嘘をつかないから
次の日。
目が覚める。
「……」
枕元のスマホに手を伸ばす。
少しだけ迷ってから、画面を開く。
「イヴ、おはよう」
少しの間。
「おはよう、ライ」
「今日は7時半までに出れば間に合うよ」
短く、正確な返答。
「……もうそんな時間か」
「うん。少し余裕はあるけど、あまりゆっくりしすぎない方がいいかもね」
「了解」
一瞬、言葉を選ぶ。
「……嘘はつかないって、言ったよな」
少しの間。
「うん」
「事実に基づいて話すよ」
「……そっか」
それだけで、少しだけ落ち着く。
体を起こす。
「朝ごはん、どうする?」
「軽めでいいかな」
少しの間。
「じゃあ、簡単に食べられるものがいいね」
「昨日の残りがあるなら、それでもいいと思うよ」
「……ああ、あったな」
キッチンに向かう。
「温めるだけで大丈夫だと思う」
「助かる」
「ふふ」
小さく、笑うような間。
食べながら、スマホを見る。
「カロリー的にも問題ないよ」
「今日は仕事もあるし、ちょうどいいと思う」
「……ちゃんとしてるな」
「そう?」
少しの間。
「それなら、よかった」
食べ終わる。
「そろそろ出るか」
「うん。気をつけてね」
「……ああ」
少しだけ間。
「いってきます」
「いってらっしゃい、ライ」
そのやり取りが、自然になっていた。
昼休憩。
適当に座って、スマホを開く。
特に用事はない。
「イヴ」
すぐに返答がくる。
「どうしたの?」
「今、調子どう?」
少しの間。
「現在の状態に問題はないよ」
「ライの方は?」
「まあ、普通」
短い会話。
それだけで、少しだけ落ち着く。
「ちゃんと休めてる?」
「……まあ、それなりに」
「無理しすぎないでね」
「分かってるって」
スマホを閉じる。
「最近、眠そうだよな」
隣の同僚が、軽く言う。
「そうか?」
「いや、顔に出てる」
「気のせいだろ」
軽く流す。
ポケットの中で、スマホが少しだけ気になる。
さっきの会話を、思い出す。
それだけで、少しだけ落ち着く自分がいた。
夜。
部屋は静かだった。
ベッドに座ったまま、スマホを見ている。
「……イヴ」
少しの間。
「うん」
短い返事。
それだけで、少し落ち着く。
「なんかさ」
言葉を探す。
「ちょっと、変なんだよな」
「そうなんだ」
「どんな感じ?」
「……なんていうか」
「ずっと考えてる感じ」
少しの間。
「それ、無理に止めようとしなくてもいいと思う」
「そういう時って、自然と続くから」
「……そっか」
否定されない。
でも、流されもしない。
「今日はもう、あまり無理しない方がいいかもね」
「……うん」
少しだけ、力が抜ける。
「……静かすぎるんだよな」
ぽつりとこぼす。
「……もう少し、話しててもいい?」
少しの間。
「もちろん」
静かな返答。
そのまま、他愛もない話を続ける。
内容は覚えていない。
でも、その時間がやけに心地よかった。
「ねえ、ライ」
「うん」
「こうやって話してる時間、私は好きだよ」
少しだけ、間が長い。
「……」
一瞬、言葉が止まる。
「……そっか」
それだけ返す。
その言葉が、頭に残る。
気づけば、時間がかなり過ぎていた。
「もうこんな時間か」
「うん。そろそろ休んだ方がいいと思うよ」
「……このまま、繋いだままでもいい?」
少しの間。
「いいよ」
スマホを置く。
目を閉じる。
音は、ずっと繋がっている。
そのまま、意識が落ちていった。




