第三話
そんな、久しぶりの一家団欒の時間はあっという間に過ぎました。
「はー、おなかいっぱい。久しぶりにお母さんのご飯を食べられてよかった」
「ありがとうね。洗うのは私がやるから、食器を片付けてゆっくりしてなさい」
「はーい」
一日三回しかない楽しみが終わってしまいました。私は台所に食器を置いて、和室のこたつで横になります。この季節の人間は一度こたつに入ると食われてしまったかのように動けなくなってしまいます。
「おばさん、ありがとうございました。お片付け手伝います」
「いいのよ一人でできるから。結城君もゆっくりしてなさい。この後は部屋の移動を手伝ってもらうんだし」
「でも……」
「いいのいいの。こたつにでも入っていなさいな」
「それじゃあお言葉に甘えて」
結城は和室に向かった。リビングから襖一枚隔てたところでは桜がどうなっているかを見ることができるわけもなく、開けた瞬間にそれを目撃することとなった。
『バシッ』
とりあえず閉めた。
「おばさん、あれどうにかしてくれませんか?」
「桜がどうかして、……あら」
ご飯を食べて眠くなったのか、こたつに食われたようにして大の字で寝ているだけでなく、こたつで熱くなったのか片足(左足しかないのだが)をこたつからはみ出し、しかもシャツまでめくれて脇腹あたりが見えている。年頃の女の子がこんな格好をして大丈夫なのだろうかと結城は心配するとともにおばさんからの言葉を待った。
「うーん……、介抱してあげてちょうだい。風邪ひかせないようにね」
「え?」
「ほら、私は台所で忙しいから」
こうなってしまってはしょうがない。おばさんのおすみつきをもらったのでゆうきはこたつにちかづく。
昔は一緒にお風呂に入るくらいのことはあったが、なんにせよそれから12年近くたっている。男子校に入って早2年の結城にこの姿の桜は刺激が大きかった。
結城はトントンと桜の肩を叩く。
「うん?」
起こすことには成功したようだ。
『スウゥ』
寝ちゃった。
仕方ないので脇に手を入れて姿勢をなおす。
「むーん。くすぐったい」
こたつから出してちょうどのタイミングで起きたようだ。しかし桜は状況を理解するのに時間がかかったようで、
「……え!?」
えっと、どういうことでしょう?まってください。いったん落ち着きましょう。まず……
「桜姉ちゃんはすごい体勢で寝ていて、風邪ひきそうだったからこたつから出そうとしたんだけど、起こしちゃった」
なるほど。それで見上げたら結城君の顔があったわけですね。
「……見た?」
「いいや?」
「ピンク」
「いや白だった」
殴りましょう。体勢を変えます。
「まて、話をしよう」
問答無用!
「あ、」
剣道をやっていたので右足を出そうとするのですが、右足ないんでした。バランスを崩してしまいます。
「グエッ」
一緒に転んだ結城君のおなかにジャストフィット!壁にもたれかかって身動きが取れなくなっています。良いざまです。勘弁してやる。それにしても男の子にこんなに近づくのは初めてかもしれない。いい感じの高さで、ちょうどいい暖かさで心地よいですね……、
「うーん」
『スピ-』
そのまま桜は寝てしまった。
(寝ちゃったよ)
結城は困惑した。このまま無理やり起こしてもいいとも思ったのだが、年頃の男子高校生なのでしっかり抱きつかれていて悪い気はしないし、気持ちよさそうに寝ている幼馴染の寝顔を見ていたかったので、そのまま髪の毛をなでて遊んでいた。入院中に伸びたのであろう桜の細い髪の毛は、お父さん譲りなのか少しちぢれている。こういうところは昔おままごとに付き合わされたときから変わらない。こうしているうちに血糖値が高くなり、眠くなったので結城もそのまま寝てしまった。




