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定期報告(3)

 部屋に戻ってきた俺はベッドに横になる。今日は疲れた。


「おっと、定期報告の時間か」


 俺は寝ながらスマホを取り出し、マスコットキャラのアイコンのアプリを開く。

 白兎がくるくる回る。しばらくして白兎が足を滑らせ、画面に激突した。


『あっ、痛たデース!』


「大丈夫か? ノーニャ」


『プリヴェット、バン。寝ながらスマホは危険デース!』


「あ、ああ。そうだな」


 今まで横になってのかよ。

 ……まあ俺も人のことは言えないか。

 上体を起こし、ベッドボードに背中を預けた。


『どうデスか? 学校は慣れましタか~?』


「大変だったよ。吸血鬼の学園だからな」


『というと?』


 便所飯をしようとしたら誰かが来たせいで食いそびれ、空腹で午後を過ごした結果、腹が鳴って人間だとバレかけたことを話す。


「……という感じなんだ」


『オーィ!? 人間だとバレたなら今すぐ撤退デース!』


 それが潜入任務の撤退条件で、失敗条件でもある。

 そのことは分かっているんだけど。


「まあ、その、なんとかなったから……」


 思わず隠してしまった。

 ココに人間だとバレた時点で俺は撤退しなきゃならない。


『ほっ。びっくりさせないでクダサーイ! バンに何かあったらオネーサン泣いちゃいマース!』


 そうだ。

 バレたら撤退なのは任務続行が難しくなるからだ。

 ココにバレたことでそうなるとは思えない。だってココだもんな。


「そうならないように頑張るよ」


『なら良いのデース! ところでバン、何か良いコトありマシタか~?』


「え? なんで?」


『嬉しそうな顔しているのデース!』


 知らずのうちに頬が緩んでいたらしい。両頬を指で揉みほぐす。


「ココっていう子がいて、少し仲良くなれたんだ」


 口に出すとまた頬に笑みが集まってきた。揉み消す。


『それは良いのデース! 潜入任務のイロハは覚えているようデスネ!』


「あ、ああ」


 そういうつもりはなかったが、考えてみたらココと仲良くなったことでココが俺を噛んだかどうかも分かるかもしれない。


『で? 何か情報は手に入れマシタか?』


「そうだ。姫里ココについて調べてくれないか? 俺と会ったことがあるらしい」


 ちょっと不義理かもしれない。でも良いんだ。あくまで俺の目的は標的を討って人間に戻ることだから。

 画面上の白兎はナウローディングとばかりにくるくる回る。

 目を回して横になった。


『姫里ココ……。ンン~、データベースにはありマセーン! 調べておくのデース』


 白旗を挙げた後、ぐるぐるメガネを掛けた。コミカル。


「よろしく頼む。あと、獣についても調べられるか?」


『獣デスカ? 詳細をお願いしマース!』


 俺は先生から受け取ったプリントをスマホにかざす。

 白兎の目が光った。コピー機のように内容を読み込んでいるのだろう。


「あと、調理室の机一つを壊すほどのパワーがあるらしい」


『フーム。吸血鬼を襲う獣デスカ……。人狼ワーウルフだとしたら、バンも気をつけるのデース!』


「ああ。俺も彼らにとって敵だからな。忌々しいことに」


『その通り。吸血鬼は敵デース。人間のように見えても信用してはいけマセーン!』


 白兎は丸っこい手でズビシッと俺を指す。

 ココを信じた俺はいつかココに裏切られる。それが吸血鬼だ。

 仮にそうだとしても俺からは裏切りたくなかった。俺の半分は人間だから。


「分かってるよ。それじゃあ報告は以上だ」


『おつかれさまデース! 進展があってオネーサン嬉しいデース!』


「ああ。明日は早いから切るよ」


『そうデスカ! がんばれデース! デハデハ、おやすみなさい、バン』


「おやすみ、ノーニャ」


 白兎がナイトキャップをかぶって巣穴に帰っていく。

 俺はスマホをキャビネットに置いてベッドに横になった。

 深い眠りが波のように押し寄せた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 血なまぐさい感じで始まったかと思ったら普通にラブコメだったwこれってつまりどっちかは主人公を噛んだ吸血鬼でどっちかは本当の恋ってことですよね。嗚呼人間の恋愛感情のなんと適当なことよ。面白い…
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