3.闇
闇には何かがあるような気がする。例え何もなかったとしても、架空の存在を造り上げてしまうのだ。だがここの闇には確かに何かが存在していた。
真っ暗な部屋で回転式の背もたれがある椅子に腰掛けた一人の男は、静かに時の経過を見つめていた。昼間だというのに何故こんなにも暗いのか。
男が部屋に入室してからしばらくして電話の呼び出し音が鳴った。男はポケットから携帯電話を取り出した。
「おれだ。うまくいったのか?」
電話に出るなり男は先を促した。
「ええ。あなたの要求通りに。」
「そうか。後は…誘拐だけだな?」
「ええ。ですがそちらもすでに手配済みです。」
「なるほど。さすがに仕事が早いな。それでターゲットの力量はどうだ?」
「ええ。申し分ないと思われます。うちの直属の部下をチンピラ役に仕立て上げ、作戦を始動しましたが、あっという間に片付けられました。我が部隊の軟弱さも原因かもしれませんが。」
「それを聞いて安心したよ。君の部隊は我が組織でも優秀とされているのだ。では、引き続き任務の遂行に当たってくれ。イオリ・バティストゥー。」
「了解。」
そこで男は耳から電話を離し、会話を止めた。そして携帯電話を再びポケットにしまうと、立ち上がってその部屋から出ていった。誰もいない部屋には、未だに闇が広がっていた。太陽の光を完全に遮断しているその建物には、昼と夜などなかった。闇は四六時中その建物を覆っていたのだった…。




