表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙(そら)の果てまでかっ飛ばせ! 私立サイハテ高校の規格外ナイン〜普通の高校野球がしたいのに、対戦相手が全員人外です〜  作者: 明石竜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/7

第7球 魔学野球! シャッフルされる守備位置と理不尽をブチ破る錨

 ベスト4進出をかけた地区大会準々決勝。マネージャーのほのかが、怪しく発光するスコアブックを突き出し、半泣きで俺のユニフォームにしがみついていた。

「……ちょっと、大河。スコアブックの文字が、さっきから勝手に『古代ルーン文字』に書き換わっちゃうんだけど!」

「俺のアイアン・アンカーも、さっきからなぜか『トカゲの尻尾』に変えられそうになってるんだよ!」

 俺は、愛用の三十キロの錨型バットを必死に握りしめ、妙な紫色の霧が立ち込めるグラウンドを睨みつけた。

「見せて」

 ベンチにいた暦へ、ほのかは怪しく光るページを向けた。

「読めるの、暦さん?」

「古代ルーン文字なら読めるわ。『一回表、ゼット、見逃し三振』」

 暦が眼鏡を押し上げて読み上げる。

「試合が始まる前から書かれてる!」

「その下に『マネージャー、胃薬を二錠服用』ともあるわ」

「そこまで予言しなくていいのよ!」


 暦はスコアブックから視線を上げると、隣に置いていたノートPCを引き寄せた。

 画面には、魔法の妨害電波による激しいノイズが走っている。

「ふん、時空転移と物質変換の複合結界ね」

 暦はバグりかけたノートPCをペンペンと叩きながら冷徹に言った。

「対戦相手は『私立・メルヘン魔術高校』。世界魔術連盟の認可を受けた、本物の魔法使い(マギ)だけで構成されたチームよ。彼らは物理法則を書き換え、野球の概念そのものをファンタジーへと変貌させるわ」

「フン、魔術ね」

 セカンドのルナが、銀髪のツインテールを揺らしながら、右腕の魔グラブ『ギャラクシー・ボイド』の出力を確認していた。

「暗殺ギルドの任務で、悪魔召喚師をサバ折りにしたこともあるわ。彼らの呪文が完成する前に、全員の顎を砕いてあげる」

「ガハハ! 没収試合になるから顎を砕くな!」

 冴子監督が一升瓶(中身はハーブティー)をベンチに叩きつけ、俺たちのケツをノックバットのグリップで小突いた。

「いいかタコドモ! 相手が魔法陣なら、こっちは物理法則の弾丸だ! 大河、テメェの錨で、あの胡散臭いホ〇ワーツもどきを更地にしてきやがれ!」


『プレイボール(ポータルの音)!!』

 不気味に響く審判のコールと共に、単行本第1巻のクライマックスにふさわしい「理不尽魔学野球」の幕が上がった。

 一回表。サイハテ高校の攻撃。

 マウンドに立つ魔術高校のピッチャーは、とんがり帽子を被り、長い杖をバットの代わりに持った美少年『マギ・レオン』。彼は不敵に微笑むと、帽子から白球を取り出し、呪文を唱えた。

