参上! かたじけない侍 2
「――と、まあ、こういう次第でござる」
そう言うと、江戸時代から現代に跳んできた侍は、無精ひげの生えた頬を右手でこすった。その正面に立つパンツイッチョマンは、深く頷く。
「そうか。その涼しげな顔の向こうには、それほどまでの波乱万丈に満ちた大冒険が秘められていようとは……」
「いやいや、大冒険と言うほど――」
え? ストップ!? いやぁ、週が明けたら回想シーンも終わっていたら面白いかなぁと思って試してみたんですが……面白くない? あ、そうですか。目新しいと思ったんだけどなぁ。じゃあ、いつものナレーターに進行権を渡します。
ナレーター(以降、「>」と表す。): さて、忝い侍の過去にどういう大冒険が……ん? 何だか、視聴者の皆様の反応が……「大冒険、ってもう聞いた」という声かな? ……いや、そんな話を私はしていないから、反応センサーの誤作動かな。いつも、微妙な反応をこちらで推測しながら合わせているだけだから、元よりブレ幅が大きいんですよね。
>はい。些細なエラーはパソコンで表示された時と同じように無視して進めましょう。忝い侍が自身の過去について話し出したところからです。
忝い侍(以下、「忝」と表す): 四面楚歌となりし拙者は山に逃げた。その竹林で、不可思議な光景に出くわしたのでござる。一際大きな竹が生えており、それが、蛍のように点いたり消えたり、光を放っておったのじゃ。
>言いながら、忝い侍は両手で抱えるような仕草を示す。どうやら大きな竹のサイズのようなのだが、どう考えても竹としては大き過ぎますよね。
忝: 「光る竹」と聞いて、おぬしが今思ったとおり、拙者も『竹取物語』について思い浮かんだ。で、あるから、拙者も竹を割って、本当に中にかぐや姫がおるのかを確かめようと試みた。されども如何せん、竹はなかなかに硬く、刀の刃が通らぬゆえ、手であれやこれやとこじ開けようとすると、しからば開いた。中に居たのは、聞いて驚け! まさに、赤子であった。
>忝い侍が、今度は、赤子らしきものの大きさを手ぶりで示す。こちらは、まあ普通の赤ん坊と同じくらいのようですね。
忝: しかし、伝え聞くほど、かわいらしい赤子ではなかった。玉のような赤子と申すが……確かにそれはその通りであった。頭が大きく、目も一際大きく……手はやたらと細く。正直に申すと、拙者は「妖怪変化か!」と思ったが、刀を抜く前に、「かぐや姫は確か月の民。月の民ならば、我らとは違う容姿なのやも知れぬ」と思い至り、「面妖なれど、赤子に罪はない」と助け上げることにした。しかし……
>忝い侍が頭を掻くと、また白い粉が飛ぶ。
忝: 物語では、芝刈りに来ていたのは翁で、家には媼がおったが、拙者は追われの身――
P1: 待て!
>ここで黙って聞いていたパンツイッチョマンが片手を前に押すように突き出した。
P1: 芝刈りのおじいさんでは『桃太郎』になるぞ。
忝: ……そうであったか? では、『竹取物語』の翁は何故竹林へ入ったのだ?
P1: 竹藪に入る理由は、竹を取るか、筍を取るかに決まっておろう。
忝: 追っ手から逃げる為にも使ったぞ。
>しばし無言で見つめ合う二人。どちらも「いや、そういえばそうだよねー」とあっさり相手の指摘を認めざるを得ない、身のない発言をしていた。そもそも、進行中の会話の中身がどうでもいい内容なのではなかろうか、とまで考えているのかもしれない。しかし、それ以上考えると、視聴者の方々の方でも、当番組への対応を見つめ直すべきではないか、くだらない話を読んで貴重な時間を消費する対象にすべきではないのではないか、と考えてしまう隙を与えてしまうので、とっとと次の発言なり行動なり取っていただきたい。
忝: ともあれ、拙者は本来この赤子を預かるべき翁を探して、引き渡そうと考えた。しかし、そうする前に、赤子に呼ばれた。
>別にパンツイッチョマンは質問などしなかったのだが、「そうだ」と言わんばかりに忝い侍が頷くと話を続ける。
忝: 不可思議なことに、その赤子はもう話しができた。……いや、実際には話してはおらぬ。話してはおらぬが、何をしてほしいか、何となく拙者に伝わってくるのだ。それで、拙者は言われるがまま、小さな竹を受け取ると――いや、実際には受け取ってはおらぬ。竹の内側は、……あれは月の竹であったのかのう、複雑な文様が描かれており、中には光ったり動いたりしている文様があった。まあ、そんな中から、小さな竹を拙者が拾い上げたのじゃ。それを、言われるがまま、竹林の開けた場所の地面に突き立てた。
>忝い侍が見えない棒を大地に突き立てるジェスチャーをした。
忝: すると、小さな竹もまた光り出した。それだけでなく、うるさい音も大きな竹と同じく鳴り響いた。
>思い出しても不快なのか、忝い侍が眉間に皺を寄せる。そこに、また、パンツイッチョマンの確認が入る。
P1: 待て! 最初に見つけた大きな竹とやらも、鳴っていたのか?
