参上! かたじけない侍 4
> 突如、平和な河川敷に現れたロボット。一体何者なのか? そして目的は何なのか? パンツイッチョマンが警戒しているから、きっと危険な存在なのでしょう。
>では、まず、ロボットについて説明しましょう。巨大というほどではないですが、充分に大きなロボットです。高さと幅は二メートルほど、奥行きは四メートルほどあるでしょうか。軽トラックを一回り大きくしたような――え!? 「そんなに大きくないじゃん」ですって! いやいや、大きいですよ! これまで直接見たことのある固定型ではないロボットってどれくらいのサイズですか? きっと人より小さいサイズですよね。だから、実際にこのロボットを見たらきっと「でかい!」と思いますよ。……ほら、現に音声多重(以下略)の熟練者の方からは驚きの声が届いていますよ。
>え? 実物大の「乗るロボット」が動くところを見た事がありますか? いいなぁ。私は見たことないんですよ。迫力凄かったですか? ――じゃなくて、あれは広義にはロボットかもしれませんが、実質は構造物です。動くと言っても、寝ていた体勢が起き上がったり、立ったままなのが時折姿勢が多少変わったりするくらいでしょ? それって、からくり時計の大規模版ですよね。動きの自由度がほとんどありません。それに、設定上人が乗れるだけで、実際に乗っている人が動かしているわけではないです。……まあ、それに関してはこのロボットも人が乗ってるとは限りませんね。
>今回、現れた謎のロボットに戻ります。先ほど軽トラックに例えましたが、一旦そう見てしまうと、自動車っぽく見えますね。全体的には、流線型というか、卵形というか、ツルっとした楕円形です。車輪みたいな物も付いていて、ただそれはタイヤではなく、球体です。前部の左右に、球体の三割くらいがはみ出す形で備わっています。先ほど幅が二メートルほどとお伝えしましたが、この球体のはみ出し部分は含みません。含めると五十センチメートルは幅広になりますね。
ロボットボイス: テンイ、カンリョウ。
>あ、喋りましたね! いかにも合成音声ってぎこちなさです。……えーと、もうロボットっぽい話し方とわかっていただけたでしょうから、以後、ロボットが話してもカクカクした話し方ではお伝えしないようにしますね。
>最勝寺先生からのメモでは、「ひらがな縛り表現で大変な目に遭ったから、もう勘弁」だそうです。何についてのことなのか私にはわかりませんが、あの人にも反省があるんですね。
>おっ! ロボットが動いた!
>ロボットの上部から、一部せり上がりました。それが左右に振られます。……首を左右に向けている感じです。
>おおっ! 今度は全体が動いた。旋回です。思ったよりヌルヌル動きます。……なるほど。車輪であれば回転する方向の前後にしか動きませんが、球ならどの方向にも動けるのですね。旋回半径はほぼゼロじゃないでしょうか?
>まあ、そうなると、「あの球はどうやって本体にくっついているんだ?」となるわけで、どうやら、というか、やはりあのロボットは現在の地球のテクノロジーでは作られていないようです。
ロボット(以降、「ロボ」と表す。): 目標確認。
>ロボットの頭と思われる横長の稼働部位が一方を向いて止まった。中心部分にはカメラらしき丸いパーツが確認できます。それが見つめる先は……銀子先生たちが退避した方角ではありませんね。良かったです。
ロボ: 目標、ヤモカシャワンの虐殺の元凶、大言憩良。
>ええっ! ちょ、ちょっと待ってください! 話が飛躍しすぎて付いていけません。一旦停止して、検証していきましょう。
>まず、『ヤモカシャワン』ですが……後ろに「虐殺」ついているから、普通に考えれば、地名ですね。……聞いたことがありません。アフリカっぽい気もしますが……わからないなら置いておくしかないですね。次にわからないのは、その虐殺の原因が、いこい君だという点です。
>皆さんご存じのとおり、いこい君はまだ幼児で、さらに言うなら臆病な気質です。とても、虐殺に関わってくるとは考えられません。