「開け、混沌のカオス・ゲート!」

 シュッ、と放たれた球は、キャッチャーミットの手前で突如として『小さなワープホール』に吸い込まれた。

 そして次の瞬間、先頭バッターの宇宙人・ゼットの『真後ろ(バックネット裏)』から

球が飛び出してきた。

『ストラーイク!』

「なっ!? 空間跳躍ワープか!?」

 ゼットが四つの目を剥く。後ろからストライクゾーンを通過する魔球など、打てるわけがない。ゼットはあえなく見逃し三振。

 続く二番、ルナ。

「軌道が変わる前に、放たれた瞬間を叩く!」

 ルナが暗殺者の反射神経で、ワープする直前の白球を完璧に捉えた。

 キィィィン! と快音が響き、打球はレフト線ギリギリのフェアゾーンへと鋭く飛んでいく。

「よし、長打コース!」

 ほのかが声をあげる。だが、マギ・レオンがニヤリと笑い、パチンと指を鳴らした。

「『位置置換チェンジ・フォーメーション』!」

 その瞬間、グラウンドに巨大な魔法陣が展開。なんと、レフトを守っていた魔術高校の選手が、打球が落ちる位置へ『瞬間移動テレポート』したのだ。

 それだけではない。ライトを守っていた選手がサードへ、セカンドがセンターへと、守備位置がデタラメにシャッフルされていた。

「嘘でしょ!? 守備位置が瞬間移動した!」

 ほのかが絶叫する。

 あらかじめ落下地点にワープしていたレフトに球をキャッチされ、ルナはレフトフライに倒れた。


「……我、バナナは別に好きではないぞ」

「そこは食いつかないんだ!」

 俺はベンチから思わず叫んだ。

「ライオンであるからな」

「急に動物学だけ正確に戻るなよ!」

 三番のライオン人間・獅子王も、打席に入った瞬間にバットを「極太のバナナ」に変えられてしまい、戸惑っている間に見逃し三振。

 サイハテ高校は、魔法の理不尽なルール改変の前に、手も足も出ず無得点に終わった。

 一回裏。魔術高校の攻撃。マウンドには、我が校のエース(宇宙人)、ゼット。

『ワタシの、重力球、魔法すらも、吸い込む……』

 ゼットが『重力崩壊球グラビティ・フォール』を投じる。

 しかし、魔術高校のバッターがバット(風の杖)を一閃すると、球の周りの重力が反転。

「『重力反転グラビティ・リバース』!」

 球はバットに当たってもいないのに、勝手に上空へとフワフワと舞い上がり、そのまま風に乗って外野フェンスを越えていってしまった。

 ホームランである。

 さらに、守備では、キャッチャーのType-99がセカンドへ送球しようとした瞬間、ボールが『喋るカエル』に変身。

『警告。生命体の送球は、高野連の動物愛護の精神に反します』

「いいから投げて!」

 ほのかが叫んだ。

『ケロッ! 僕にも家族がいるんだぞ!』

 カエルになった白球が、Type-99の手の中で抗議した。

「ボール側からも抗議された!」

『送球を正式に中止します』

「九十九、カエルの意見を尊重しすぎ!」

 Type-99の安全回路が作動して送球不能に。


 気がつけば、三回を終わってスコアは「5対0」。

 完璧に魔法に支配されたグラウンドで、サイハテ高校は完全に翻弄されていた。

「クソッ……! 打てばワープされる、守れば重力を変えられる……。こんなの野球じゃねえよ!」

 ベンチに戻った俺は、アイアン・アンカーを握りしめ、悔しさに唇を噛んだ。

「大河、取り乱すのはデータの無駄よ」

 暦がバグったPCを再起動させ、不敵な魔女のような笑みを浮かべた。

「彼らの魔法の正体を完全に解析したわ。空間跳躍も位置置換も、すべてはグラウンドの地中に埋め込まれた『魔力の供給ライン(レイライン)』を起点に発動している。つまり、その大元の回路を『物理的に叩き割れば』、すべての魔法は強制解除されるわ」

「魔力の回路を叩き割るって……どうやって?」

 ほのかが目を丸くする。

「大河のあのバットなら可能よ。あんたのバットの質量は三十キロ、かつ、あんたのフルスイングから生み出される運動エネルギーは、中規模の地震に匹敵するわ。……大河、次の打席、グラウンドの『コア』を狙いなさい」

「よっしゃ……! ファンタジーだか何だか知らねえが、俺の錨は、世界のことわりごと引き揚げるためにあるんだよ!」

 俺は不敵に笑い、アイアン・アンカーを肩に担ぎ直した。

 五回表。サイハテ高校の攻撃。二死満塁のチャンス。バッターボックスには、俺。マウンドのマギ・レオンが、長い杖を構えて嘲笑う。

「諦めなよ、野蛮な地球人。僕たちの魔法の世界線では、君たちの勝利の確率は0%だ」

 レオンが放った最後の魔球――空間を幾重にも歪める『終焉のワープ魔球オメガ・ポータル』が、禍々しい紫の光を放ちながら迫る。

(確率だの世界線だの……そんなもん、俺のフルスイングでブチ破る!!)

