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第35話 尾行

 街を歩いていたら、悲鳴が上がった。

 見ると、絵世(えせ)が包丁を持って同じ所をクルクルと回っている。

 どうやら、俺に危害を加えようとしているらしい。

 迷いの魔道具が発動しているな。


「見つけたぞ! 何もかもお前のせいだ!」


 横領したのはお前だろう。

 絵世(えせ)は駆け足で同じ所をクルクルと回っている。

 絵世(えせ)は俺の所に来たいが来れないようだ。

 だがこのまま放っておくと通行人に迷惑だろうな。



「俺がやる」


 護衛に声を掛ける。


「了解」


 電撃の魔道具を起動する。

 雷球が絵世(えせ)を直撃。

 絵世(えせ)は昏倒した。


 誰かが呼んだのだろうパトカーのサイレンが聞こえてきた。


「あなたが暴漢を取り押さえたのですか?」


 パトカーから降りて来た警察官は、包丁を握って倒れている絵世(えせ)を見つけると俺に質問してきた。


「スタンガンで眠らせた。何をするか分からなかったからな」

「協力ありがとうございます。10時12分、銃刀法違反で緊急逮捕」


 絵世(えせ)は手錠を掛けられた。


「俺は行って良いかな?」

「詳しい事情を署でお願いします」


 警察に行き、絵世(えせ)の横領の話からする。

 めんどくさいが仕方ない。


 一時間ほど話して解放された。

 どうやら絵世(えせ)は殺人未遂の罪も加わるようだ。


 ニュースになっているか検索を掛けると、絵世(えせ)が刃物を振りかざしている映像がアップされていた。

 コメントを見ると、こいつは横領した奴だとの書き込みがある。

 俺が勤めていた会社の社員辺りがかき込んだのだろう。

 住所や氏名も晒されている。

 ネットは恐ろしいな。

 絵世(えせ)の家族情報まで晒された。


 他の社員から評判が悪かったからな。

 鬱憤がそうとう溜まっていたのだろう。


 会社の元同僚の有賀(ありが)に電話する。


「会社大変だろう」

『まあな。絵世(えせ)が刃物を持って暴れたと大騒ぎだ』

「知ってるよ」

絵世(えせ)は破産寸前で家も何もかも取られたらしい。色々な所から借金しまくってたらしいからな』

「それは知らなかった」

『奥さんとも離婚調停中。もともと女癖が悪かったからな』

「子供が可哀想だな」

『離婚が成立したら、奥さんの苗字に変更して暮らすのだろうな』

絵世(えせ)の奴。本当に頭が悪い」

『だいたい、横領からして、社員のほとんどは絵世(えせ)の仕業だと思ってたよ』

「上司が確認しないはずはないからな」

『ああ、その通りだ』

「また、時間があったら飲もう」

『おう、輸入したアクセサリーを忘れずにな』

「忘れてたよ。今度、持って来る」


 電話を切った。

 しかし、疑問点もある。

 俺がいる場所を絵世(えせ)はどこで知った。

 誰かに尾行させたのかな。


「尾行の気配があるか?」


 俺は護衛に話し掛けた。


「尾行は常にあります。ただ実力行使になると尾行の行動がおかしくなります」

「おかしくするのは俺がやっている」

「尾行がどこの手の者かは突きとめていません。命令されていないので。あくまで護衛が任務です」


 尾行するだけでは法律に違反しているわけじゃない。

 尾行が工作員ならスパイ容疑で捕まえてもらうのだけど。


 私立探偵とか事情も知らない下っ端だとかを捕まえると処理が面倒だ。

 コンクリート詰めにするわけにもいかない。

 俺は反社じゃないからな。


 うっとうしいが、有名税だとでも思っておくしかないな。

 たぶん公安関係者も尾行者の中にはいるような気がする。

 そういう人とドンパチしたいわけじゃない。


 そうだ。

 匿名で絵世(えせ)の奧さんと子供達に金を送ろう。

 俺は恨まれているかも知れない。

 恨まれるのは良いが、俺の良心が痛まない方向でやっていきたい。

 金を送るのは離婚が成立してからだな。

 俺が雇っている弁護士に言えば、やってくれるだろう。


 尾行を撒く魔道具を仕入れるべきか。

 認識疎外とかあると良いな。


「というわけなんだ」


 異世界でロバートに相談した。


「暗殺者御用達の魔道具は手に入れられないぞ。そういうのは禁止魔道具がほとんどだ」


 そっち方面になってしまうのか。

 インテリジェンスブックにはその手の魔道具の情報は確かにあるが、作り方は載ってない。


「法律に違反してない何かがないか」

「うーん、尾行者をどうにかしたいんだろ。探知系魔道具はどうだ。尾行者の場所が分かれば撒けるだろう」

「ああ、いいことを思いついたというか。何で思いつかなかったのかな。大ジャンプするだけで良い」

「そんなんじゃ尾行は撒けないぞ」

「俺の世界なら、それで充分だ」


 ビルの屋上にワープするようなものだもな。

 ただ、ちょっと怖い。

 ジャンプというよりジェットパックみたいな感じが良いか。


 浮遊の魔道具を手に入れた。

 長い時間浮いているのは魔力を沢山食うらしいが、魔導金属なら腐るほどある。


 護衛にも浮遊の魔道具を支給した。

 さっそく街でテストする。

 路地に入り起動。

 ふわふわと浮き上がった。

 歩く動作をするとその方向に進む。

 操作は簡単だ。


 さらに高度を上げて、ビルの屋上に到達。

 探知の魔道具の反応を見ると、尾行者は俺達を見失ったみたいだ。

 路地に入り辺りを窺う様子がビルの屋上から確認された。

 他の尾行者と思われる奴も諦めたようだ。


【都市伝説スレ・その48】


125

 おい、ビルの高さに人が浮かんでるのを見た


126

 幽霊?


127

 ダウンジャケットを着てジーパンを穿いた奴と、サングラスしたスーツ姿の奴


128

 宇宙人臭いな


129

 スーツ姿の奴はヘッドセットを着けてた


130

 動画は撮らなかったのか?


131

 一瞬だったからな


132

 ジェットパックとか使ってなかったか?


133

 分からん


134

 最近の科学なら出来る

 新電池とか使えば、重さはだいぶ軽減されるからな


135

 人が空を飛ぶ時代になったのかもな

 宇宙人でなくても出来そうだ


136

 新電池さえあれば不可能が可能だ


137

 その新電池がエイリアン技術だって何度言ったら


138

 続報を待とう


 空蝉(うつせみ)に掲示板を見せられて、人の目はそこらかしこにあると思った。

 浮遊の魔道具はここぞという時にだけ使おう。


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