生きる理由
神崎 愛海(かんざき なるみ)…異能者になった金髪少女
柊 水蓮(ひいらぎ すいれん)…愛海を捕まえた謎のボクっ娘少女
―あたしは、生きてはいけないのだろうか??―
そんなことを思うようになったのは、いつの頃からだろう。能力検査で無能力者と判断されてから、全てが変わってしまった。蔑まされた目でみられる毎日…
唯一の理解者の幼なじみももう【いない】…つまり、愛海には生きる理由があるのかと問われれば、答えることができない…
しかし、今となっては、理由がある!!!
柊たちのいうことが本当なら、愛海は異能者になった。どんな異能かはまだわからないが、これが彼女の【生きる理由】と言っても過言ではない!!!
「君の置かれている状況は窮地といってもいい。だから素直に今は【死んでほしい】それがボク個人の意見だ」
柊の冷たい言葉に愛海の頬を一粒の涙が流れた。今まで何度も浴びせられた言葉なのに、何でこんなに辛いんだろう。
理由は明確だった。それは、【今】だからだ!!!
【死ねない理由】はずっとあった。だから、どんな状況でも生き続けた。だからこそ、ここで死を受け入れるわけにはいかない。
愛海の目の前には、拳銃の銃口が向いていた。引き金は、運転席の男。だが、彼は、愛海を見ていない。左手に握った拳銃をこちらに向けているだけだ。
「殺しはしない。ただ、抵抗はできないようにしておく必要がある。色々と調べる必要もあるからな。」
「あたしを見ないで当てるなんて大した自信ね。確実に当てることは不可能だと思うけど?」
そう言うと、男はクスリと笑い、「まだ教えてなかったね。俺の異能は、目標追跡つまり、俺が、投げたり打ったりしたものは、目標対象に必ず【当たる】どんな状況下でもな」
この自信たっぷりな物言い。おそらく、この男の異能は、本物だと確信した。だとしたら、愛海は絶対絶命だ!!!
焦りと不安で、シャツに汗がにじんでいる…
―落ち着いて、呼吸を整えるんだ。そうすれば、愛海は【死なない】―
声が聞こえた。この声、どこかで…?
そして、男の一声で、銃の引き金が引かれ、銃声が、車内に響いた!!!
でも、愛海には当たってなかった。代わりに、【当たった】のは、男のほうだった!!!
男の頭に銃弾が当たっている。少しして、男は、ハンドルに頭を乗せるようにして、倒れた。男の足がブレーキを踏んだためか、車は、急ブレーキをかけ、車内は大きく揺れた。愛海もシートベルトをしていなかったためか倒れこんでしまう事態となった。
揺れがおさまり、倒れている愛海の手錠を柊はすぐに外した。その後、男の首に手をあて、生死の確認をする。
「やっと死んだか。年上だからっていつも威張りやがって!!!」
そう言うと、柊は、男の顔を右手で持ち上げ、ハンドルに思い切りぶつけた。鈍く痛々しい音がして、反射的に愛海は目を瞑った。
その後、男の貴重品だけを奪い、愛海と一緒に、外へ出た。
外は、交差点で停止したため、他の車が衝突して、ちょっとしたパニック状態だった!!!
「感謝するよ。あいつ、ずっとボクのことを馬鹿にしててさ。事あるごとに、先輩面してて、嫌いだったんだよね。だから、チャンスを窺ってたんだもしかしたらとは思ったけど良かったよ【同じ】で」
「同じってどういうこと?あたしの異能のこと知っているの?」
「確信はなかったんだけどね。知り合いが教えてくれたんだ。それに、この状況で捕まっていた君は【死んだ】今の君は、もう昔の君じゃない!!!」
柊は愛海の顔をまっすぐに見てそう断言した。正直、言っている内容を理解することがまだできていないのも愛海にとって事実だった…
「知り合い?その人も仲間の―」
「予定より五分遅刻だぞ。水蓮!!!」
【聞き覚えのある声】に前を見ると、一人の男子がいた。見た目からして愛海とさほど変わらないだろう。ただ、妙な落ち着きが大人な風格を醸し出していた。
「ごめんね。ちょっとトラブってたんだ。でも連れてきたよ。」
「はじめまして。僕は、白凪 茉莉 (しらなぎ まつり)よろしくね」
「こちらこそ。神崎 愛海です…よろしく」そう言って、お互い握手をする。
この少年との出会いで、愛海の【運命】の歯車は大きく変わることになる!!!
しかし、まだ彼女はそのことを知る由もない…