>と、なると、これを説明できる解釈は「ロボットが未来から来た」というものですね。そもそも、ロボット自体が現在の日本のテクノロジーでは――いや、まあ、大門博士を考慮に入れると話が変わってきますが、あれは例外としてまずは除外して――作製不可能な未来技術の産物という雰囲気バンバンですからね。そして、いこい君が未来のどこかで闇落ちして、虐殺事件の首謀者になるのでしょう。……今の様子からすると、想像できないですね。うーん、このロボットは未来からの刺客ではないのかなぁ。
>……あ、今、「それって映画の――
♯ ピーー
>――と同じじゃん」と思った方が居ましたね。ピーの部分は具体的な映画作品名が入りますが、実際のところ、私は発言しておりません。だって、ピーボタンは私が押したので、頭の中で言った時間だけボタンを押しました。あっちの映画作品は、マッチョな男性、しかも当番組一のマッチョ枠――一応仕方なくですが――「パンツ筋肉マン」よりマッチョ、が殺人サイボーグとして送られてきますが、当番組では大きい卵でした。なんか、作品の規模を示しているようですね。映画だったらB級映画……え? こっちはB評価すら採れない? そ、そうかも、ですね。ま、それはそれとして、ひとまず整理がついたので、話を再開させましょう。
>金属の巨大な卵がグルリと横に回転します。あ、どうやら、私たちが見ていたのはお尻(?)に相当する部分だったようです。こちらを向いた側の方が先ほどより細いですね。まさに卵の先――あ、いや、厳密には卵形ではなく、凸凹した箇所もあり、表面もツルっとしていると言いましたが、テカリとしてはそうなんですが、表面を詳しく見ると模様のようなものがあって……あ、でも、卵も近くでよく見ると表面に所々小さく盛り上がった所がありますよね? え、そんな事ない、ですか? いやいや、次に卵を手にした時、爪を立てて擦ってみてください。ガリガリとした感覚が得られるはずです。
>というわけで、総じてロボットが卵形という表現は正しいと検証できましたね。……あ、そんな事は頼まれていませんでしたか。いずれにせよ、当番組は音声多重(以下略)なので、ロボットの外見が簡素過ぎてつまらないという方は、ご自由に装飾していただいて結構です。ただ、「せっかくだから、俺は赤い美少女メイドロボにするぜ!」とかまで飛躍すると、今後の展開と齟齬が生じますからほどほどに、をお勧めします。
>こちらを向いた事でわかりましたが、ロボにはもう一つ車輪、いや車球(?)があったようです。前部(推定)の下に一つ、こちらは車体からはみ出さず収まっており、角度によっては見えづらいですね。でも、合計三つの車球の効果は、予想どおり、旋回半径の縮小、おそらくほぼゼロを実現しています。
>ん? そういえば……あ! ロボットの向いた先にいこい君がいます! 銀子先生たちと一緒には行動していなかったようです。確かめていませんが、あと巻き戻して確認することもしませんが、いこい君のお父さんが銀子先生よりも早くとっとと退避していたのでしょう。その判断の素早さや善し、です。だが、いこい君の手を引いて、異変から、そしてきっとパンツイッチョマンとは関りたくないという雰囲気全開でこちらを見ようともしないお父さんは、ロボットにロックオンされているのには気付いていません。いこい君は手を引かれながらこちらを向いているので、ロボットに狙われているのに気付いて――いるのかな? いつもたいてい怯えてオロオロしているので、よくわかりませんね。お父さんの方も、いこい君がメッセージを送っているのかわかっていないようで、反応はありません。このままでは、いこい君とお父さんはロボットの――ビームかな?――攻撃を一方的に受けてしまいます!
>お、そこにやっぱり立ち塞がってくれる半裸の男。ダッシュで割り込み、芝生の上を素足が滑ります。
P1: 幼き命なくして、文明なし! 私は、文明の守護者――
>ロボット相手でもいつもの名乗りは変わらないぞ! パンツイッチョマンの右手が天を指差す。
P1: パァァァーーンツーー
>伸びた右手が左右に振られながら下りる。
P1: イッチョマン!
