表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/45

第十九章 消された人間たち

第十九章です。難しい内容で頭が混乱してしまうかもしれませんが、ゆっくりと読んでいただければと思います。



「グラナイト様!!」



エピドートが肩を支える。だが、王子は放心状態のままだった。



「そんな・・・・・・・彼女が・・・・・彼女が・・・・・死んだ・・・・・・?」



王子の鼓動が早くなる。息が荒い。



「そんな・・・・・・・そんなはず・・・・・・・・・」



その時、王子の瞳から一筋の涙が零れ落ちた。


「お、おい・・・・どうししまったんだよ、急に」


「・・・・さあ、俺にも分からない・・・・」


スピネルとコールは訳が分からないと言った様子で、崩れ落ちた王子を見つめる。



「っ・・・・・・・」


エピドートは肩を支えながら、王子を立ち上がらせる。


「すまない、エピドート」


「いえ、これくらい大したことありません」



「・・・・・すまないが、少し一人にさせてくれ・・・・・・」



「・・・・・分かりました」


王子は胸を押さえながらフラフラと部屋を出て行った。



「えっと・・・・・一体、王子さんはどうしたのですか?」


コールたちにそう聞かれることは分かっていたが、こんなことを言ってもいいのだろうか。とエピドートは悩んだ。

だが、遅かれ早かれいずれ話すことになるだろう。今話したほうが良さそうだ。



「その王女様というのが・・・・・グラナイト様の初恋の相手なのです」



「なっ!?」


「そんなことが・・・・・・」


二人は口をあんぐりと開けて、互いの顔を見た。


「そのお方のことを今でも忘れられず、ずっと探しておられました。ですが何の情報も得られなかったので、お二人に聞くことにしたのです」


「ですが、王女様は既に亡くなられました。もう忘れられたほうがいいかと。どこに遺体が埋められたのかも、公にされていません。今はもう、罪人なのですから」


「そうですよね、私もそう思っています。ですが、グラナイト様は・・・・・・シトリン様が、その王女様なのではないかと、思っておいでです」


「シトリンが?」


驚愕する二人にエピドートはうなずく。


「はい。王女様の面影があるとか」


「あいつはその王女のことをよく知ってるのか?」


「いえ、お会いしたのは十年前の一度きりです」


「じゃあ分かるわけねえだろ!たった一度話した相手なんだろ?しかも十年も前の話で。しかもその王女は数年前にとうに死んでるんだ」


「そうですよね・・・・・私も流石にシトリン様ではないと思います。そもそも、髪の色も違いました。シトリン様は黒ですが、王女様は綺麗な金髪でしたから」


「我らが王も、確か金髪だったからな。やはり娘の髪も同じ色だったのか」


「・・・・・そういえば」


エピドートは急に何かを思い出した。


「王女様のお名前は何というのですか?グラナイト様も私も、王女様のお名前がどうしても思い出せなくて・・・・・お名前だけでも分かれば、グラナイト様も少しは元気を取り戻せるのではないかと」


「・・・・・それは・・・・・」


コールが言いずらそうにしていたので、代わりにスピネルが答えた。



「我らが王が、王女の存在を消そうとしたからだ」



「存在を、消す?」


「ああ、滅多にそんなことは起きないんだが。モルガナイトの最も重い刑は、この国みたいにただ殺されるだけじゃねえんだ。存在をも、消されちまう」


「そうです」


コールも口を開いた。


「王に逆らった者は、生きた痕跡すらこの世に残してもらえない。今までも多くの罪人がそうやって消されてきました。ですが、誰が消されてしまったのか、それを知る者は誰一人としていません。王女様もその一人です」


「ですが、王女様の記憶は我々の中にもまだあります」


「それはお二人がモルガナイトの者ではなかったからです」


「・・・・・どういうことです?」


「我々もよくは分かりませんが、王の力は自分が統べている領土の範囲にしか通用しないのです。俺たちもモルガナイトにいた時には、王女様の存在を忘れていました。しかし、王子さんに聞かれたとき、ようやく思い出したんです」


「ああ、だが名前だけは俺らも思い出せねえ。多分時間が経つにつれて、少しずつ消された人間に関する記憶も薄くなっていってんだと思うぜ。数十年後には、完全に忘れ去られるようにな」


「つまり・・・・モルガナイト王の力によって、王女様の存在を消されてしまったが、その力の及ぶ範囲はモルガナイト内だけ。モルガナイトから一歩でも出れば、その力の影響を受けなくなるので、私たちの記憶の中には存在している。ですが、この記憶がいつまで保てるかは分からない、と」


「はい。モルガナイトを出るには王の許可が必要です。俺たちのように許可がもらえるのは、ほんの一握り。なのでどれだけ情報を探しても、何も出てこなかったのだと思いますよ」


「そうだったのですね」


エピドートは納得した。だが難しい話だ。話がどんどん複雑になっていく。


「俺は王子さんからシェルの話を聞くまで、何故生きていた者の存在を消すことができるのか理解できなかったんです。ですが、神の力があれば、そういうこともできなくはないかと」


「そうだとしても、少しおかしくはありませんか?神から授かった力は、『感情を豊かにする』作用しかないはずです。副作用や、乱用によってその他の作用を生み出すことはできても、さすがに存在を消すことはできないと思うのですが」


「はい・・・・・それについては俺も同じ考えです」


「じゃあ存在を消す方法っていうのはまた別にあるってことかよ」


スピネルが聞くと、コールは「うーん」と顎に手を当てて考え始めた。



「俺が思うに、そのヒントはもう一人のシェルが握っているかもしれません」



「三人のうちの、まだ誰なのかさえ分かってねえ奴のことか?生きてるのか死んでるのかすら分かんねーんだぜ?流石にこれから探すのなんて無理だろ?」


「私もそう思います。どこか遠くの国の人かもしれませんし・・・・・もしそうであれば捜索範囲はかなり広くなってしまうかと」


「確かに、そうですね・・・・・初代モルガナイト王、そしてマラカイト王子・・・・・何か共通点があれば、だいぶ絞り込めると思いますが・・・・・・」


「今はまだ、分かりませんね。一旦違う線で考えてみるのはどうでしょう?」



「ええ、そうしたいと思います。ですが、まずは薬を手に入れることを優先にしましょう。色々と俺たちには考えるべき問題がありますが、先に約束を果たしてもらわないと」



「ええ、もちろんです。すみません。様々な問題に直面してしまい、私も何から始めれば良いのか分からなくなってしまいました。グラナイト様が落ち着かれたら、またお二人をお呼びします。その時にまた話し合いましょう」


「大丈夫ですよ。難しい問題でも、小さいところから解いていくと、案外簡単に解けるものです。そう焦らずに、一個ずつ解決していきましょう」


エピドートはうなずくと、お辞儀をして部屋を出た。


今回もお読みいただき、ありがとうございました!

あと少しで二十章になります。とてもうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