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フォルドウ  作者: お寿司


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幕間② バンカーバスター

二〇二五年六月二十二日。日曜日。


霞が関合同庁舎六号館B棟。地下二階。


蛍光灯が明滅していた。安定器を交換しない限り直らない。柏木真帆はもうその光に慣れていた。


朝八時。柏木はデスクでCNNのライブフィードを見ていた。六月十三日のイスラエル空爆以降、公安調査庁の中東セクションは残業が常態化している。この十日間で、柏木は家に帰ったのは三回だ。


画面が切り替わった。速報テロップ。


「BREAKING: U.S. Air Force strikes Iranian nuclear facility at Fordow」


柏木のコーヒーが止まった。缶を持つ手が、口元の手前で。


B-2スピリット爆撃機。ミズーリ州ホワイトマン空軍基地から十八時間連続飛行。七機。フォルドウ核施設に、GBU-57 MOP——大規模貫通爆弾——を十二発投下。


MOP。質量約一三・六トン。世界最大の非核爆弾。ステルス爆撃機でしか運搬できない。


画面にフォルドウの衛星画像が映った。山肌に巨大なクレーター。岩石が吹き飛ばされ、茶色の地肌が露出している。


柏木は衛星画像をダウンロードした。解像度の高い画像はCIAカウンターパートから午後に届くはずだ。だがCNNの映像だけでも——。


画像を拡大した。クレーターの深さ。岩盤の色。


指が止まった。


クレーターは深い。だが——


「貫通してない」


声に出していた。


隣のデスクの市川が顔を上げた。「何だって?」


「フォルドウの遠心分離施設は、山の岩盤下八十メートルにあります。この岩盤は玄武岩と流紋岩の互層構造で、圧縮強度は——」


柏木は計算した。MOPの貫通能力は強化コンクリートで六十メートル。だがフォルドウの岩盤は天然の玄武岩だ。コンクリートより硬い。


「十二発を同一地点に重ねても、貫通深度は最大四十メートル前後。施設本体に届いていない可能性が高い」


市川が画面を覗き込んだ。「つまり?」


「世界最強の通常爆弾を十二発落としても——フォルドウは壊せない」


柏木はモニターに向き直った。クレーターの画像を拡大する。爆発で剥き出しになった岩盤の断面。褐色の玄武岩。緻密な結晶構造。


画面を閉じようとして、もう一度開いた。


市川が立ち上がった。「局長に報告する。分析レポートを一時間で出してくれ」


「了解です」


柏木は分析に取りかかった。フォルドウの建設データ。IAEAの過去の査察報告書。公開されている地質調査データ。CIAカウンターパートの添付にペルシャ湾の船舶動向変化も含まれていた。フォルドウが先だ。


並行して、別の画面が開いている。邦人安否確認リスト。


空爆以降、毎日更新されている邦人安否確認リスト。在テヘラン大使館経由。全員の無事が確認されている。


柏木はリストをスクロールした。


——遠山 悟。在テヘラン。無事確認済。


チェックを入れた。


ファイルを閉じた。


蛍光灯が明滅した。柏木はモニターに向き直った。フォルドウの岩盤断面。八十メートル。


爆弾では止められない。


レポートを上げる。局長から安保局へ。安保局からNSC(国家安全保障会議)へ。たどり着く頃には「引き続き注視」の六文字になっている。

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