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【完結済】死んで辿り着いたのは生き物たちが自然を"ちょっとだけ"管理する世界でした(イノセントワールド)  作者: GOLD
第四章 気づかなかったもの

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第8話 役割

 本部からの要請で、リューセイとミラは火山噴火抑制部に来ていた。


「……………」


 リューセイがいつにも増して真剣な眼差しで見上げている。

その視線の先には、静かながらもどこか緊張している富士山が映されていた。


「すまんすまん、過去の資料取りに行ってた」


 あのバーバリライオン、ユマが本を咥えて入ってきた。


「お、リューセイもう来てたのか」


 リオウも遅れてやってきた。


「そろそろ準備しないとね」


 リオウに続いて、トリケラトプスとディメトロドンも入ってきた。火山噴火抑制部の役者が揃った。


「とりあえず機械を作動させるぞ。

準備ができたら沈静開始だ」


 そう言って、リオウは少し機械をいじると臨戦態勢にうつった。


「しかしまぁ、まさか死んでから共闘することになるとはねぇ」


 腰を下ろしながら、トリケラトプスはそんな事を言い出す。


「生前では戦ってたのにな」


「戦ったの?」


 ミラが尋ねると、トリケラトプスが話し始める。


「一度だけね。そのときツノを噛み砕かれたのよ。今は元通りだけど」


「あー、そうだそうだ」


思い出したかのように、リオウは顎を鳴らした。


「そのあとウリの仲間が来て、戦いは中断したんだよな」


「そうそう」


 トリケラトプス、ウリも頷きながら続ける。


「その後も何度か顔を合わせることはあったけど、戦うことはなかったねぇ」


「何度も会ったのに、戦わなかったの?」


 不思議そうにミラが軽く言う。


「そんな頻繁に戦ってらんねぇって」


 リオウは呆れた様子で、鼻を鳴らした。


「寿命縮むわ」


 ウリも返す。


「私たちだって、できれば戦いたくないからね」


「フッ……今じゃ大昔話だ」


 そんな昔話に花を咲かせてるうちに、機械が準備完了を告げる。


「さて、そろそろ始めるか」


「おう!」


 リオウが沈静開始の合図を送ると、ユマとディメトロドンが喉を鳴らす。


「ウリはしないのか?」


 リューセイが聞く。


「私手がこんなだから、さすがに機械を器用に操作はできないのよ」


「ウリは現場監督だな」


 リオウが言った瞬間――


「あ、本部と繋いどくね」


 ウリがエコーラインで本部と繋がる。


「テラス、私と一緒に現場監督お願い」


「もちろんだ。画面越しにはなるが、よろしく頼む」


 エコーラインからテラスの声が聞こえる。

どうやら本部から見守っているようだ。


「とりあえず、俺はマグマのほうを見る。あんたらは岩や気体、圧力のほうを見てくれ」


「了解」


「じゃあ、いくぞ。自然は?」


「自然に」


「おー!」


――そうして、数十分が経過した。


「これは……どうなんだ?」


 さすがのリューセイも心配になったのか、リオウに尋ねる。


「んー順調、とは言えないな……。

悪くはないんだが、やっぱり手が足りない。

マグマの上昇がほとんど止まっていない…」


 本部とウリの監督、リオウやユマ、ディメトロドンの三匹でなんとか沈静を図っていた。

ただ、機械操作する役が少なく、事態は難航していた。

現場世界なら、すでに避難勧告が出ている頃だろうか……


「このまま続くとまずいな……」


 リオウがそうボヤいた、次の瞬間――


 ドンっ!


 突然ドアが轟音を立て、何かが部屋に入ってきた。そこに現れたのは――


「うおっ!? ……メーオ?」


「すいません! 手が足りないと聞いて、こいつなら本も読み漁ってて、機械も分かってるはずなんです! やらせてやってくれませんか!?」


 メーオ、そしてツムジだった。


――数十分前――


「ツムジ、さっきの放送聞いたか?」


 メーオが飛んできた。


「……あー火山噴火抑制部だっけ?