忝: ん? そう言ってなかったか? いかにも。大きな竹も小さな竹もブーブーと煩く鳴いた。ほら、通りに溢れておるジドウシャとかいう乗り物が鳴いておるのに似ておったな。
P1: ふむ。
忝: それから、拙者はしばらく赤子の世話をした。翁を探しに行くべきであったが、赤子が、ほれ水や、ほれ湿布や、となかなかにワガママで。そうこうしておると、空が輝き、月からのお迎えがやって来てしもうた。思うに、拙者が翁ではなかったので、かぐや姫は切り上げたのであろう。いや、それだけでなく、拙者まで月の民の牛車……光っておったゆえ、牛がおったのかはよくわからなかったが、いずれにせよ、拙者もかぐや姫共々、宙に浮かび運ばれた。
>忝い侍は溜め息を吐くと、頭を揺すった。白い粉が――あ、もう、この描写はいりません?
忝: それからはあまり覚えてござらん。気がつくと――
P1: ――現代に着いていた、と。
>忝い侍が二本指を立てて、パンツイッチョマンを示した。
忝: いかにも! であれば、おぬしも気づいたのであろう。『竹取物語』と思っておったら、締まりは『浦島太郎』であった、という始末。世間は何もかも変わり果てておったのじゃ。しかし、傍らには玉手箱はなく、所持していたはずの刀は――
>忝い侍は正座になると、刀を前に捧げ持ち、一気に刀を抜く。
忝: かように、竹光に変わり果てておった。
>確かに、真剣であれば鋼の輝きが見られるはずですが、この刀にはそれはありません。くすんでおり、陽の光を反射させるきらめきもない事から金属でもなさそうです。しかし、竹かと言われると、よくわかりませんね。はっきりしなかった理由は、忝い侍が早々に刀を鞘に納めたからでもあります。
忝: 無銘の刀とはいえ、刀は侍の命。それがかように変わり果て、拙者は大いに落ち込み申した。
P1: ふむ。竹光と言われたが、先ほどの刀、竹にしては節が見られなかった気がするが。
>意外にも、というか、そういえば見ている所は見ているパンツイッチョマンの指摘に、忝い侍は自問するように首を傾けた。思い出しているのでしょうが、そうするより抜いて確かめた方が早そうなのに、侍とは容易に刀を抜きたがらないものなのかもしれませんね。
忝: 言われてみれば、そうだった気もしますな。
>いや、だから、それだったら今確かめたらいいのに……やっぱり抜きませんね。
忝: それ以後は、あれやこれやで今に至りまする。
>あ、もういいんだ。でも、どうやらタイムスリップしてすぐにこの場に着いたわけではなさそうですね。そういえば、「今様の話し方を習得した」というような発言をしていましたから、それなりに現代日本で過ごしていたようです。……行き倒れていたくらいなので、まともな職に就いていたわけではなさそうです。というか、そうしようにも現代じゃ戸籍がままならないなら、働くのも大変なのでしょうか? そのあたり、むしろちょっと気になりますね。
P1: では、幾つか聞いても良いか?
忝: むろん。構いませぬぞ。
P1: まず、竹の中にいた赤子とやらだが、その顔、今ここで描けるかな?
>そう言うと、パンツイッチョマンは地面から手頃な棒切れを拾い、忝い侍に差し出した。忝い侍はそれを受け取ると、頭を掻いて――あ、この行動は伝えなくていいんでしたね――地面を引っかくようにして絵を描き始める。
忝: 大まかな絵しか描けませぬが……
>逆水滴型の頭部に、吊り上がった大きな目。……はい、どこかで見たことのある顔ですね。
P1: やはり、グレイと呼ばれる宇宙人のようだな。
>あ、やっぱり。そもそも『浦島太郎』のお話が宇宙人に誘拐――というか旅行に連れて行ってもらったお話ではないか、という解釈があるくらいですからね。大きな竹、というのも現代人からすると筒状の宇宙船だったのかもしれません。
忝: く、暮れのう、うち? ……それは、つまり、南蛮人という事であるか?
