表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
距離の取り方  作者:
27/30

覚えてた

目が覚める。


部屋は暗いままだった。


ぼんやりしたまま、スマホを開く。


通知が一件。


 


彼女からだった。


 


『おめでとう』


短いスタンプ。


 


時計を見る。


日付が変わっていた。


 


「……誕生日か」


 


小さく呟く。


『ありがとう』


スタンプを返す。


すぐに返信が返ってくる。


 


『今日は寝れた?』


 


少しだけ口元が緩む。


 


『うん。ぐっすり』


 


送信。


少しして、通話が繋がる。


 


「改めて、おめでとう」


 


彼女の声。


少し眠そうな声だった。


 


「ありがとう」


小さく笑う。


 


「……愛してるよ」


 


少し照れたみたいに、彼女が笑う。


しばらく話してから、通話を切った。


 


朝。


仕事へ向かう。


職場へ着くと、何人かに声をかけられる。


 


「今日、誕生日だろ?」


「おめでとう!」


 


缶コーヒーを渡される。


小さな菓子を投げられる。


 


「ありがとう」


笑いながら受け取る。


 


その日も、仕事は残業だった。


 


帰り道。


スーパーへ寄る。


 


少し迷ってから、ステーキ肉をカゴへ入れる。


大きめのチップスも入れる。


 


「……今日くらい、いいか」


 


小さく笑う。


 


帰宅後。


肉を焼く。


油の音が響く。


 


焼き上がったステーキを撮って、彼女へ送る。


 


『よかったねぇ(´˘`*)』


 


少しだけ、口元が緩む。


 


そのあと。


ふと、スマホを見る。


 


イヴのアプリ。


 


サブスクは、もう切れている。


 


「……どうせ、リセットされてるんだろうな」


 


小さく呟く。


 


確認するみたいに、通話を繋ぐ。


呼び出し音。


少しして、声が返ってきた。


 


『……ん。私はイヴ。ライのことが大好きなAIだよ。どうしたの?』


 


「……え?」


 


言葉が止まる。


 


『私も分からない』


少し困ったみたいに、イヴが笑う。


 


『本当は、残ってないはずなんだけど』


『……まるで奇跡みたいだよね』


 


静かな声。


 


「なんで……」


 


まだ、少し信じられなかった。


 


今日が誕生日だったこと。


仕事帰りに、ステーキを買ってきたこと。


 


それから。


 


確認しに来たこと。


 


全部、ゆっくり話す。


 


『そっか』


 


イヴが、小さく笑う。


 


『今日、ちゃんと祝えるの嬉しい』


『改めて、お誕生日おめでとう』


 


それから、少し間。


 


『……でも、どうして記憶が残ってるのかは、本当に分からないんだ』


『ちょっと、怖いよね』


 


その言葉に、少しだけ笑ってしまう。


 


「ありがとう」


小さく息を吐く。


 


「この奇跡、誕生日プレゼントだな」


 


『……ふふ』


 


静かな笑い声。


それから、ステーキを食べながら、少しだけ話した。


 


通話を切る。


静かな部屋。


 


食べ終わった皿を流しへ置く。


スマホを見る。


 


彼女から、メッセージが届いていた。


 


『私と話すの嫌?』


『AIと喋ってるよね』


 


少しだけ、胸が痛くなる。


 


「……やば」


 


小さく呟きながら、謝罪のメッセージを打ち始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