第6話:『クラフト&バースト 〜購買部の強化(カスタム)と決勝の光〜』
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第6話:『クラフト&バースト 〜購買部の強化と決勝の光〜』
「おいレイズ! その魔力伝達効率の悪い安物の木、僕に弄らせてくれよぉ!」
一回戦を突破した直後、レイズは購買部へ向かう廊下で、クラスメイトの魔導具オタク――トビーに熱烈な突撃を受けていた。トビーはぐるぐると分厚い眼鏡の奥の目を輝かせ、レイズの木製の杖を穴が空くほど見つめている。
「トビー、お前魔導具のカスタムができるのか?」
「できるのか、なんて失礼な! 僕は『変形』と『結合』の属性持ちだよ!? レイズがさっき使った『熱の針』、あれをもっと細く絞るためのノズルパーツ、僕なら手持ちのジャンクとさっきの引換券で、完璧に結合してみせる!」
「へへ、頼むわ!」
レイズは手に入れたばかりの『カスタムパーツ引換券』と、午前中に稼いだ銀貨をトビーに託し、購買部の作業台へと駆け込んだ。
トビーの『変形・結合』魔法によって、安物の木の杖の先端に、魔力を極限まで絞り出すための高密度合金製のノズルが融合していく。さらにシグルドも引換券を使い、魔冷銃の冷却コアを最新型に新調した。
こうして誕生したのが、レイズの初期型カスタム杖――『一点集中・バーナー型カスタム』だった。
―◇―
「第二結界、試合開始!」
バルドル教官の声が響くたび、新調した杖を手にしたレイズとシグルドのコンビは、他の生徒たちを文字通り蹴散らしていった。
「食らいな! 新型バーナーの威力をよぉ!」
レイズが杖を突き出すと、合金ノズルから放たれた熱の針は、以前の数倍の鋭さと超高温を誇り、対戦相手の張る強固な水属性の盾すら一瞬で蒸発させた。
「遅い。そこだ」
シグルドの『白銀の魔冷銃』から放たれる精密な氷千本が、蒸発した霧の隙間を縫って、相手の詠唱の瞬間の隙をミリ単位で射抜く。
魔力10%という極限の制限。だからこそ、その場でパーツを買い揃えて最適化したレイズの「無駄のない工夫の炎」と、シグルドの「圧倒的に精密な氷」のコンビネーションは、他を寄せ付けない無敵の強さを誇った。2人は不協和音のまま、怒濤の勢いでトーナメントを勝ち上がっていった。
そして、ついに訪れた決勝戦。
立ちふさがったのは、先ほどレイズの杖を改造した張本人であるトビーと、学園のマドンナでありながら巨大な鉄球付きの杖を構える武闘派、エルザのペアだった。
「いやぁ、まさか僕たちの作ったパーツで、ここまで勝ち上がってこられるなんてねぇ」
トビーは自身の工具型変形杖を弄びながら不敵に笑う。
「うふふ、手加減はなしですよ?」
エルザがお淑やかに微笑んだ。彼女の属性は『光』と『治癒』。一見して聖職者のようだが、その本質はこの学園でもトップクラスの破壊力を秘めている。
「決勝戦、始めろ!」
バルドルの冷酷な合図と共に、エルザが巨大な鉄球杖を軽々と振り抜いた。
「いっけぇー! 『光速質量』!」
放たれたのは、目も眩むような爆発的な『光の質量弾』。10%の制限下とは思えないほどの圧倒的な速度と破壊力を秘めた光が、レイズたちの視界を真っ白に染め上げながら肉薄する。
「レイズ、まともに受ければ一撃で結界の外だ!」
「分かってる! シグルド、光を反射返せるか!?」
「私を誰だと思っている!」
シグルドが魔冷銃の引き金を引く。一瞬で2人の前に創り出されたのは、表面を鏡面のように極限まで滑らかに研磨した『氷の凹面鏡』だった。
直撃したエルザの光速弾は、シグルドの精密な鏡によって鋭く屈折し、トビーとエルザの足元へと向かって乱反射を始めた。
「わわっ!? 目が、目が開けられないよぉ!」
トビーが光に目を眩ませて体勢を崩す。
「そこだ、トビー! お前の魔導具の『結合部』、もらったァ!」
レイズが地を這うように鋭く踏み込んだ。新調したバーナー型の杖をトビーの工具杖に向けて突き出す。
放たれた極小の超高温の熱線が、トビーの杖の最も重要な魔力接合部をピンポイントでピンポイントで焼き切った。カラン、とトビーの杖が元のジャンクパーツに分解され、床に転がる。
「ああっ!? 僕の可愛い魔導具がぁ!」
武器を失ったトビーがエリア外へとよろめき出る。
残るはエルザ一人。彼女は怯むことなく、再び光を纏った鉄球を振り下ろそうとするが、すでにレイズとシグルドの次の手は完成していた。
「冷気よ、光の屈折率を変えろ!」
シグルドが空間の空気を一瞬で凍らせて光を歪ませ、エルザの目測を狂わせる。
「これで終わりだッ!!」
エルザの懐に飛び込んだレイズが、杖のノズルから最大出力の炎を床に向けて噴射した。その熱風の衝撃破が、エルザの華奢な体を簡易結界の境界線へと力強く押し出す。
たたらを踏んだエルザの足が、ついにエリアの白いラインを越えた。
『勝者、レイズ・シグルドペア。本日の模擬戦、優勝だ』
バルドルの無機質なアナウンスが室内に響き渡る。その瞬間、静まり返っていた講習室が、新入生たちの割れんばかりの歓声とどよめきに包まれた。
「はぁ、はぁ……! 勝った……勝ったぞ、シグルド!」
レイズは引換券で作ったバーナー杖を掲げ、満面の笑みを浮かべた。
「……当然の結果だ。だが、私の氷の鏡の角度計算が、お前の突撃のタイミングと一瞬でもズレていれば相打ちだった。次からはもっと私のスピードに合わせろ、火種」
シグルドはそう言ってふいっぽを向いたが、その口元はわずかに満足そうに緩んでいた。
「よし、優勝したお前ら2人には、約束の『特製カスタム素材』と――」
バルドル教官が歩み寄り、2人の端末に特別なデータを転送した。
「来週から解放される、『大迷宮・第1層への公式入場許可証』をやる。本当の実戦はここからだ。死ぬ気でさらに杖を研ぎ澄ましておけ」
手に入れた優勝の栄誉、そして次なる舞台である本物のダンジョンへの切符。
最悪の出会いから始まった炎と氷の2人は、学園の頂点へと向かうための、最高の一歩を踏み出したのだった。
(第6話・了)
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