>この人、わからなかったら何でも「南蛮」くくりで片付けようとしますね。……あ、お子様にはわからなかったかもしれませんが、「南蛮」は「南に住む蛮人」という意味が由来と思われる外国人のことです。もちろん、今では差別的な表現としてお勧めできません。仲間うちで忝い侍ごっこする程度なら問題ありませんが、将来芸人になって「忝い侍の物真似します!」と披露するには、コンプラ的にNGなので気をつけ――あ、こんな心配する必要ないですか?
P1: …………伝え聞くところによると、かつて日本の空港では、外国人を示す掲示としてAlienという単語を当てていたらしい。異邦人というつもりだったのだろうが、ある映画の世界的ヒットにより、差別的だと非難が上がった。……そういう経緯を考えると、貴殿の指摘はあながち間違いでもないな。
>いや、間違ってますよー!
>どうやら、パンツイッチョマンは頭の中で、日本語と英語を行ったり来たりする独り伝言ゲームをしたようですね。そのせいで、そもそもの忝い侍の発言内容がぼやけてしまったに違いない。
忝: ほほう。現代では、月も既に南蛮国の一つであったか。
P1: 一番乗りをしたのはアメリカだから、まあ、そのようなものだ。
>いや、違います!
>あ、ダメだ。この二人の会話を流していたら、修正する箇所が多すぎる。お子様が間違った知識を吸収してしまわないためにも、ここは久々にクラシックな音楽を流してみましょうか?
>月繋がりで映画の古典『月世界旅行』から……あ、この映画自体はサイレントなのですが、サイレント映画は上映時に生演奏を流すことが多く、そうして流された曲の一つと考えられて――
♯ ぐ、ぐぅぅうう~~
>今の音は『月世界旅行』とは関係ありません。……どうやら、忝い侍の腹の音だったようです。あまりの音量に、変人二人も話を止めて、微妙な雰囲気で見つめ合っています。真面目な会話をしている時のオナラのような感じですね。
忝: 喉の乾きが満たされれば、次は腹の順番か……。済まぬが、何か食べる物があれば、分けていただけないであろうか?
P1: ふむ。その要求に答えたいところだが、あいにく私は携帯食を持ってはいない。買って来ようにも、お金を持ち合わせてもいないのだ。
>はい。それ、聞きました。聞いていなくても、その格好を見ればわかります。
忝: そうであったな。……仕方あるまい。
♯ ぐ、ぐうぅぅ!!
>忝い侍は我慢しようとしたようだが、イヤだイヤだ、とだだをこねる子供のように、腹の虫が抗議の声を上げる。
P1: しかし、当てがないわけではない。
>さらりと付け足した言葉に、忝い侍は落としてした視線を上げる。
♯ くぅ!?
>いや、いちいちお腹も合わせなくていいです。これって必要ないのに顔をフレームインしてくるパンツ筋肉マンみたいですね。
忝: では、いざ!
>懐から欠けた木製の椀を出して差し出す忝い侍。それを受け取るパンツイッチョマン。
P1: 貴殿も付いて来られよ。
>と誘った割には、相手を待たずに駆け出すパンツイッチョマン。いや、貴方の足に付いていける人なかなかいませんから! 忝い侍は刀を杖のようにしてよろよろと立ち上がる。これじゃあ、とても駆けられそうにありませんね。そういえば、近くにある川の水を独りで飲みに行けないくらい消耗していたんですよね。だったら、立ち上がられるだけでもすごいかもしれません。よく「昔の人は根性がある」と言われますが、そんじょそこらの昔の人では張り合えないほど昔の人なので、根性もそんじょそこらレベルではないのでしょう。
>人としては、歩いているだけで倒れそうな忝い侍を見守るべきなのでしょうが、番組的には危なっかしいそちらを映してもあまり旨味はありません。曲芸として、ライブで綱渡りを見るのはハラハラするものですが、不思議なことに、画面を通して見るとちっともハラハラしないどころかむしろ退屈ですよね。「どうせ落ちないんでしょ」とか、あるいは「もう落ちるのが決まっているんでしょ」という、録画物観点で見てしまいます。もちろん、ハラハラ展開に陥っているキャラに思い入れがあれば別なのですが……出てきたばかりのバッチイお侍じゃあ、思入れないですよねえ。
>というわけで、パンツイッチョマンを追いましょう。ちょっとこちらで話している間にけっこう進んでいますよ。向かった先は――
幼児: あ、パンツイッチョマンだぁ!