手が足りないってやつ」

「……まぁ俺には関係ない話だ」


 その一言を聞いたメーオ。


「それなんだが、ツムジならできないか?」


「…………何を言ってる?」


「ツムジはいつも本を読んでて、自然にも機械にも詳しいだろ? 火山噴火抑制部の機器のこと分かる?」


「……まぁ、知ってはいるが」


「だったら行こうよ。

ちょうど手が足りないって言ってたし……。

これはツムジにしかできないよ」


「……何度も言うが、ムカデは嫌われてし、ドジな俺にはできないって」


「行ってみなきゃ分かんないでしょ。それに嫌われてるなんて関係ないし、そもそも嫌われてないし」

「私はずっと努力家なツムジを見てきた。

ツムジが知識豊富なこと、誰よりも自然も機械も好きなこと、私は知ってる」


「……見てきたって、ヤスデは視力が低いだろ」


「いいから来て」


 メーオはそう言うと


「……うわっ!?」


 長い身体でツムジを掴むと、一目散に走っていった。


――現在――


「落ち着け落ち着け。どうしたってんだ」


 リューセイが聞くと、メーオが話す。


「さっき手が足りないって放送で言ってたじゃないですか。それで、ツムジならと思って……。

ツムジは普段本を読んでいて、自然にも機械にも詳しいんです」


「……詳しいだけじゃできないよ……」

「俺は自然管理をしたことがない」


 自信なさげなツムジに、ウリが話しかける。


「うーん、今は猫の手も借りたいくらいだし、こっちとしては力貸して欲しいけど……」

「本当に機械のこと分かるの?火山噴火抑制部の管理機器なんてそこそこ複雑よ?」


 一瞬の間。

そのとき、リオウがこんな事を言い出す。


「だったら、一度管理機器の説明をしてくれないか?」


「……?」


 首を傾げるツムジ。


「管理機器のことが分かるなら、説明ができるはず。どれくらい理解しているか、初めてでも操作を任せて大丈夫か、俺らと本部が判断する」


 テラスの了承の声も聞こえる。


「ツムジ、とりあえずやってみよ?」


「…………わかったよ…………」


 しぶしぶツムジは機械の前に立つと


「えっと……大きくマグマの上昇、岩の隙間、圧力と水や二酸化炭素などの気体を調整するとこに分かれて……」

「ここがマグマ操作で……。

このボタンでマグマの動きを制御して……。

レバーを引いて上昇を抑えて……」


 声量は低いが、その目に迷いはなく、単調な説明を繰り返していた。


「……マジかこいつ」


 リオウは振り向くと


「なぁ、ウリ。ウリが監督しながら操作を一部任せるくらいならできるんじゃないか?」


「奇遇ね。私も思ってたとこ」


 リオウは顔を下げると


「ツムジ、後ろのトリケラトプスが指示を出すから、その指示通りに機械を操作することは可能か?」


「……えっと……」


「頼む!」


 リオウは頭を下げる。


――すると


「俺からも頼むよ」


 テラスの声が聞こえる。


「ツムジ……」


 メーオをも心配そうに見ている。


――そして


「……分かり、ました……。一回やってみます」


「よし!」


 リオウは鼻を鳴らすと


「沈静再開だ。

ツムジはじゃあ、圧力のほうを頼む」


「……分かりました」


 ツムジはメーオを見つめると


「が、がんばる……」


 そう言って機械に向かっていった。

……ただ


「ふぅー、ふぅー」


 ツムジに落ち着きはなかった。

そのとき――


「大丈夫。私が言うとおりに操作するだけよ

何かあったら責任は私が持つ」


「いや、俺が持つよ。最初に許可出したのは一応俺だからな」


 ウリとリオウが背中を押すように言った。


「……分かりました」


 ツムジも加わり、沈静が再開された。


「まずは、真ん中の赤いボタンを押して。

起動のボタンよ」


「はい」


 ウリの指示に従い、ツムジは操作を開始する。

その細くもたくさんある足が、ウリの指示通りに動いていく。


「次にそのレバーをゆっくり引いて」


「は、はい」


 長い身体がレバーを包んでいく。


ガシャッ!


「ゆっくり! ゆっくりよ!」


「あ、ぁ…はい」


(……頑張れ)


 メーオの見つめる先で、ツムジの身体はゆっくりレバーを下げていく。


――


「……お、圧力が下がってきたぞ」


リオウが叫ぶ。


「マグマの上昇も収まってきた。良い兆候だ」


「ツムジ、続けていくよ」


 ウリも叫ぶ。


 その後も、ツムジの足と身体は指示の通りに蠢いていく。


 そんなとき――

沈静が進み、少し余裕ができたとき、リオウが小さく息を吐いた。


「腕が多いっていいよなぁ」


 リオウがボソッと漏らすと、ウリが割り込む。


「よく腕小さいって言われるよね」


「これでも1メートルあるんだけどねぇ」


「…………っ」


 ツムジの足は、いつにも増して浮かれていた。


――そして


「よし、これでどうだ」


 リオウはそう叫ぶと


 ポチッ……


 最後のトドメとなるボタンを押した。

低い振動が唸り、室内を震わす。


 画面には


 少しずつ降下し、小さくなっていくマグマが映されていた。

そのとき、リオウが叫ぶ。


「沈静完了!」


 狭い空間に、歓声が上がった。


「ツムジ、テラスもありがとな」


 リオウのその言葉を聞いたツムジは


「……これ、俺がやったのか……?」


 そう呟いた。


――すると


「そうだぞー」


 後ろで様子を見ていたリューセイが言う。


「俺は何度も管理操作を見てきたが、初めてにしては上出来だったんじゃないか?」


「…………」


 ツムジはゆっくり後ずさりすると、現実世界を眺める。


 "富士山さっきより落ち着いてない?"

そんな声が、聞こえたような気がした。


「ツムジ……」


 メーオが少しずつ近づいてくる。


「……言ったとおりだったろ?」


「…………まぁ、うん」


 まだ事の状況を把握しきれていないような様子のツムジ。

――そんなツムジに


 ギュッ……


「…………っ」


 メーオの長い身体が抱きつく。


「…………ツムジ…………」


「…………ㇷ」


 ツムジの触覚は、緊張が解けたように垂れ下がった。


 そのとき――


「リオウ……!?」


 扉が勢いよく開いた。


「……スリ!?」


 スリが入ってきた。


「富士山は……?」


「大丈夫だよ。いつもに戻った」


 その言葉に、スリの表現は安心したようにほぐれ……


 カンッ!


 リオウとツメでアイコンタクトをとる。

まるで、沈静完了の合図を送るように。


「……さて、記録も取れたし、本部に届けるかね」


 リューセイはそう言うと、ぎこちなくワープバンドに触れる。


「……………」



「……パンテラ」


 歪な振動が収まりつつあった頃、ドットは棚の上に横たわるパンテラを見つめていた。

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