後悔
「おかしなことはしないほうが身のためだぞ」
ジーラはなるべくにこやかにそう忠告した。
わざわざこんな山奥まで来させたのはこちらの方だ。いくら好意的に言ったとしても牽制するような物言いもいかがなものかと思う。
「あなたこそ、私に惚れたりしないでね?」
カーラがジーラに微笑むので、その頭をゼネバがゲンコツした。
「痛……っ!」
「お前は本当に老若男女なんでもアリだな」
「違うわよ。惚れたらダメって言ったんじゃない?」
「それは惚れられる前提の発言だろう? だいたい、ついて来るなって言ったのにムリヤリついて来て!」
「だってー! ゼネバと私の仲じゃない? どこでも一緒に行くわ」
と、カーラはゼネバに体を密着させる。
「おい!誤解させるようなことは……!」
「いいじゃない。私たち、もう一心同体なの」
焦るゼネバと、うっとり顔のカーラ。
(なんだ、こいつら)
ジーラは毒気が抜ける、そんな思いだった。
シムゥンの願いであったから、ゼネバはこちらから頼んでつれて来たのだ。
カーラという女に関しては、本人が「一緒に行く!」と騒いだから、ジーラとしてはしょうがなくつれて来た。
出来ることなら、外部のものをこの場所につれて来たくはなかったのだが。
まさか、こんな場所で女同士のカップルのイチャイチャを見せつけられるとは思わなかった。
どう考えても、シムゥンの教育に悪い!
つれてくるべきじゃなかったか、なんてジーラは後悔していた。
* * *
シムゥンはとても眠そうだった。
そんなシムゥンを目のあたりにして、シムィンもシームァも胸がしめつけられる思いだった。
突然、ジーラが研究所にやって来たのは驚いた。
『訳は何も聞かず、シムゥンに会ってやってほしい』
と、語るジーラの顔は悲痛そのものだった。
その様子に、シムィンもシームァもシムゥンの身に何かあったんだと覚悟を決めつつも、どこか現実感のない感情でここに来ていた。
会ってみれば、疲れなのか眠気なのか、どう考えても健康な状態ではないシムゥンがソファに埋もれるように座っていたのだ。