>そこは、河川敷の野原で過ごしている風景的存在の一つであった、保育園の人たち。ということは、もしや――
女性保育士: え? パンツイッチョマンさん!! どこ、どこ!?
>はい、銀子先生です。子供たちが見ている方向にいるのはわかるはずなのに、取り乱しているからか、無用にあちこち見回します。
>銀子先生がうろたえている間に、どうして子供たちがここにいるのかを説明しましょう。今日は、保育園の皆さんにとっての楽しいイベント、ピクニックデーだったのです! まあ、イベントと言っていますが、お昼ご飯を外で摂るってだけなんですけどね。しかし、清潔化が進む現代日本においては、野外の食事はあまり好まれません。ましてはその対象が幼子なら、親御さんはなおさら「止めて!」と思うでしょう。はい、実際、参加せず、園の方でいつものように過ごしている園児もおられます。しかし、良いのか悪いのか、なかなかに歴史のある保育園の伝統行事なので、廃止されず続いていたのです。
>このピクニックデーには、保護者も参加することが可能で、今も何名か保育士以外の大人の方がシートの上に座っています。お昼ご飯は基本的に園の方で用意しますが、保護者の方が持ち込むのも可能です。しかし、「お昼ご飯を作ったところで手間と費用が掛かって損じゃん」という意見があり、それを補填する術として――あ、保育園のシステムなんか興味ないですか。では、省いて、パンツイッチョマンたちの様子に戻りましょう。
>うろたえていた銀子先生ですが、さすがにいつまでも見つけられない事はなく、すぐにパンツイッチョマンが駆けて来るのを目にします。そして、何を思ったのか、フォークを掴むと自分の喉元へと近づけます。
女性園児: ぎんこせんせー、そこはお口じゃないよー。
>銀子先生に的確なツッコミを入れたのは、確か名前は、園ちゃん。以前、パンツイッチョマンのコアをストライクしようとしていた女の子ですね。園ちゃんの言うとおり、銀子先生の行動は変です。……これは魚図博士との会話から、「パンツイッチョマンさんは私がピンチの時に現れる!」と思っていたのに、ピンチでもない時に出てきてしまったから、自分からピンチになろうとしているのかもしれません。……まあ、広い視野で見ると、パニック状態ですね。しかし、幼児と一緒に食べる時用のフォークなので、先は丸く殺傷力は低いぞ。お、園ちゃんの言葉のおかげですぐに自分の愚行に気付いたようで、銀子先生はフォークをシートの上に転がすと立ち上がって、パンツイッチョマンを迎える。が、衝動的な行動は子供たちの方が早い。パンツイッチョマンはすぐに子供たちに囲まれた。もうパンツイッチョマンのすぐ傍に立つスペースはない。銀子先生の出足は遅れてしまった。
P1: ハハハ。みんな、元気がいいな。……お、君はたしか「いこい君」だったな。元気にしていたか。
>第一話で多くの大写しカットを勝ち取っていた憩良君は今回もいましたね。しかし、あの時と態度は基本的に変わらず、パンツイッチョマンとは距離を置きたいようだ。半裸の男を囲む子供たちの中には加わっていない。というか、憩良君のお父さん令輔さんも参加していましたね。パンツイッチョマンに背を向けて息子を隠そうとしましたが、逆にその行動があの変人――じゃなくて、えーと風変りなヒーローの目を引いてしまったようだ。いつものように、相手の返事は待たないパンツイッチョマンは、みんなに話しかける。
P1: みんなに頼みたいことがあるのだが、ランチを少しでいいから分けてもらえないだろうか?