# バン、バン、ババン!
>え? 三連ズームもやるんですか? でも、もう今回のエピソードで一回名乗りは終わっていますよね? アニメなんかじゃ時間稼ぎは必要ですけど、こっちは逆にモタモタしている余裕はないというか……あ、もうズームしちゃったから、テーマ曲を流さないと収まりが悪い? そうですね。では、ポチっと。
♪ チャラッチャラッチャーチャチャチャチャー(デケデケドンデケデケドンデン)、チャラッチャラッチャーチャチャチャチャー(デケデケドンデケデケドンデン)……
(略)
♪ パァンツー(チャッチャー)イッチョマーーン
>視聴者の方の中には、「音楽を流している間、ロボットは空気を読んで待ってんのかよ」と醒めた目で鑑賞されているかもしれませんが、そこは大丈夫! いつもテーマ曲を流している間はゴツゴウ・ユニバースの方は一時停止していますので。……あ、「だったら静止画を見せられているのか」という心配に対してもご安心ください。これまで収録されたパンツイッチョマンの活躍シーンを編集して流していますから。……まあ、それらの映像が貯まる前は、いつもの時間繋ぎ画像、「野生動物の日常」が流れていました。気づきませんでしたか? そういえば、いちいち報告していませんでしたからね。
>と、書いている内容に付いて来られる視聴者の方だけが今残っているはずなので、テーマ曲の挿入なんかで興醒めなんかにならないでしょう。いつもご鑑賞ありがとうございます。
ロボ: 行動線上に障害物発生。……作戦行動に支障なしと判断。予定行動を継続する。
>うん。やっぱりロボットらしい配慮に欠けた物言いですね。一応、当番組のメインヒーローに対して無視同然の扱いですよ。酷いですね。
>それに対して、パンツイッチョマンはいつものハの字の構えで応じます。
>しかし、生身の人間ではなく機械の金属製の身体にパンツイッチョマンは立ち向かえるのでしょうか? ……え? 「予告で『パンツイッチョマン、破れる』と言っていたから、もう負けるのは分かっている」ですか? これは……今後は次回予告をすべきかどうか考え直さないといけないようですね。展開が先に読めてしまうなんて、それこそ興醒めですからね。
ロボ: 処刑実行。
>冷たい合成音声を発し、動き出すロボット。……ん? てっきり武器を展開すると思ったら、突進するだけですね。え? 未来世界から転移する際、飛び道具は持ち込んではいけないという決まりでもあるんでしょうか? そういえば、映画『――ピーー!』――でも、そういう設定がありましたね。……まあ、後継作ではその設定が一部覆るんですけれど。……少なくとも映画業界というか、お話の創作においては、後の作品ほどより派手にならないといけない、という決まりがあるようです。これはもしかすると受け手の問題かもしれません。バトル漫画の強敵で、「前の奴より弱いな」とか思って興醒めになっちゃう人がいるから、仕方なく作り手はスケールを大きくしていって、やがて破綻しちゃうのかもしれません。
>でも、当事者の立場で考えたら、「確かに今の敵は前の敵より弱いかもしれないけれど、それでも自分より強い」という点は変わらないのですから、大変な戦いになるわけです。大人になって色々経験するとわかってくるのですが、確かに今のピークは過去と比べて最大値(あるいは最小値)ではないかもしれないが、それでも極大値(あるいは極小値)なんだよ、と実感できます。そもそも、多くの人が人生で最もキラキラしていると思っている青春を過ぎて、「後の人生は下り坂」と考えている人ばかりじゃありません。キラキラ度は青春には負けていても、それ以外の楽しさが以降の人生にたくさんありますからね。
>と、過去の脅威を毎回超えなくてもいいでしょう、と主張してみましたが、パンツイッチョマンに関しては、今回が過去最大の脅威です。どうなるんでしょうね? え? 「次回予告で助っ人が現れるようなことを書いていた」ですか? ……やっぱり、当番組における次回予告、ちょっと考え直さないといけませんね。
>では、時は動き出す。
>急加速するロボット! 旋回性能だけでなく、加速力も現在のテクノロジーより高いぞ。あっと言う間にパンツイッチョマンに迫る!!
P1: イッチョマン・スラップ!
♯ ドカッ!!
>あ、そりゃあそうですよね。いつもの「パチン!」より、大きな衝突音。パンツイッチョマンはあっさり跳ね飛ばされます。何メートルも吹き飛んで、跳ねて、跳ねて、お、クルリと空中で回転して、ヒーロー着地!
# ガシャーン!!
>ん? 何だ? ……おぉ、ロボットが近くに停めてあった軽自動車に激突しています。もちろん、自動車は大破です。えーと……あ、やっぱり。本来、ここの堤防の下は一部の駐車スペースを除き、許可を受けた車両しか停車してはいけないルールになっているようです。この車はルール違反だったわけです。とはいえ、ルールを守らなかったから車を破壊されるのはちょっとかわいそうですね。
>ロボットが予定コースを逸れた理由は一つしか考えられませんが、一応、確認して見ましょう。巻き戻してみます。
♯ ドカッ!!
>うぅ。痛そうですね。
>パンツイッチョマンがイッチョマン・スラップでロボットを打ったと同時に、パンツイッチョマンもロボットの体当たりを受けています。近接攻撃の宿命ですね。体当たりへのカウンター攻撃は一方的にできません。
>今回は跳ね飛ばされるパンツイッチョマンを追わずに、ロボットの方を映しましょう。あ、やっぱり、イッチョマン・スラップが効いていたようです。進行方向が逸らされて、そのまま停めてあった軽自動車に一直線。……しかし、ここで何もぶち当たらなければ、ロボットは急ブレーキをかけて、再度いこい君目がけて突進していた可能性が高いです。停止してからの発進がすごく早いのは今見たとおり。止めるには、障害物にぶち当てるしかなかったのですね。パンツイッチョマンは軽自動車への激突を見込んでのイッチョマン・スラップだったのかもしれません。パンツイッチョマン、やはり侮り難しですが、軽自動車の持ち主からするとたまったものではありませんね。
>では、再生っと。
お銀: パンツイッチョマンさん!
