第53話 4人目の獲物②
「そういえば、東宮ってモデルみたいなことしてるよね? たしか触れ込みは、現役女子高生、武道家モデルだっけ?」
センスのないネーミングだとは思うが、彩葉は合気道をしていて、大会などにも出ている実力者だ。お嬢様然としたあの容姿だからな。究極のギャップ萌えなのだろう。
花鈴は興味がなさそうに答えた。
「してるね」
「そっち方面で何か秘密とかないの? たとえば、本当は武術は素人だったり」
「……さぁ、知りません。疑うなら、自分で試してみたら?」
花鈴は腕を組んだ。
人は相手に警戒した時に身体を閉じる。腕を組んだり、足を組んだりするのは、典型的な所作だ。
(これ以上は引き出せないか)
俺は花鈴に報酬を渡して、家に帰った。
帰り道、珠凛が手を繋いできた。
「花鈴ちゃん、あのパンツ、すごく喜んでたね。でも、ちょっと怖かった」
たしかに、あの目つき。
脳の中でドーパミンが濁流になってそうだ。
「そうだな。まさか咲姉に確認することはないだろうし、完全犯罪だぜっ」
俺はピースサインを作った。
「でもね、きっと花鈴ちゃん、あのパンツを嗅いだりするよ。たぶん、履いて1人エッチも。それって蒼空クンの匂いでしてるってことだし。……それって、蒼空クンと花鈴ちゃんのアソコが間接的に触れ合うってことだし。ちょっと。むぅ。……すごいヤキモチかも」
って、この人、すごい想像力だな。
たしかに、究極的に拡大解釈すれば、そういうプレイもあるのかも知れないが。
……真実を知ったら花鈴は、気絶するくらいショックを受けそうだ。少し可哀想な気もする。
「じゃあ、今度会った時に、ホントのこと教えてみる?」
俺の言葉に、珠凛は目を細めた。
「それ、ただの嫌がらせだよ……、知らないままの方が幸せ。蒼空クンのドエスっ!!」
俺は家に帰ると、彩葉のSNSを念入りに調べた。すると、リア友と思われる一部のコメントで、何か脈略がない文章を読まされているような違和感を覚えた。
(恐らく、彩葉には裏アカウントがある)
裏にしていることには理由があるハズだ。そこを調べてみるか。
って。
さっきから珠凛がまとわりついてくる……。
「蒼空クンが彩葉ちゃんのことばっかりで、つまらないぃ」とのことらしい。
しばらく放置しておいたら、俺のズボンを下げて、勝手に口で奉仕し始めた。
「相手してほしかったら、本気だしてみて」
俺がそう言うと、珠凛の眉が吊り上がった。
挑発されたと思ったらしい。
「わかった!! 後悔しても知らないんだからっ」
(どこのツンデレだよ(笑))
珠凛が口をぐーっと大きく開いた。
(こ、これは……。すごい)
やはり、珠凛がダントツの一番だ。
俺は2人しか知らないけれど。
とても考え事なんて出来そうにない。
(今日はここまででいいか)
…………。
……。
珠凛は俺の腕を枕にしている。
女の子の頭といっても、長時間はキツイ。
(重さで腕が痺れる……)
でも、この寝顔を見ていると、もう少しくらいやせ我慢してみようかな、って思うのだ。
彩葉戦のプランは大体出来上がった。
あとは、彩葉の裏アカを探して、俺に有利な形で誘い出す。
彩葉の家は、珠凛の一件で両親が離婚し、彩葉と東宮のオッサンは不仲らしい。誘い出すには、東宮のオッサンを利用するのも良いかもな。
すると、珠凛が口をむにゃむにゃと動かした。
「蒼空クン。すきすき。世界一……むにゃ」
どんな夢を見ているんだか。
でも、他の子のことを考えるのは失礼か。
俺も寝るか。
次の日、彩葉にメッセージを送った。
珠凛のスマホからだ。
「急にゴメンね。ウチのママと彩葉のパパ付き合ってたじゃん? そのことで話しておきたいことがあるんだけど……。あとね、ウチ、ホントは彩葉のこと気になってて……。珠凛」
これなら、待ち合わせ場所に融通がきくし、必要以上に警戒はされないハズだ。
男であれば、珠凛に誘われてイヤなヤツはいないだろう。女の子から見たらどうか分からないが。……うまく釣れるかな。
待ち合わせ当日になった。
指定した場所は、とあるシティホテルの一室だ。
俺の名前だったら、ここには呼び出せない。
珠凛の名前だからできることだ。そしてここは、俺にとって絶対的に有利な場所だ。
とはいえ、東宮のオッサンを連れてくる可能性もある。1人だったとしても、彩葉は合気道の有段者だ。警戒は怠らないようにしないとな。
すると、部屋のベルがなった。
時計をみると、約束の時間ピッタリだった。
俺はドアを開けた。