 俺はアイアン・アンカーのグリップを限界まで握り締め、背中の筋肉を爆発させた。そして、迫りくるワープ球を打つのではなく、バットを思い切り『ホームベースの真下の地面』に向けて、地球の中心を叩き割る気迫で振り下ろした。

「喰らえ! 錨ヶ崎家秘伝――アイアン・アンカー・グランドクラッシュォォォ!!!」

 ズガァァァァァァァァァン!!!!!  

 球場全体、いや、周囲の空間そのものが割れるような、凄まじい大爆発音が轟いた。

 三十キロの錨型バットが地面を直撃した瞬間、超絶的な衝撃波が地中を伝わり、魔術高校がグラウンドに張り巡らせていた「魔力の供給ライン」を、文字通り『力ずくで粉砕』した。

 バリバリバリ!

 とガラスが割れるような音がして、球場を覆っていた紫色の霧が一瞬で霧散する。

「な、何だって!? 僕たちの魔法結界が、ただの腕力で破壊されただと!?」

 マギ・レオンがとんがり帽子を落として驚愕する。

 結界が消えたことで、空間跳躍の途中で迷子になっていた『本物の白球』が、マウンドとホームベースの真ん中で、無防備にポツンと静止した。

「魔法が解けたら、ただのヘロヘロ球じゃねえか!!」

 俺は地面に突き刺さったアンカーバットを強引に引き抜き、独楽のように体を高速回転させ、その白球を真芯で完璧に捉えた。

 ドッゴォォォォォン!!

 これまでにない、正真正銘の『最強の破壊音』が響き渡った。

 放たれた白球は、魔術高校の選手たちが瞬間移動する隙すら与えず、光の速度で一二塁間を真っ二つに裂き、バックスクリーンを粉砕して遥か彼方の夜空――いや、夏の太陽の向こう側へと消え去っていった。

 逆転サヨナラ満塁場外ホームラン。

『6対5』。サイハテ高校、奇跡の大逆転勝利でベスト4進出!

「やった、やったああああ! 大河、本当に魔法を破っちゃった!」

ほのかがグラウンドに飛び出してきて、俺の首に思い切り抱きついた。興奮して胸が当たって……いや、今は勝利の余韻に浸ろう。

「ふん、私の計算通りね。どんな神秘も、圧倒的な質量と運動エネルギーの前にはただのペテンよ」

 暦が満足げにメガネをクイと上げた。

 マウンドでは、マギ・レオンが膝をつき、自分の杖が真っ二つに折れているのを見て呆然としていた。

「負けたよ……。僕たちの魔学を上回る、これが地球の……いや、サイハテ高校の『カオス(熱量)』か……」

「ガハハハハ! ベスト4進出だ!」

 冴子監督が一升瓶を掲げて吼えた。

「よし、このままの勢いで準決勝、決勝もぶちのめして甲子園に行くぞ! 覚悟しやがれ、テメェら!」

 サイハテ高校の全員が、拳を突き上げた。

「おおおおお!」

 その直後、Type-99の胸部から一枚の紙が吐き出された。

『高野連から回答が届きました。宇宙人、獣人、アンドロイド、暗殺者の選手登録について、再審査が必要とのことです』

「ここまで勝って、今さら出場資格の話ぃぃぃ!?」

 俺の絶叫とともに、地区大会はベスト4へ突入するのだった。

(第7球・了――単行本第1巻想定、ゲームセット!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