>遠くから、銀子先生の悲鳴が届きます。そりゃあそうです。本来、子供に見せてはいけないレベルの轢かれっぷりでしたからね。軽自動車の損害を見たところ、普通の人だったら死んでいる威力だったはずです。実際、さすがのパンツイッチョマンも、ヒーロー着地はいつもと比べて前のめり、這いつくばっているに近い状態です。お、今、顔が上がりましたが、やはり辛そうですね。
P1: 花鳥風月を呼べ。私では抑えきれない。
>大きな声を出すのも苦しそうです。これは深刻だ。救援指示です。子供たちには「かっこ悪い」とさえ思われる発言だろう。しかし、力不足なのに独りで仕事を抱え込んで、どうしようもなくなってから倒れて、周囲に人が火消しに躍起にならなくてはならない状況は社会人としては好ましくない。無理なら無理と早く発信するのは重要で、かつ勇気のある行動です。
♯ パン!
>ん? 破裂音。お、年長の警察官が拳銃を抜いて、足元に向けて一発撃ったようです。威嚇射撃ですね。
>威嚇射撃は映像作品では、上に向けて放つ姿がよく描写されます。でも、少し考えたらわかるとおり、空に飛んで行った弾丸はそのまま宇宙まで飛び出すわけがなく、いつかどこかで下へ落ちます。その際、その落下地点にいたものは当然、弾丸に当たります。空気抵抗を無視したら、弾は速度エネルギーを位置エネルギーに変えて上昇していき、速度エネルギーがゼロになった場所からは、位置エネルギーを速度エネルギーに変えて落ちていきます。つまり、撃った威力と落ちてきた威力は同じなのです。もちろん、実際には飛距離に相当する空気抵抗を受けていますから、落ちてきた時の威力の方が弱まっていますが、ちっとも「当たっても平気」レベルじゃないでしょう。
>つまり、威嚇射撃は空砲を放つか、当たっても問題ない場所に最初から当てておかないと危ないのです。その点、さすが本物の警察官はわかっていますね。
年長の警察官: 動くな! 器物損壊の現行犯と殺人未遂容疑で逮捕する。
若い警察官: でも、延則さん、相手はロボットですよ。
>小さい声で指摘しながらも、若い警察官も拳銃を抜いて、ロボットへと向けた。
ロボ: 脅威認定。優先順位変更。目標パンツイッチョマン。
>淡々と宣言が発せられると、ロボットは車にめり込んでいた体をバックで抜き出し、クルリとゼロ旋回する。ロボットの体には見た感じ損害はなさそうだ。動きにも乱れはない。
年長の警察官: 一斉射撃!
♯ パン! パン! ……
>躊躇わず、引き金を引く年長の警察官。それに若い警察官も続く。
♯ キュイン! キュイン! ……
>拳銃の弾はロボットの胴に命中するが、弾かれる。
ロボ: 被攻撃を確認。被害なし。優先順位、変更なし。
年長の警察官: くそっ!
>お、苛立っていますね。そりゃあ、拳銃を発砲するのにはかなり精神的なハードルがあったのに、ほとんど無視されれば腹が立ちます。ん、年長の警察官、狙いを定めて――
♯ パン!
>――撃った!
♯ チュイン!
>が、また弾かれる。狙った先は胴部の上に突き出した頭部らしき場所。
>警察官は撃つからには当てなくてはならないというプレッシャーが大きいです。外した流れ弾は当然何かに当たるわけで、そうなると色々と批判を受けるからです。しかし、外しやすい頭にせっかく当てたのに、装甲の硬さは変わらなかったようだ。残念です。
♯ パン!
>あ、次は外した。渾身のヘッドショットが効かなかった動揺は大きかったのかもしれない。
ロボ: 処刑実行。
>加速するロボット。今度の目標はパンツイッチョマンだ。ハの字の構えで――いや、ハの字になっていないぞ! 左手は脇腹を押さえている。もしかすると、先ほどの衝突を受けて、肋骨を痛めたのか? というか、改めて考えれば、立っているのも不思議なダメージのはずだ。
P1: ハッ!
