ですよ! とここで言っても伝わらないんですよね。


頭: まあ、よい。ともかく、お前はその危機とやらの波を感知しているようだな。遠くで起きた大地震と、近くで起きた中程度の地震とでは、揺れ幅が同じように感じるのと似ているのではないのか? いかに、「文明、文明」とほざこうとも文明はお前にとって遠い存在。近場の生活が乱される方が気になると見える。


P1: ふむ。なかなか興味深い説だな。しかし、それ正しいのかどうか、私にはわからぬ!


>自分の事は意外に自分では気づきにくいものだ、とは言いますが、こうも言い切られると、なんだか自分の行動について責任放棄(ほうき)しているようにも見えますね。……考えてみたら、ずっとそういう行動基準だったのかもしれません。


頭: そういえば、お前は「パンツこそが文明の(いしずえ)」と主張しているのであったな?


P1: いかにも。黒パンツ文明は、パンツの上にこそ成立している。


>えー、改めて指摘しなくてもわかっていただけていると思いますが、パンツイッチョマンが主張している「現代文明=黒パンツ文明」という説はちっとも一般的ではありませんよ。ただ、現代文明という呼称は、時代がずっと下った後にはその当時が現代になるわけですから、新たに別の呼称を、我々が生きている時代の文明に付ける必要がでてくるかもしれません。文明が途絶えなければ「現代文明の二十一世紀頃」で指定できるんですけれどね。……つまり、文明の灯を絶やさなければ、現代文明という表現は使い続けることができるわけです。やったね♪


頭: では、裸族はどうなのだ? あ奴らはパンツなど穿()いておらぬぞ。だから、文明人ではないわけだな。


P1: そうなるな。しかし、パンツを穿()いている(さる)文明猿(ぶんめいざる)である、という議論は決着しているぞ。


頭: は? 文明猿(ぶんめいざる)? ……いや、そういう発想はしなかったな。ちょっと待ってくれ。文明動物については、また考えさせてもらう。私――ゴホン――ワシが指摘したいのはそこではない。裸族が文明人ではないなら、貴様は裸族を見下していることになるな! 多くの現代人が、「裸族であろうと人類は(みな)兄弟」という建前で暮らしている中、お前はずいぶんと差別主義者であるな。


>おっと、何を話しているかと思えば、心理戦だったのか!? パンツイッチョマンが硬直したぞ。正義の味方は「正義とは何か」と考えすぎると行動不能に(おちい)りかねない弱点を抱えているものなのだ。パンツイッチョマンは……正義の味方というより「俺が正義だ」という独善的な人物だと思っていましたが、意外にも、少数部族民を見下していると言われて、ショックを受けているようだ。


P1: その問題。一旦持ち帰らせてもらってもいいか? 「違う」という想いが内にあるが、うまく言葉に表せないのだ。


>おっと、まさかの「持ち帰り」希望! そういうのがありと思っていませんでした。高級料理店で「ちょっと食べきれなかったからパックしてもらっていいですか?」と言っているような感じだぞ。


頭: うむ、良かろう。ワシも文明動物とはいかなるものか、考え直さなくてはいけないからな。


>え、いいの? 頭蓋骨(とうがいこつ)博士側でも持ち帰り案件があるからのようですが、頭蓋骨(とうがいこつ)博士の持ち帰り案件はそもそも考えなくてもいい内容だと思います。


頭: しかし、最大の問題は、お前にその次の機会があるか、だ!


♯ ブルルン、ドルルルル……


>おっと、コンテナ車が動き出したようです。パンツイッチョマンもよろけ――てくれませんね。役者ならここで足場が動いているのを示すようによろめくものなんですが、バランス感覚が良いのも考えものです。


P1: どこへ行くつもりだ?


頭: それは、これからのお楽し――


♯ キィー!


>あ、頭蓋骨(とうがいこつ)博士が話している最中に、パンツイッチョマンが入って来た扉を開けてしまいました。そして、あっさり開くんだ! 普通、こういう所はロックが掛けられて「あ、開かない!」となるんですがね。相変わらず、最勝寺先生には定石を守るという意思がありません。


P1: ふむ。脱出することは可能か。


頭: い、今はな。だが、こちらからロックを掛けることもできるのだぞ。


>あ、頭蓋骨(とうがいこつ)博士のロックし忘れのようですね。まあ、パンツイッチョマンが来るのを待っていたのでしょうが、ずっとモニターを見ずに、それこそ論文なんかを読んでいたら、コンテナ車の扉が開いて初めてやって来たのに気付いた、という感じだったのかもしれません。そうなると、ちょっと(あわ)てているでしょうから、ロックのし忘れなどミスが起きる可能性が高くなります。


