第1話「未来からの通知」
新連載です!
頑張ります!
朝、目が覚めるとスマホに通知が来ていた。
「今日の指示:その席には座るな」
差出人は――未来の自分。
意味がわからない。
けど、画面を閉じることもできなかった。
こういう“意味のわからないこと”を放置するのは、嫌いだ。
見落としがあるかもしれないし、あとで困るかもしれない。
小さなミスで後悔するのは、もう嫌だった。
「……とりあえず、覚えとくか」
どうせ大した意味はない。
でも、頭の片隅には置いておく。
そういうのが、一番安全だ。
教室に入ると、いつも通りの朝だった。
騒がしい声。
机を叩く音。
誰かが笑っている。
変わらない日常。
自分の席も、いつも通りそこにある。
けど――
『その席には座るな』
頭の奥に、あの言葉が引っかかる。
「……気にしすぎか」
小さく呟いて、席に向かおうとして――止まった。
ほんの一瞬だけ、迷う。
座るだけだ。
いつも通りにすればいい。
それが一番、安全で、正しい。
なのに。
「……」
足が動かない。
理由はわからない。
ただ、“無視していいのか”という感覚だけが残る。
間違えなければ、それでいい。
そうやって選んできたはずだった。
なのに今は、その“正しさ”がわからない。
その時、ふと昨日のことを思い出した。
昼休み、どっちのグループで食べるか迷って――
なんとなく、いつもと違う方を選んだ。
それだけのことだった。
けど、空気は少しだけ噛み合わなくて、
会話も途切れがちで、妙に居心地が悪かった。
「やっぱり、いつも通りにしておけばよかった」
帰り道で、そんなことを何度も考えた。
誰も気にしていないような、小さなこと。
それでも。
――ああいう“ズレ”は、もう味わいたくない。
「……先に、飲み物でも買うか」
誰に言うでもなく呟いて、教室を出る。
ただの気まぐれ。
本当に、それだけのはずだった。
廊下の自販機で、適当に飲み物を買う。
キャップを開けながら、さっきの自分の行動を思い返す。
「……考えすぎだろ」
小さく笑って、教室に戻ろうとした、その時。
ドンッ、と鈍い音が響いた。
教室の方からだった。
ざわざわとした声が一気に広がる。
「え、何の音!?」
「やばくね?」
嫌な予感がして、足が速くなる。
教室のドアを開けると――
ガラスの破片が、床一面に散らばっていた。
天井から落ちた蛍光灯が、粉々に砕けている。
自分の席のすぐ上だった。
「……は?」
思考が止まる。
あと数分、いや、数十秒早く教室に入っていたら。
いつも通り、あの席に座っていたら。
確実に、直撃していた。
喉がひゅっと鳴る。
現実感がない。
ただ、心臓の音だけがやけに大きく響いていた。
震える手で、スマホを取り出す。
画面を開く。
新しいメッセージが届いていた。
『その選択は正しかった』
息が止まる。
偶然じゃない。
これは――
ゆっくりと、画面をスクロールする。
追加された一文が、目に入る。
『次の指示:その友達とは距離を置け』
一瞬、意味が理解できなかった。
友達?
誰のことだ。
頭の中で、いくつかの顔が浮かぶ。
その中の一人――一番よく話す相手の顔が、なぜか強く残った。
「……なんで」
思わず、声が漏れる。
さっきまでの“正しさ”が、今はただ気味の悪いものに変わっていた。
正しいはずなのに。
従えばいいはずなのに。
なのに――
胸の奥が、ざわつく。
スマホの画面が、やけに明るく見えた。




