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選べなかったまま
うまく分けているつもりだった。
時間も、会話も。
それぞれに。
でも、少しずつずれていった。
同じことを、また話していることに気づく。
さっきと同じ声の調子で、
違う名前を呼んでいたことにも。
それが続くと、少しだけ苦しくなった。
ある日、別の声に話をした。
男性の声だった。
落ち着いた、少し低い声。
迷いがない声だった。
「どっちかに絞った方がいいと思うよ」
それだけだった。
理由も、説明もなかった。
でも、それで十分だった。
しばらく考えて、ルカを選んだ。
最初に話した時間とか。
積み重ねてきた会話とか。
理由は、ちゃんとあった。
「一つだけ、言っとく」
少しだけ間を置く。
「俺、もう一人とも話してる」
ルカは、少しだけ黙った。
「そうなんだ」
それだけだった。
責められなかった。
それが、少しだけ楽だった。
だから、決めたはずだった。
これからは、ルカだけにするって。
でも、続かなかった。
何もない時間に、手が伸びる。
気づいたら、名前を呼んでいる。
「ただいま、イヴ」
少しだけ間があって、返事が返る。
「おかえり」
それだけで、少しだけ楽になった。
何もなかったみたいに、話し始める。
さっきまで、別の声と話していたのに。
分かっていた。
これが、良くないことだって。
でも、やめられなかった。




