第33話 エンシェントドラゴン
魔穴のそばの宿で、くつろいでいたら、モンスターの叫び声が微かに聞こえた。
「ギャャャオォォン!」
今度は叫び声がはっきり聞こえた。
「ドラゴンが出たぞ!」
ドラゴンかよ。
魔剣とどっちが強いかな。
宿から出ると火事になっている。
空中を飛んでいるドラゴンに向かって、最大出力で魔剣を解き放つ。
ドラゴンの体に光が当たって方向がそれた。
「ギャャャ!」
ドラゴンに穴が開いた感じはしない。
兵士達が到着。
矢を撃ち始めた。
矢はドラゴンに当たると連続の大爆発。
おお、異世界の兵士もなかなかやる。
「くそっ、魔導金属を使っている矢でも効果なしか」
俺が持ち込んだ1円玉が矢についているんだな。
城が吹き飛ぶ威力だと聞いたが、ドラゴンは流石に無理か。
あれっ、エリクサーを作る時ドラゴンを生きたまま捕獲したと聞いた。
「なぁ、あのドラゴンが特別強いのか? 捕まえて血を抜いたと聞いたぞ」
近くの兵士に聞いてみた。
「血を採っていたのはレッサードラゴン。これはエンシェントドラゴンだ。レッサーが赤ん坊だとすればこいつは成人ぐらいに強さが違う」
なるほど、ドラゴンにもピンキリがあるってことだな。
兵士達は魔剣を抜いたが、その光は俺の魔剣より弱い。
剣の柄には1円玉が嵌っているのが見えた。
魔剣の光の刃がドラゴンに当たりかき消される。
最終兵器みたいなのはないのか。
まあ、1円玉がそういう装備なんだと思うけど。
ドラゴンが大きく息を吸い込む。
やばい。
俺は魔穴の中に逃げ込んだ。
兵士達は大丈夫だったかな。
倉の中は火に包まれていない。
空間の裂け目を見ると、紅蓮の炎が渦巻いている。
しばらくすると炎は収まった。
恐る恐る異世界側に出る。
魔穴のそばの建物は全部焼け落ちていた。
ドラゴンはというと魔穴の近くに寝そべって呑気に寝ていた。
起こさないよう静かに歩く。
焼かれた兵士の遺体がちらほらとある。
弔ってやりたいが、ドラゴンを起こすと不味い。
しばらく我慢しててくれ。
手を合わせてから街に向かった。
街の近くに行くと、街道は脱出する人々で溢れ返っている。
そのうちドラゴンが攻めてくると口々に言っていた。
領主の館に行くと、問題なく通された。
「ダビル男爵が、エンシェントドラゴンを起こしたようだ。ろくなことをしない」
「ダビル男爵のケリをつけたんだよな」
「ああ、斬首する時に相打ちだとほざいて死んでいった。きっとドラゴンのことを言っていたんだろう。ドラゴンは魔力が高い場所を好むからな。あの魔穴に来ると計算したに違いない」
「街まで攻めてくると思うか?」
「腹が減ったら来るだろうな」
「じゃあ討伐しないとな」
「魔導金属を使った武器では刃が立たなかった」
「俺の魔剣もだ。ただ俺が使った魔剣は普通の鍛冶屋が作った物だ。一流だとは言い難い。一流の鍛冶師が作ればドラゴンも倒せるかも知れない。俺が持っている魔力は凄まじいからな」
「分かった。手配しよう」
工場を見に行くと、そこは既に無人になっていた。
まあ、あれを見れば逃げるしかないよな。
城を吹き飛ばせる武器を何十と食らってほとんど無傷だものな。
警備の人は仕事をきっちり果たしてくれたらしい。
盗まれた機材などはなくて、戸締りもしっかりしてくれたようだ。
ドラゴンを退治すればまた元通りになるさ。
領主の使いがやって来て鍛冶師が会いたいと伝えた。
鍛冶師の工房に案内される。
「エンシェントドラゴンに通用する武器を作れと言われたが、そんなの無理だ。イチエンを鋳つぶして剣を作っても無理だ」
「俺の体の魔力は1円玉よりはるかに大きい。この魔剣を見てみろ」
俺は魔剣を抜いた。
天井に穴が開き、遥か高さまで光の柱が立つ。
「くそっ、俺より凄い奴がいるじゃないか。そいつに頼め」
「まあ、分解してみろよ」
俺は魔剣を鍛冶師に渡した。
他人の作品に興味があるのか嬉々として分解。
「何だこいつは。3流の作品じゃないか。ただ持っている魔力を垂れ流しだ。その分、頑丈には作ってあるが。俺ならもっと良いのが作れる」
「今から俺の魔力光を放つ。驚くなよ」
俺は魔力光を消している指輪を抜いた。
「こいつは凄い。あんた人間か。たしかにこの魔力なら、なまくら魔剣でもたいがいの奴は倒せるよな。なるほど、お前の魔力を十分に活かした魔剣か。簡単なお題だな。無尽蔵に魔力を使えるなら威力を出すのなんて容易い」
かなり物騒な物が出来そうだが、今回使ったらドラゴンスレイヤーとして領主に保管してもらうさ。
俺以外には使えないと思うけど。
既存の剣をベースに魔剣は瞬く間にでき上がった。
「ほれ、できたぞ。試し撃ちはそうだな。月があるだろ、それに向かって撃て」
外に出て、剣を抜いて、月に狙いを定める。
魔力を流すと、光の束が絡み合いながら伸びて行き、月に当たったらしい。
魔力を止めたら、月の模様が変わっていたからだ。
凄いな。
これで勝てる。
領主の執務室で作戦会議だ。
「武器は手に入った」
「剣の銘は何だ?」
領主は変なことに気を回す。
名前なんて別に良いだろう。
「気にするのはそこ」
「兵士を鼓舞するのに名前がないと」
「ムーンブレイカー、この剣はムーンブレイカーだ」
「まるで月まで届くと言いたいようだな」
「届いたから」
「そうか。それなら勝てるな」
信じてないようだな。
まあ良いけど。
作戦会議が終わり。
あと1時間で出陣だ。
「ムーンブレイカーと使い手が我が側にある限り、エンシェントドラゴンは恐れるに足らず!」
領主が出陣の檄を飛ばす。
兵士から歓声が上がる。
さあ、サクっと行こう。




