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第一話

初投稿です。桜たちのお話を最後まで届けようと思います。

 パタパタパタ

 リハビリも兼ねてお散歩をしていると鳥の大群を見かけました。

 そこの公園から出て行ったのかな。

 今日は3月の中旬でまだあたりに雪は残っていますがもうすっかり春です。あの鳥は渡り鳥でしょうか。出会いの季節ということなのでしょう。

 それに対して私はすっかり出遅れてしまいましたね。

 病院で窓から見た鳥たちが、すごく自由そうでうらやましかったのを思い出します。

 私にも翼があればどんなにいいことでしょうか。

 ……

 いやいや鳥に嫉妬してどうするんでしょう。私はいちおうは歩けますし、いざというときにはバスなりタクシーなりを使えばいいんです。鳥は翼があってもエサのために結局歩かないといけないうえに翼のために手を失ってます。そう考えるとそんなにいいものでもないかもしれないですね。

 散歩とは言いますが、退院直後のこの身体に坂道の多いこの街は少々辛いです。好きな服を着たいなと思って長めのスカートを履いたのが失敗でしたね。歩きにくいです。

「あー、つかれた!」

 声に出すほど疲れました。そこの公園で休憩しましょう。杖のおかげで多少楽にはなっていますがこの足は長距離歩くのには向いていないようです。付け根に負担がかかります。やっぱり、翼が欲しいかもしれません。


 *


 入る前になんとなく公園の中を覗いてみたら平日の昼だというのに8歳くらいの男の子が一人でしゃがみこんでいるじゃないですか。話しかけてみましょうか。

 逃げられないように近づいてみます。

 声が届く距離に入れました。いまだ!

「ぼく、学校はどうしたの?」

 ぎょっとした目でこちらを見てきます。そりゃそうですよね。知らないお姉さんがいきなり話しかけてきたらびっくりするでしょう。

「ごめんね。怖い人じゃないんだ。私は水無瀬桜、18歳。本当は大学生になれたはずなんだけどね。今は何もしていない。桜ちゃんって呼んでね。君は?」

「知らない人になまえ教えちゃだめってかあちゃんいってた」

「ふむ、確かにそうだね。桜ちゃんも昔、お母さんにそう言われたことがあるよ」

 話しかけてみたはいいですが、ちぐはぐになってしまいました。間が悪くなってしまい、つい癖で入院中に胸くらいまで伸びた髪の毛をくるくるさせて遊んでいたら絡まってしまいました。会話を繋げましょう。

「うーん……それじゃあ『僕』でいいかな?僕、学校は大丈夫なの?」

「きのうおばあちゃんがしんじゃったから、今日は学校休んでる」

「おっとごめんね。いけないこと聞いちゃったな」

「ううん。かあちゃんが泣いてたから、僕は泣かないことにしてる。

 おばあちゃんはこのあいだの火事で酷い目に遭ったんだって。それで入院して、僕がお見舞いに行った時もほとんどしゃべれなかった。おばあちゃんがやってたお洋服屋さんも火事でなくなっちゃった。いまはかあちゃんが忙しいから、ぼくは猫のおばあちゃんと散歩してる」

 猫のおばあちゃん?

「こら翔ちゃん、どこに逃げたのかと思ったらこんなところにいて。

 あら可愛い子とお話してたのね。あなた、元気なのは良いけどあんまりおばあちゃんを困らせないでよ!心配したんだから」

「いてっ」

 軽くげんこつ食らってますね。可愛いだなんてうれしい。この方が猫のおばあちゃんという方でしょうか。

「それと、お姉ちゃんありがとうね。この子、きっと悲しんでるから、あなたとお話ができてうれしかったと思うわ」

「いえいえ。かわいいだなんて、ほめていただいてありがとうございます。

 それと、この子からお聞きしたことなのですが、この度はご愁傷さまです」

「あら、ご丁寧にありがとうございます。この子の母方のおばあさんが亡くなってね。佐々木さんっていうんだけど。まだお若いのに先の大火でねぇ。お気の毒に」

 佐々木?もしかして……

「もしかして、その子のお母さんの名前、椿さんじゃないですか?」

「あら、お知り合い?」

「かあちゃんのこと、知ってるの?」

 なんと!世界は狭い!