P1: そうか。ならば、ここは開けたままにしておこう。


>あ、また、(あわ)ててうっかり失言していたようですね。そりゃあ、鍵を掛けられると言われれば、対応されて当然です。


頭: だが、動いている車両の後部扉が開いていたら、後続車が心配するぞ。そうやって警察に通報されるのは、お前も望むところではあるまい。


P1: 一理あるな。だが、閉じ込められる危険に比べれば、警察車両がやって来るリスクの方が受け入れられる。そのまま、貴様の計画がご破算になる可能性もあるのだからな。


頭: むむむむ。……いや、だが、警察には止められんぞ。特に、事なかれ主義の日本の警察にはな。


>えーと、「事なかれ主義」という指摘は頭蓋骨(とうがいこつ)博士の主観であり、当番組の姿勢(しせい)を示すものではありません。ただ、日本人全体の志向として、波風を立てるのを嫌って見守りがちである、という傾向はあると思います。


頭: であるから、こういうのはどうだ? お前はその扉を閉める。その代り、ワシはロックを掛けない。少なくとも、お前が次の部屋に入るまでは。


P1: ふむ。それならば、その話に乗ろう。扉を維持しようとすると、揺れが緩和できないのが(いささ)か面倒だ。


>確かに、車の動きに合わせて、扉が揺れるので、それにつられてパンツイッチョマンの体も振れていました。さらに言うと、……こうパンツイッチョマンの肩越しに扉の外を眺めますと、扉のこちら側と外側の動きが異なるうえに、扉がゆらゆら揺れて、その異なる揺れをする内と外の世界の境目も揺れる――って、すごく酔いそうになりますね。えーと、音声多重(おんせいたじゅう)(略)活劇(かつげき)熟練(じゅくれん)者ほど脳内再現してはいけないシーンです。ある意味、「混ぜるな危険!」です。


♯ バタン


>無事に閉められる通用扉。そして、ロックを掛ける音はしません。頭蓋骨(とうがいこつ)博士は約束を守る方のようですね。ちなみに、通用扉の下に伸びていた階段ですが、車が発進したのに合わせて折りたたまれたようです。ちょっとしたハイテクですね。


頭: これから、このトレーラーは駅前の……城跡公園? そのような名前の場所に立てられたクリスマスツリーに激突する。そこではプレゼント配布のイベントをやっておるようだから、大きな騒ぎになるぞ。下手をすれば死ぬ者も出るかもしれない。一応、激突前にはクラクションを鳴らして警戒を促すが、腰が抜けて動けない者は……まあ、仕方ないな。科学というものは時に残酷(ざんこく)なものだ。


>いや、科学じゃなくて、この計画が残酷(ざんこく)なんだと思いますよ!


P1: ならば、運転手を倒せば良いのか。


>パンツイッチョマンが一旦離した扉にまた手を掛ける。


頭: ちょ、ちょっと待て。もう車は走りだしておるぞ。……あ、信号待ちの際に降りて前に回りこむつもりか。しかし、その停車時間中に前に辿(たど)り着ける保証などないぞ。


P1: いや。車が動いていようがいまいが、コンテナの上を通って行くつもりだったが。もしかして、罠を仕掛けているのか?


頭: え? お前はそんな事までできるのか? ……そんな事ができると思っておらなかったから、罠など仕掛けることもしておらぬに決まっておろう。


>驚きのあまり、またもあっさり手の内をさらけ出す頭蓋骨(とうがいこつ)博士。


P1: そうか。では――


頭: いや、待て。行かぬ方がいいぞ。時間の無駄になるからな。いわば、この車は時限爆弾。それを止めるためのスイッチはその扉――いや、出入り口ではなく奥へと続くその扉じゃ。うむ、その扉の奥にある。そちらへ進むべきではないか?


P1: そう言って、そちらには罠が仕掛けてあるのだろう?


頭: ふふふ。それはどうかな? 試してみればわかるのではないか。


>うん。これまでの反応から、なかったら「ない」と言ってしまう人なので、罠があるのがほぼ確定ですね。


P1: ……では、まずは自分の判断を信じよう。


>そう言って、結局外への扉を開けてしまうパンツイッチョマン。


>と、ここで今週は時間切れ! 来週こそはきっとこのエピソード終了回だと思います。

>では、また来週~~。

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