↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/68

第40話 1人目のやり残し②


 カフェでコーヒーを飲みながら待つ。

 しばらくすると、山口がやってきた。


 俺は山口を許した訳ではない。

 しかし、颯に近い山口には利用価値がある。


 珠凛の誘拐の件で、俺には一つの疑問がわいた。それを聞くために山口を呼び出したのだ。


 それとは、例の珠凛誘拐の時。

 オッサンは、なぜ獄倫高校の奴らに協力したのか。


 試験前に颯は「やっぱ、裏切り者には制裁が必要だよなぁ?」みたいな事を言っていた。珠凛誘拐の件、颯の関与はほぼ間違いがない。


 でも、オッサンは?

 颯の手助けをしても、オッサンには何のメリットもない話だ。




 「悪いな」


 俺がそう言うと、山口は首を振った。

 

 「颯は小春まで巻き込みやがったからな。小春のためだ」



 珠凛から聞いたところによると、あのオッサンは、40代後半で珠凛の母親と同じ△△コーポレーションに勤務している。珠凛の母親の上司にあたり、経理部長をしているらしい。


 俺が独自に調べたところによると、オッサンには、高校生の娘がいる。それなのに、かなりの年下好きで、前に交際していた相手の娘にも手を出したことがあるらしかった。


 珠凛の件が初めてではなく、常習者。つまり、完全なクズだ。娘狙いでシンママをターゲットにしていたのだろう。家族の弱みや動画を使って珠凛を丸め込んだやり方も、やり慣れた手段なのかも知れない。


 他にも色々と興味深いことが分かった。



 「でな、蒼空」


 山口は自身もコーヒーを頼むと、湯気を眺めながら話し始めた。


 「聞かれた件なんだが……前に颯が、メンバーのオヤジがロリコンみたいなこと言っていた」


 えっ。なんで颯が珠凛の家の事情について知っているんだ?


 「つか、颯はなんでそんなこと知ってるの?」


 「さぁ? どうせ調べたんだろ。アイツ、用心深いし、櫻狼ファイブのメンバーについては色々把握してるし。珠凛がお前と付き合ってるのも面白く思って無かったみたいだぜ?」


 まぁ、それはそうか。珠凛の態度はわかりやすかったもんな。颯は珠凛と付き合っていた訳ではないみたいだが、ある意味、珠凛を俺に寝取られたかたちだ。


 しかも、相手は嫌いな俺だ。

 面白いはずがない。


 「山口、お前は何か具体的に相談されたのか?」


 「いや、僕は興味がなかったから聞いていただけだ。今回の誘拐の件も知らなかった。でも、ロリコンの話を聞いたしばらく後かな。そのオヤジに女の子をあてがってやったって」


 「好んでオッサンと付き合いたい女なんて、普通いないだろ?」


 山口は眉間に皺を寄せ、不快そうな顔をした。


 「颯に言い寄ってきていた子らしい。うまく口車にのせたみたいだな。蒼空も知ってると思うけど、あいつさ、人をその気にさせるのがうまいんだよ」


 たしかに、俺もそうだ。

 颯が本気で友達してくれてると信じ込んでいた。


 「それはそうとして、颯側の見返りは?」


 「お前の知ってる通りだよ。珠凛の弱み……動画だろ」


 その話を聞いて、俺は少し違和感を覚えた。

 颯なら、もっと直接的に、珠凛を強引に落として支配しようとするんじゃないのか?

 

 やり方が遠回りというか……気のせいだろうか。颯の行動に一貫性がない気がする。


 「もしかして、颯って、実は珠凛のこと好きなのか?」


 すると、山口は首を傾げた。


 「さぁな。もしかすると、そうなのかもな。颯のことはよく分からない」


 まぁ、でも。

 必要な情報は手に入れることができた。


 

 オッサンは、若い女欲しさに珠凛を売ったってことだ。あわよくば、その延長上で、用済みになった珠凛を手に入れようとしたのかも知れない。


 珠凛の母親には、男を見る目がないというのは本当みたいだな。


 今回の件、俺は獄倫のやつらが持っていた動画を押さえている。だから、オッサンを失脚させること自体は難しくない。だが、珠凛にあんなことをした男を、それだけで許す気はない。そいつの周りの人間もまとめて社会から抹殺してやる。



 問題は、オッサンをどうやって誘い出すかだ。

 珠凛がおとりではさすがに警戒されるだろう。

 

 しかし、まぁ、その手の輩だ。

 相手が年下な程、関心を持ちそうだな。


 

 山口と別れて、俺は小春に連絡した。



 その翌週のある夕方。

 小春を使ってオッサンを呼び出した。


 小春から偶然を装って連絡させた。小春が中学生だと分かると、オッサンは拍子抜けするほど簡単に釣れた。オッサンはそれなりの会社に勤めていて、それなりの肩書きだ。もっと賢くて警戒されると思っていたのだが……。


 前に誰かが「男は性欲が絡むとバカになる」と言っていたが、どうやら、あれは本当のことらしい。



 「小春。悪いな」


 「おにいの分も、ボクが協力しないとね」


 「俺もついてるし、怖い目には遭わせないから。って、……これじゃ、俺もやってることは颯と変わらないな」


 「全然、違うよ。前提となるボクの気持ちが違う」


 小春は手を握ってきた。


 どういうことなのだろう。

 天才児の発想はよく分からない。



 駅前の待ち合わせ場所に小春を立たせ、俺はその数メートル手前で、ベンチに座って待つ。


 小春は顔も可愛いし身体の発育もいい。

 最高の餌だ。


 すると、待ち合わせ時間の少し前にオッサンがやってきて、値踏みするように小春を見た。そして、時間ジャストになると、ニヤけながら話しかけた。


 アイツが珠凛ママの彼か。

 思った以上に貧相なオッサンだ。


 もう少しイケオジかと思っていたが、あんな男に珠凛が弄ばれたのかと思うと、改めて怒りを感じた。


 俺は聞き耳をたてる。


 「君が小春ちゃん? いやぁ、かわいいね。ほんと……お金のお悩み相談だったっけ? ここじゃ落ち着かないし、2人になれる場所いこうか?」


 小春はモジモジした。


 「あ、あの。ボク、男の人に慣れてなくて。怖いからカラオケボックスとかでも、いいですか?」


 オッサンはニヤリとした。


 「あぁ、もちろん。オジサンを信じて」


 2人は歩き出した。

 オッサンは、左手をせわしなく動かしている。どうやら、手を繋ぎたくて仕方ないらしい。


 しばらくすると、ベタベタと小春の身体を触りはじめ、手を繋いだ。


 俺は数メートル後ろで尾行し、2人の様子を録画した。


 数分歩くと、オッサンは、カラオケボックスの手前にあるラブホの前で立ち止まった。しきりに小春の手を引っ張っている。


 「あの、ボク。初めてだし、こういうの困りますっ!!」


 「いいじゃないか。どうせ君もそのつもりだったんだろう? じゃあ、五千円でどう?」


 (おいおい。ずいぶんとケチくさいな。もっと出してやれよ)


 俺はスマホの録画を止めた。


 (さて、もうこのへんでいいだろう)


 この録画をオッサンの娘に見せたら面白いことになるだろうな。想像するだけで、笑いが止まらない。


 ニヤニヤしていられるのも、もう終わりだ。

 オッサン……いや、東宮 謙三さんよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。