「佐々木さんのところには昔からよくお洋服を買いに行っていました。

 君のお母さんの椿さんにはお洋服を作ってもらったりしてかわいがってもらったのをよく覚えているよ。桜ちゃんに会ったって言ったら喜んでくれるかもしれないね」

 そうですかそうですか。ふーん。椿さん、こんなかわいい子を作っていたんですね。それにしても、私は椿さんのところのお店まで失ってしまったようです。今さら嘆いてもしょうがないのですが。

「お姉ちゃんの家族は無事だったの?」

 そうですね……翔ちゃんには教えてあげてもいいかもしれません。学校を休むほど悲しんでいる子供には刺激が強いかもしれませんが、私もひどい目に遭ったということを教えてもいいかもしれません。

「私もあのときの被害者でね。これを見てほしいんだ」

 私はそばのベンチに座ってスカートを少したくし上げて右足の膝下の義足の付け根を見せます。翔ちゃんは両手で目を隠していますね。パンツなんか見せませんよ。

 翔ちゃんの腕をポンポンと触ります。賢い子のようで、すぐに外してくれました。

「これを見てほしいんだ。家族は無事だったんだけど、私は無事ではいられなかった。

 あの時、足がつぶれて逃げられなくなった私を助けてくれたヒーローがいてね。右足の膝から下は切ることになっちゃったんだけど命は助かったんだ」

 慣れてないもので時々外したくなりますね。義足は蒸れるので少し臭いかもしれません。

 二人とも私にどう接すればいいのかわからなくて困っているようですね。

「翔ちゃん、こっちに来て」

 抱いてあげます。ちっちゃい男の子はかわいいですね。やわらかい。

 よしよししてあげましょう。こんなことしてあげるのも今のうちですからね!

「みんな、あの時に何かを失ったの。でもね、私は立てるようになったんだ。この街がどうなるかまだ分からないけど、元気を失っちゃだめだよ!」

 ちぐはぐな出会いでしたが、翔ちゃんを慰めることはできたでしょうか。こんな出会いがまたあるといいですね。


 *


 椿さんの子供に会って雑談をした後、付き添いのおばあさんに連絡先を教えてもらいました。

 帰りましょうか。この調子で少しずつ遠いところまで歩けるようになるといいですね。

 それにしても近所の公園に行くのも一苦労です。まえはほんの少し歩くだけで着いたんですよ。(当然と言えば当然ですが)

 ふと、青空を見上げます。

 復旧しつつある街を覆う一面の青空の中、鳥さんが元気に飛び回っています。ツバメでしょうか。

 あの子たちもきっと、帰ってきたこの街がこの惨状でびっくりしているでしょう。巣作りとかはどうするんでしょうね。

 でも、それは我々も一緒です。私の家は奇跡的に残っているのですがちょっと歩いたら瓦礫の山だそう。まえは街の中心部だったというのに、ここから少し歩くと立ち入り禁止区画になるとのことです。最初からやり直しだと避難所のおじさんが言っていたのを思い出します。家は壊滅地域ギリギリだったそうで、入院中にそれを聞いたときは安堵しました。

 もうそろそろ家につきます。


登場人物紹介

水無瀬桜

主人公18歳 身長156cm, スリーサイズは乙女の秘密(Bカップ想定), 体重44kg(足が切断されたぶん軽い)、好きなくだものはリンゴ。スーパーでリンゴ買って丸かじりしながら歩く悪癖あり。

災害に伴う事故によって右足膝下を切断


綾川結城

元主人公 17歳 身長172cm, 体重65kg 桜の幼馴染。大火で家族を失う。好きな食べ物は米と牛肉。コシヒカリでゆめぴりかを食べる。


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