>ロボットの突進をスピンムーブでかわすパンツイッチョマン。確かに、守るべき者がいなければ、イッチョマン・スラップを無理に狙いにいく必要はない。しかし、パンツイッチョマンの動きはいつものキレはない。そう言えば、「イッチョマン・スピン」という掛け声もなかった。それほど余裕がないのだろう。
>HPがゼロになるまでは行動に制限がかからない多くのゲームとは違い、現実には大きなダメージを受けるとパフォーマンスが低下し、そのまま負けに至る道が開けてしまうものだ。パンツイッチョマン、これはまずいぞ!
>対するロボットは、パンツイッチョマンの横を通過すると、クルリと旋回しながらブレーキング。直ちに次の加速へ入る。これは、思ったより、ゼロ旋回は危険な技だ! パンツイッチョマンはなんとかまたかわしたが、猛突進が脇を避けた余波を受けたのか、自身のスピンを踏みとどまれなかったのか、少しよろめいているぞ。が、そこに容赦のないロボットの再突進が迫る! AIらしいと言えばそうなのだが、当番組や視聴者の方への配慮はないぞ。
P1: とうっ!
>スピンではかわしきれないという判断か、パンツイッチョマンは突進に対して直角の方向へ飛び込み前転をして避ける。……が、これは脇腹へのダメージが大きかったか、パンツイッチョマン、直ぐに立てないぞ!
>ギュルンと回って一旦止まるロボット。こちらにはダメージの蓄積は全く見えない。
ロボ: 優先順位再構成。目標、ヤモカシャワンの虐殺の元凶、大言憩良。
>おっと、これは想像以上に柔軟なAIだ。パンツイッチョマンが捕捉しにくいなら、いこい君を狙う、ってわけですね。人間だとつい目先の思考に釣られてしまって、本筋から目を離しがちですが、本来の目的が何か、このロボットのAIは常に意識しているようです。
>しかし、本筋から離れてしまいがちな人は、一つの事に集中する真面目な人が多いらしいですよ。それって、そもそも集中していないから逸れるのではないか、と思われるでしょうが、そうなる方が自然だという説があります。進化の過程で、食事に集中するあまり接敵を許さないように、何か集中していても、ふと別のことが気になるようにできているのです。そして、集中力があるからこそ、その別の事へ注力してしまうという流れですね。……ええ。脱線癖に対しての言い訳です。
若い警察官: 緊急事態発生! 遊鳥川河川敷にて……
>警察官が応援要請を始めましたが、……間に合いそうにないですね。決して彼らの行動、判断が遅いわけではなく、むしろ拳銃の発射は早かった――もしかしたら、いわゆる始末書レベルの前のめりだった――のですが、事態の進行が早すぎるのです。AIの思考の無駄のなさもありますが、やはり現場に転移で現れたのが大きいですね。
>例えば、戦闘機の領空侵犯にはササッと空自が対応してくれますが、テレポートで現れる敵性存在は即時行動の想定外です。こういう事態に対処するのは、警察にせよ、自衛隊にせよ、組織として行動を起こすのには自ずと限界があります。もし俄かに信じがたい事態に対して現場が勝手に行動を起こせるなら、反乱が暴発しやすい体制と言えますから、やむを得ないところです。
>そういう意味では、パンツイッチョマンが「花鳥風月を呼べ」と言ったのは、正解に近いと言えるでしょう。対応範囲はもちろん警察や自衛隊の方が広いですが、即応能力は個人ゆえに花鳥風月の方が ずば抜けています。問題は、その花鳥風月を直接動かすチャンネルがないという事と、日本にいる匿名ヒーローを含めて随一と言われる能力を誇る花鳥風月であっても、この事態を治めるには荷が重すぎやしないか、という点です。
>ロボットは角度を変えて、いこい君たちの方向へ胴体を向ける。こ、これはもしや……。
>そうはさせじと、ヨロヨロとしながらも素早く間に割り込むパンツイッチョマン。ロボットの狙いはこれだったのかもしれません。パンツイッチョマンに攻撃を回避されるなら、回避されない攻め方をする。将棋でいうところの王手飛車取り。いや、このロボットが飛車っぽいから、パンツイッチョマンは角行にしましょう。だから、この一手は王手角取り! さすがAI、非情です。
>危うし! パンツイッチョマン!!
>と、ここで、放送時間終了です! 最勝寺先生に問い合わせると、「あと数千字で終わると思うよ」と言ってましたが、いつもそこから二倍三倍と膨上がっていますから、おそらく一回放送分くらいなるでしょう。
>では、また来週~。