>たちまち「いいよー」と子供たちが答え、保育士を含め保護者が困惑している中、すぐに行動に移す子が出てくる。すると、それに釣られてか、負けじという気持ちなのか、追随する子供たちも出てくる。パンツイッチョマンが差し出した縁が欠けた椀には、ミニウインナー、玉子焼き、俵状のおむすびなどが貯められていく。子供たちは基本手づかみだ。もちろん、たしなめられるが、お箸で掴んで運ぶのはもちろん、フォークやスプーンで運ぶのも幼い子供には難しい作業だ。これは仕方ないだろう。
>そのワチャワチャに紛れて、園ちゃんはパンツイッチョマンに忍び寄ると、無防備なコアにストライク!――しようとして、後ろ襟を掴まれて阻止される。もちろん、止めたのは銀子先生だ。銀子先生はそのまま園ちゃんを抱き上げると、くねくねしながらパンツイッチョマンに話しかける。
銀子先生(以降、「お銀」と表す): パンツイッチョマンさんも参加されるってわかっていたら、私もちゃんと手作りのお弁当を持ってきたのに……愛情のこもった――
園: ぎんこせんせー、コンビニのサンドウィッチだよー。
>銀子先生にしてみたら、言わなくてよい報告をする園ちゃん。
お銀: コンビニじゃなくて、ちゃんとしたパン屋さんの――
>訂正しかけて、「料理ができる女」アピールが失敗したのに気付いた銀子先生は途中で言葉を止めた。いや、別に今回お弁当を作っていないとしても、料理ができないと決まったわけではないんですけれど、自信があるならここで動揺しないはずなので、なかなか園ちゃんの突いたところは、銀子先生にとって痛かったのかもしれない。
>しかし、園ちゃん、なかなかの試合巧者ですね。友庫さんといい、銀子先生にとって邪魔な女の人はなかなか強力です。もしかしたら、こういうのも女難の定めというのかもしれませんね。
お銀: と、ともかく。私も……食べかけのサンドウィッチでいいなら。あ、でもこれって間接キッスになっちゃいますね。
>銀子先生は園ちゃんを連れて、自分が座っていた場所に戻ると、持つものを、園ちゃんからサンドウィッチに変え、さらにサンドウィッチの端を念のためなのかもう一口かじる。
P1: ハハハ。ありがとう、ありがとう。もういいよ。これ以上は入らないからな。
♯ ガシャーン
>今のはこちらで入れた効果音です。シャッターが閉まる音。銀子先生、またしても間に合いませんでした。頬を膨らませた後、銀子先生は持っていたサンドウィッチを口に放り込む。
女性保護者: あ、あのー。
>お、ようやく、パンツイッチョマンに押されっぱなしだった雰囲気を是正してくれる人が現れたようです。保護者からすると、いくら聞いたことがある存在とはいえ、半裸の男に寄って来られるのは困りますからね。「あなた、誰!?」「関係ないなら、どこかへ行ってください」と言いたくもなります。まあ、本人を前にズバリと言いにくいとは思いますが。
女性保護者: 良ければ、写真を撮ってもいいでしょうか?
>って、そっち!! ……うん、ダメですね。枚鴨市、完全にパンツイッチョマンに汚染されているようです。
P1: ん? 撮影か。少し待ってもらえるかな。お腹をすかせている御仁がおられるのでな。
>パンツイッチョマンが振り返ると、そこにはよろよろと近づいて来る忝い侍の姿があった。ざわついていた雰囲気が一気に凍り付く。子供たちは、基本的に知らない大人は怖がるものだ。男の人であれば尚更だ。保護者にとっても、不審な男性が近づくのは警戒すべき対象だったが、今回はそこにもう一点強力な反発する要素があった。はい、臭いですね。いや、実際にはまだ臭っていないのかもしれませんが、不潔さは見るだけでわかります。漂ってきます。
P1: ほら、糠塚殿、恵んでもらえたぞ。
>パンツイッチョマンの呼びかけにピタリと足を止める忝い侍。その表情は険しい。そりゃあ、施しを受ける身にとっては、それを大声で言われるのは嫌なものですからね。
忝: ……もしかして、そう名乗ってしまったか?
P1: うむ。確か、名は丙衛門。
忝: そちらはそのままで良いのでござるが、拙者はあの出来事以来、姓を「浦島」に変えたのでござった。以後、浦島でよろしくお頼み申す。
P1: わかった。では、浦島殿、これを。
>パンツイッチョマンが差し出した椀を片手で拝み、もう片方の手で受け取る忝い侍。そして、もちろん――
忝: 忝い。
>食料を手にするや否や、その場に座り込み、手づかみでむさぼり食べる忝い侍。そこに、どこか緊張感のない女性の声が掛かった。
女性: あ、その人、パンツイッチョマンさんのお知り合いの方でしたかぁ。不審者と思って、通報しちゃいました~。
>そう言ったのは、銀子先生とは違うもう一人の女性保育士。これはパンツ筋肉マンの登場時に出てきた方ですね。あの時は、散々「警察に連絡したらいいのかな」と銀子先生に聞いていましたが、今回は自分で判断して連絡していたようです。しかし、それはパンツイッチョマンにとっては痛いのではないでしょうか?
P1: なぬ!?
>あ、やっぱり、良くなかったようです。穏やかだった雰囲気を固くすると、パンツイッチョマンが周囲を見回した。すると、土手の上から降りて来る制服の二人が……どうやら、もう時間がないようです。って、放送時間もこれでおしまいですね。
>迫る警察、どうするパンツイッチョマン!!




