ご足労
「ゼネバ。この子、具合が悪いんじゃ……?」
と、後ろにいた黒髪の女がそう言った。
「ごめんね。僕、風邪気味で……」
「少し、きつい訓練をしてたんだ。それで疲れが出ているんだろう」
シムゥンの言葉の途中で、ジーラがそんな説明をしていた。
「今回は、本当にムリ言って来てもらってすまない。シムゥンが会いたいと言ったからそのご褒美としてご足労願った」
ジーラの説明に黒髪の女が頷く。
「こちらこそ、急に押しかけちゃって」
「……本当にな。呼んでもいないのについて来て」
と黒髪の女に言ったのはゼネバだ。
「だって、洞窟の中のおうちなんてすごく興味あるじゃない? ――シームァもここに来たことあるの?」
女の目線の先にシームァがいた。
「シームァ!」
シムゥンは嬉しさのあまり抱きつこうとしたが、椅子に座ったままの体は思うように起き上がらなかった。
かわりに、シームァの方からシムゥンにハグする。
それに答えるように、シムゥンが強くシームァに抱きつく。
「シムィンもいるわよ」
シームァの言葉にシムゥンは辺りを見回す。
その時、シムゥンは自分の家のリビングにいて、ソファに座っているんだと気づいた。
そして、見つけたシムィンの方へと手を伸ばす。
シムィンがその手をつかむ。
「久しぶり」
「シムィン!」
シムゥンは、シムィンにも強く抱きつく。
兄弟三人で抱き合っていた。
感動的ですらあった。
「私たちも来てよかったのか? せっかくの兄弟の再会なんだから身内だけの方がよかったんじゃ?」
ゼネバがジーラに尋ねる。
「いえいえ、シムゥンが会いたいと言ってたんだから」
「そうか? この前のお礼もしたかったから、私としてはちょうど良かったが」
ゼネバは表面的には社交的に振舞い、その実、周囲の気配を伺っていた。
「カーラ」
ゼネバが黒髪の女の名前を呼ぶ。
カーラは首を振る。
ゼネバが以前感じたような妙な気配を、カーラは感じてないらしい。
「何か?」
ジーラが怪訝な顔をする。
「いいえ、何でも」
カーラがにっこり笑顔で答える。
三兄弟の覚え方
ファッティいじりが大好きな一番上の兄がシムィン。名前にィがつきます。
体内に魔導機械が入っているのがシームァ。魔導機械なのでムァ。
魔法が強いのがシムゥン。マホウなので、名前にゥがつきます。
正直、書いてる私もミスしてないかヒヤヒヤしてます。